トルコ・シリア大地震 震源域は要注意エリア 住民後悔「油断した」【大型サイド】
計5万人以上が犠牲となったトルコ・シリア大地震は、大きな揺れが迫っているとの指摘が以前からあった「要注意エリア」が震源域だったと推定されている。しかしこのエリア内ですら、災害への備えが十分だった様子はうかがえない。「分かっていたのに油断した」。住民は後悔をにじませた。
空白地
トルコで被害の大きかった地域の一つ、南部カフラマンマラシュ県。2月6日に起きた2回の巨大地震の1回目、マグニチュード(M)7・8の震源が近い地域を車で移動していると、道路を斜めに横断するような亀裂がアスファルトをめくり上げていた。亀裂はそのまま丘の先の小麦畑まで続いている。
亀裂は、長大な活断層「東アナトリア断層」に関連しているとみられる。この断層は古い文書記録などから、過去に繰り返し大きな地震を起こしてきたとされる。
東京大地震研究所などによると、東アナトリア断層を複数の区画に分けると、19~20世紀に各区画でそれぞれ地震が起きていたが、16世紀を最後に揺れが起きていない区画が一つあった。今回の震源域はここと重なるとみられている。
次の巨大な揺れにつながるエネルギーが地下で蓄積され続けている恐れから、地震の“空白地”だったこの区画は専門家にとって、警戒が必要な場所としてよく知られた存在だった。
皆無
「大きな地震があるかもしれないとずっと聞かされていた」。地面に亀裂があった場所から程近い避難テントの並ぶ公園で、複数の住民が明かした。政府やメディアの情報で、特に危険なエリアに住んでいることは理解していたと証言した。
だが家屋倒壊で親族の女性を亡くしたというサルマン・ギョズルギョルさん(38)は「自分も含め、家の耐震チェックや非常食備蓄のような防災対策をやっている住民は知らない」と振り返る。
避難所になり得た学校やモスク(イスラム教礼拝所)も、現行の耐震基準に沿った補強工事がされることはなく、また団結して行政に訴えかけるような動きは皆無だったと語る。地震でどちらも倒壊し、住民は食料や避難テントといった物資が届き始めるまでの数日間、空腹なまま車中泊や野宿を強いられた。
「警告を真剣に受け止めていれば状況は変わっていたはずだ」。ギョズルギョルさんは訴えた。(カフラマンマラシュ県共同=菊池太典)