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マイナンバーカード 取得有無でサービスに差 普及、補助金に反映

 政府が教育現場を通じ、マイナンバーカードの普及を図ろうとする実態が明らかとなった。地方公共団体では、カード取得の有無で教育サービスに差をつけようとする政策が示されるなどし「学校の政治利用だ」と反発が広がる。政府はカードの普及状況を補助金の多寡に反映するといった施策を採用するなどなりふり構わず取得拡大を推進しており、専門家からは批判も出る。

岡山県備前市役所で、報道各社の取材に応じる吉村武司市長=2月
岡山県備前市役所で、報道各社の取材に応じる吉村武司市長=2月

 差別持ち込む
 岡山県備前市は2023年度、世帯全員がマイナカードを取得している場合に限り、学校給食費などを無償とする方針を決めた。吉村武司市長の意向だという。
 「強引な手法とは思っていない」。吉村市長は2月14日、報道各社の取材に対し、任意とされるマイナカード取得を実質的に強制するのではないかとの見方に反論した。だが前日の13日開催の市教育委員会定例会で、教育委員から「突然すぎたし、乱暴かなと思う」といった意見が出ていたことが、市教委から開示された会議録で判明した。
 3月の市議会では、ある市議が「教育の平等性に反する」と批判。岡山弁護士会もカード取得の有無により「教育や行政サービスに合理的理由のない差別を持ち込む」などとして、備前市に再考を求めた。
 教育現場を通じたマイナカード普及はじわりと進む。群馬県高崎市では22年末、保護者宛てにカード申請を呼びかける文書を配布した。市教育委員会は「(国の要請に応じたのではなく)市独自の判断だ」と説明した。
 さらに群馬県は、学校でのマイナカード普及関連事業の費用を23年度当初予算に盛り込んだ。山本一太知事は2月末の県議会で「(普及に関連する活動は)授業時間外に行う。全員参加ではなく希望者(のみ)とする」と説明したが、ある県議は、政策を「学校教育の中で展開してはならない」と訴えた。
 交付金配分に影響
 この他、クオカード配布など独自の推進策に躍起になる自治体も。こうした事情の背景には、地方交付税やデジタル田園都市国家構想交付金の配分にマイナカードの普及状況が反映されることがある。宮城県のある市の担当者は「(交付金などは)巨額の財源であり、カード取得を推進する動機の一つだ」と明かす。
 政府も、買い物などに使えるマイナポイントの付与など普及策を展開。健康保険証を廃止してマイナ保険証に統一する方針も決めた。カード取得を事実上義務化する施策といえそうだ。
 明治大の田中秀明教授(公共政策)は「取得を促すためにポイントを付与するなど、交付すること自体が目的となってしまい本末転倒だ。カードの利便性がもっと高まれば国民は取得するだろう」と指摘した。

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