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元徴用工問題 日本「おわび」継承で呼応 韓国世論反発、正念場へ【大型サイド】

 元徴用工訴訟問題を巡り、日本政府は韓国政府による解決策の正式発表を受け、反省やおわびを含む過去の政府談話などの継承を表明する方向だ。尹錫悦政権の「政治決断」(日本外務省幹部)を支持し、韓国側が求める「誠意ある呼応」を示す狙い。ただ、被告企業による賠償を主張する原告や韓国世論の反発が収まる気配は見えない。日韓間に横たわってきた最大の懸案を解決できるか、正念場を迎える。

元徴用工訴訟問題を巡る日韓両政府の立場
元徴用工訴訟問題を巡る日韓両政府の立場

 決断待ち
 日本政府は、1965年の日韓請求権協定で賠償問題は解決済みとの立場だ。外務省幹部は「われわれが原則を変えて譲歩することはない」と強調。ただ、核・ミサイル開発を進める北朝鮮や中国に対応するため、日韓関係の改善が急務との認識も強まっている。
 昨年11月、約3年ぶりに正式に開いた日韓首脳会談で元徴用工問題の早期解決方針で一致。外務省局長同士が協議を重ね、今年2月には外相会談を実施するなど交渉を加速させた。事務レベルでは論点が出尽くし、韓国側の「決断待ち」が続いていた。
 日本政府は、日本企業が判決で命じられた賠償を韓国の財団に肩代わりさせる解決策を「現実的」と評価。有志の日本企業による財団への寄付は容認し、過去の植民地支配への反省やおわびの意思を示した談話や日韓共同宣言の継承を表明する方向で調整している。
 他にも懸案が山積する中、両政府は「パッケージ解決」を検討。日本側は2019年に発動した半導体材料の対韓輸出規制を解除し、安全保障上の輸出管理で優遇措置を取る「ホワイト国(優遇対象国)」に韓国を再指定する方針だ。両首脳が年1回ずつ相互訪問する「シャトル外交」の再開も視野に入れている。
 見切り発車
 「韓日間の協議は締めくくりの段階に入った」。韓国大統領府の金聖翰国家安保室長は5日、米国へ出発前の仁川国際空港で記者団に強調した。空港には記者が殺到、金氏は徴用工問題の質問攻めに遭った。
 訪米は、尹大統領が目指している4月訪米の地ならし。バイデン政権は対北朝鮮で日米韓3カ国の安全保障協力強化を急いでおり、日韓関係改善への期待が強い。金氏は「韓日関係の改善を米側が注視している」と語り、米国滞在中に関係修復をアピールしたいとの思惑をにじませた。
 ただ、韓国政府は日本企業に資金拠出を引き続き求めていく方針だが確約は得られていない。韓国メディアは「見切り発車」とやゆ。被告企業の関与を求める原告らの訴えや世論の批判は強いままだ。
 聯合ニュースは慰安婦問題を引き合いに、日本側が真摯な態度を見せない限り「合意するが問題は解決しないという失敗を繰り返すだけだろう」と報じた。尹政権は引き続き難しい立場に置かれる可能性もある。(東京、ソウル共同)

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