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話題のAIソフト「チャットGPT」で記事執筆、人間と遜色ない出来に驚き MBA合格レベル、学校は禁止、陰謀論拡散の懸念も

 米新興企業「オープンAI」が開発した人工知能(AI)の自動応答ソフト「チャットGPT」が世界的な注目を集めている。人と話していると錯覚するほどの自然さで、詩やエッセーなどを作ることも可能だ。試しに「チャットGPTが話題になっているという記事を書いて」と依頼したところ、次のような記事ができあがった。

チャットGPTの画面。筆者の指示に応じて生成された記事
チャットGPTの画面。筆者の指示に応じて生成された記事
「日本の最初の総理大臣は」などの質問に対し、誤った回答をしたチャットGPTの画面
「日本の最初の総理大臣は」などの質問に対し、誤った回答をしたチャットGPTの画面
チャットGPTの応答機能を付けたマイクロソフトの検索サイト「Bing(ビング)」の画面
チャットGPTの応答機能を付けたマイクロソフトの検索サイト「Bing(ビング)」の画面
「Bing(ビング)」の新機能を発表するマイクロソフトのナデラCEO=2月7日、米ワシントン州(マイクロソフト提供、共同)
「Bing(ビング)」の新機能を発表するマイクロソフトのナデラCEO=2月7日、米ワシントン州(マイクロソフト提供、共同)
「記者の仕事が奪われるのでは」との質問に対するチャットGPTの回答画面
「記者の仕事が奪われるのでは」との質問に対するチャットGPTの回答画面
チャットGPTの画面。筆者の指示に応じて生成された記事
「日本の最初の総理大臣は」などの質問に対し、誤った回答をしたチャットGPTの画面
チャットGPTの応答機能を付けたマイクロソフトの検索サイト「Bing(ビング)」の画面
「Bing(ビング)」の新機能を発表するマイクロソフトのナデラCEO=2月7日、米ワシントン州(マイクロソフト提供、共同)
「記者の仕事が奪われるのでは」との質問に対するチャットGPTの回答画面

