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プーチン氏の核威嚇 「核の恫喝」震える世界 ウクライナ支援にジレンマ【大型サイド】

 ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領が戦況の悪化と膠着に伴い繰り返す「核兵器使用の恫喝」(米政府筋)が、世界の安全保障に深刻な影響を及ぼしている。米国はウクライナに軍事支援を増強すればロシアの暴発を招きかねないジレンマを抱える。人類に破滅をもたらす最悪シナリオの懸念は消えない。

核を巡る首脳の主な発言(写真はロイター、タス)
核を巡る首脳の主な発言(写真はロイター、タス)

会話なし
 「ロシアは最強の核大国の一つだ。われわれに攻撃を直接加えれば壊滅は免れず、悲惨な結果となるのは明らかだ」。昨年2月24日の侵攻開始時のプーチン氏演説を欧米は明白な核兵器による威嚇と受け止めた。米政府はロシアの核戦力態勢の変化は確認していないが、警戒を強めている。
 影響は欧州にも広がる。フィンランドは核威嚇を主要な理由として北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請した。
 米政権は不測の事態を防ぐため、米ロ戦略対話の再開を目指すが、米国務省のジェンキンス次官は今月10日「残念だが、会話はない」と語った。
 ロシアはウクライナ侵攻後の欧米による対ロ制裁を理由に、米ロの新戦略兵器削減条約(新START)に基づく核関連施設の査察受け入れを停止。今月21日にプーチン氏は条約履行停止を表明した。核不拡散体制は揺らぎ、両国の軍備管理は風前のともしびだ。
 バイデン米大統領は「必要とされる限りウクライナを支える」立場を強調。戦闘が長引けば兵器供給を求める声が一層高まるのは不可避だ。
 ただ、バイデン氏はウクライナが熱望するF16戦闘機の供与を「ノー」と拒否。プーチン氏が核ボタンに手をかけないようロシアを過度に追い込まず、ウクライナを勝たせるという極めて難しい対応を迫られている。
死活問題
 プーチン氏が「あらゆる手段を使う」などと核使用の可能性に言及し続けるのは、通常兵器ではNATOに太刀打ちできない現実の裏返し。ウクライナ支援を拡大する欧米へのけん制だ。
 ロシアの目には、米国が加盟国に「核の傘」を提供するNATOの東方拡大こそが核の脅しと映る。仮にウクライナがNATOに加盟し、国境に核ミサイルが配置されれば、モスクワまでの核弾頭到達時間は約10分。安全保障上の死活問題だ。
 欧米はウクライナに戦車の提供を決めた。ロシアは「欧米は既に戦争当事者だ」と批判する。
 プーチン氏は今月2日、第2次大戦の「スターリングラード攻防戦」でナチス・ドイツ軍に勝利して80年を記念する式典で「ロシアを相手にした現代の戦争は(以前と)全く違ったものになる。戦車では決着しない」と述べ、核兵器使用を改めて示唆した。欧米がロシアの勝利を阻もうとするほど緊張は高まり、核使用の懸念は深まる。悪循環を断ち切るきっかけは見えない。(ワシントン、モスクワ共同=高木良平、佐藤親賢)

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