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福祉避難所 受け入れ施設は混乱懸念 自宅とどまり体調悪化も【大型サイド】

 災害時に高齢者や障害者などが身を寄せる「福祉避難所」の指定が進んでいない。受け入れる社会福祉施設には「不特定多数の人が殺到したら、大混乱で入所者を守れない」との声も。ただ一般の避難所や自宅で過ごして体調が悪化し、災害関連死につながるケースもある。要配慮者がためらわずに逃げられるよう、従来の避難所の中に設備を整える試みもある。

東日本大震災で開設された一般の避難所。体調が悪化する高齢者や障害者も多かった=2011年3月、宮城県気仙沼市
東日本大震災で開設された一般の避難所。体調が悪化する高齢者や障害者も多かった=2011年3月、宮城県気仙沼市
東日本大震災の直後に仙台市に開設された福祉避難所=2011年(同市障害者福祉協会提供)
東日本大震災の直後に仙台市に開設された福祉避難所=2011年(同市障害者福祉協会提供)
東日本大震災で開設された一般の避難所。体調が悪化する高齢者や障害者も多かった=2011年3月、宮城県気仙沼市
東日本大震災の直後に仙台市に開設された福祉避難所=2011年(同市障害者福祉協会提供)

混乱
 四国のある老人福祉施設。運営する社会福祉法人は、数年前に地元の自治体と災害時に福祉避難所を開設する協定を結んだ。自治体が一般の避難所にいる要配慮者の体調などを確認して人数を調整した上で、可能な場合のみ受け入れる。
 約1年前、自治体から福祉避難所の指定を受けないか打診を受けた。しかし、施設名公表と入所者以外の受け入れが前提と知り、対応できる職員の不足を理由に断った。
 60代の女性施設長は「福祉避難所の目的は命を守ること。無責任に『できます』とは言えない」と打ち明ける。
必要性
 2011年の東日本大震災時は、福祉避難所の数が限られていた。要配慮者が一般の避難所で体調を崩したり、遠慮をして被災した家に残ったりしたため、必要な医療や介護が受けられないケースが相次いだ。
 津波で大きな被害を受けた仙台市は、市と協定を結んでいた市障害者福祉協会が、発生翌日から3カ所の障害者福祉センターに「福祉避難所」を開設。協会の職員らが24時間体制で運営に当たり、障害者のほか、認知症の高齢者と家族計40人以上を受け入れた。
 同協会の阿部一彦会長は「福祉避難所は行き場のない要配慮者を守る役割を担った」と説明する。一方で支援物資が届かなかったり、運営する職員の疲弊が深刻化したりと課題も残った。「きちんと開設・運営できる体制を日頃から行政と整えることが重要だ」と強調する。
 仙台市は現在も福祉避難所を指定していない。担当者は「指定を進めたいが、多くの施設が入所者を抱えており、連絡なく押し寄せる被災者に対応する余裕はない」と語る。当面、保健師らが要配慮者の健康状態や要介護度を確認、協定を結んだ施設に可能な範囲で受け入れてもらう方針だ。
自力
 民間施設だけに頼らず、福祉避難所を確保する動きもある。
 宇都宮市は、学校や市民センターなどすべての指定避難所に要配慮者専用の部屋やスペースを設置。備蓄や非常用電源も完備し、市が福祉避難所としても指定している。避難が長期化しそうな場合は、協定を結ぶ施設に移動してもらう。
 市の担当者は「施設ほどの設備が整っていない場合もあるが、まずは要配慮者がためらわず近くの避難所に逃げ、命を守れるようにした」と強調した。

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