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ウクライナ侵攻 ロシアに接近、中東で波紋 イラン、軍事均衡に変化も【大型サイド】

 ロシアによるウクライナ侵攻で、欧米の制裁で孤立するイランとロシアが軍事協力を強めている。ロシアが無人機(ドローン)供与の見返りにイランへの軍事支援を拡大するとの見方もあり、中東のパワーバランスを揺さぶる可能性も。イランと対立するイスラエルは警戒、緊張が高まる。

ウクライナ侵攻後の中東地域の構図(写真はロイター、ゲッティ、タス)
ウクライナ侵攻後の中東地域の構図(写真はロイター、ゲッティ、タス)

 一石三鳥
 1月28日深夜、イラン中部イスファハン。国防軍需省の工場で爆発音が鳴り響き、火花が上がった。無人機攻撃だった。イスラエルの対外特務機関モサドによる破壊工作とみられている。
 イスラエルが最優先するのは、イランの勢力拡大の阻止だ。隣国シリアではイラン系組織が足場を固め、イスラエルは断続的に空爆を実施。そのためにはシリア・アサド政権の後ろ盾で、同国の制空権を握るロシアの容認が必要だ。
 昨年2月の侵攻開始以後、イスラエルはロシアとウクライナの間で中立政策を展開。西側諸国の一員を自認する一方、ウクライナに対する軍事支援は拒否している。
 だが、兵器不足のロシアがイラン製無人機を大量に購入し、連携を深めたことで情勢は変わった。モサド長官は昨年12月、ロシア批判を避けながら「イランの企てに警告する」とけん制した。
 軍需省工場への攻撃はこうした中で起きた。専門家は、イランをたたきウクライナを助けられる上、ロシアとの関係も悪化させない「一石三鳥の賢い方法」とみる。
 同盟模索
 イスラエルへの対抗上、軍事力強化を迫られるイランは「核保有国の同盟国を見つける必要があった」(革命防衛隊関係者)ことから、孤立を深めるロシアに目を付けた。無人機の見返りとして、地対空ミサイル「S400」や戦闘機スホイ35の供与が取り沙汰される。防空体制の脆弱性をロシア製兵器で補う狙いとみられる。
 イラン核合意の修復協議は停滞し、イランは核開発を拡大。軍事力も強化されれば、イランの影響力が増すのは必至だ。
 ロシアはイランとイスラエルの間で均衡を保つ中東政策を続けてきた。イランに接近しつつ、イスラエルがウクライナ側に完全に傾くのを警戒し、メドベージェフ安全保障会議副議長は「ウクライナに軍事支援すれば、2国間関係は破壊される」とイスラエルを脅す。
 イスラエルとロシアの「戦略的関係」(中東専門家)は断絶には至らないとの見方が強い。ただイスラエルによるとみられるイラン施設への攻撃が増える可能性に加え、「イランの軍事力向上に対抗する必要がある」(元イスラエル軍幹部)との意見も多く、軍拡競争に陥る恐れがある。(エルサレム、テヘラン共同=平野雄吾、渡会五月)

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