 「最近、チャットGPTなどの自動応答ソフトが注目を集めています。チャットGPTはオープンAIが開発した自然言語処理技術をベースにしたAIチャットボットで、人工知能が自動応答を行うことができます。この技術は顧客サービスやチャットボットアプリなどで利用され、コスト削減や24時間対応などのメリットがあります。一方で、人工知能が全てを処理することによる誤解釈や誤応答にも注意が必要です」。
 細かな文体や語句を調整すれば、記事として十分成り立つレベルだ。筆者はAIに仕事を奪われるときが近く来るかもしれないと感じた。(共同通信=隈本友祐)
 ■公開2カ月で月間ユーザー1億人
 チャットGPTはオープンAIの言語モデル「GPT―3・5」をベースに開発された。膨大な量の文章や会話データを元に学習し、出てきた答えに人間が評価を加えることによってさらに学習が深まる設計だ。2022年11月、ネット上に一般公開された。メールアドレスなどを入力するだけで誰でも利用でき、すぐに100万人が利用登録。ロイター通信によると、公開後2カ月で月間ユーザー数は1億人を突破したという。
 AIの性能が向上し、文脈を理解したり、質問と回答のトーンを合わせたりすることが可能になったのが特徴だ。「台風が多い季節はいつですか」と聞くと、「一般的には夏から秋にかけてです」と答える。追加で「それはなぜ」とだけ聞けば、「この時期は気温や湿度が高く、海水温も高いため、台風が成長しやすい環境が整う」と答えてくれるといった具合だ。
 米ペンシルベニア大の研究では、チャットGPTが経営学修士(MBA)の最終試験に合格できることが判明した。研究を主導したターウィッシュ教授は「答えが正しいだけでなく、解説も素晴らしい。最初は間違えても適切なヒントをもらえば、自ら修正することができる」と驚く。米医療企業の研究チームが米国の医師資格試験問題を解かせたところ正解率は52~75%で、こちらも合格ライン前後に達したという。
 ■日本の歴史は間違いが多い
 ただ、苦手分野もあり、日本の歴史関連は特に間違うことが多い。「日本の最初の総理大臣は」と聞いたところ、「山県有朋です」と誤答。「最初の征夷大将軍は」に対しては「平将門です」と間違えた。オープンAIはユーザーからのフィードバックを集めて改善を図ると説明している。
 チャットGPTの回答を写せばカンニングが簡単にできるため、教育現場は戦々恐々としている。米国では初等・中等教育を中心に複数の学区で使用が禁止されたほか、フランスの有名高等教育機関のパリ政治学院も使うことを禁じた。
 いち早く公立校での使用を禁じたニューヨーク市教育局の担当者は「生徒の学習への悪影響や安全性、正確性に関する懸念からアクセスを制限した。このツールは質問に対する答えを素早く簡単に提供できるかもしれないが、学業や生涯の成功に不可欠な批判的思考力や問題解決力を養うものではない」と話す。
 チャットGPTは毎回異なった回答をするため、既存サイトの情報を貼り付ける「コピペ」と違い、人間が書いたものかAIが書いたものか簡単には分からないことも悩みの種だ。米プリンストン大の学生が2023年1月、チャットGPTによる文章かどうかを判別するソフト「GPTゼロ」を開発したところ、世界中の3万人以上が利用登録をした。ただ精度はまだ不十分だ。
 ■マイクロソフトCEOは「パラダイムシフト」を予測
 チャットGPTの大流行に続き、米巨大ITも相次いで自動応答ソフトを発表した。オープンAIに投資するマイクロソフト(MS)は、検索サイト「Bing(ビング)」にチャットGPTの技術を利用した応答機能を追加。「ウェブの副操縦士」と位置づけ、回答した文章の情報源が明示される点がチャットGPTとは異なる。
 現在は利用者を限定して公開しているが、筆者は待機リストに登録した後、利用可能になった。「ニューヨーク5日間の旅行の日程表を考えて」と聞くと、航空会社や旅行会社のサイトを情報源として貼り、「1日目は自由の女神像やチェルシーマーケット、2日目はセントラルパークやメトロポリタン美術館」といった具合に提案してくれた。
 自ら必要な情報を探すという従来のインターネット検索の使い方を変える可能性が指摘されており、MSのナデラ最高経営責任者(CEO)は新しいビングの発表会で「急速な技術革新が起きており、(社会全体の価値観が劇的に変わる)パラダイムシフトの時期だ」と話した。グーグルもAIを活用した自動応答ソフト「Bard(バード)」を発表し、競争が激化している。
 ■政治スタンスが「リベラル寄り」との批判も
 米国では、自動応答ソフトの政治的な「偏り」を巡る議論も起きている。保守系のFOXニュースは、チャットGPTはバイデン大統領を称賛する詩は作成できたのに、トランプ前米大統領を称賛する詩を作成することは拒否したと報じた。化石燃料の使用を促す文章の要求に対しても「気候変動の影響を緩和し、持続可能性を促進するための世界的な取り組みに反する」と拒否したという。
 こうしたチャットGPTの特徴に対し、主に保守層から「リベラル寄りだ」との批判が起きている。オープンAIの創業者の1人でもある米企業家のイーロン・マスク氏も「非常に懸念している」と述べた。
 チャットGPTが差別や陰謀論の拡散を助長するとの懸念もある。オンラインの偽情報を調査する米ニュースガードは、チャットGPTを操ることで陰謀論を含む文章を生み出すことが可能だと指摘した。チャットGPTは2018年に米フロリダ州の高校で起きた銃乱射事件が「やらせ」だったとする陰謀論に基づき、この事件は銃規制強化のために政府やメディアが仕組んだものだとするデマを書いたという。ニュースガードは「ネット上にある誤情報を拡散する強力なツールになり得る」と警告する。
 批判も含めてチャットGPTに対する議論は過熱気味だ。オープンAIのアルトマンCEOは「何が起きているのか、人々がどのようにツールを使いたいのかを理解するための時間が重要だ」と注意喚起した。
 筆者は、チャットGPTに記者の仕事が奪われるのではないかと恐れていると吐露してみた。すると、チャットGPTは「私はあくまでもアシスタントであり、人間の記者の仕事を奪うことはできません。情報を解釈するための感情や文脈、創造性などは持っていません。むしろ記者にとっての有用なツールとして、より価値のある記事を書くための支援を提供できます」と回答した。その答えが正しいことを願っている。

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