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バイデン氏極秘訪問の舞台裏 大統領の覚悟、世界に示す 米政権、水面下で周到準備【大型サイド】

 バイデン米大統領による20日のウクライナ首都キーウ(キエフ)電撃訪問は、政権内のごく少数が数カ月にわたって水面下で周到な準備を進め、実現させた。バイデン氏はゼレンスキー大統領との連帯の意思を世界に示すため、危険を覚悟で決行した。米軍の拠点のない戦地に軍最高司令官の大統領が赴いた異例の極秘訪問。舞台裏を関係者の話で再現した。

20日、ウクライナの首都キーウに到着したバイデン米大統領(ロイター=共同)
20日、ウクライナの首都キーウに到着したバイデン米大統領(ロイター=共同)
20日、ウクライナの首都キーウで、ゼレンスキー大統領(中央右)と歩くバイデン米大統領(同左)(AP=共同)
20日、ウクライナの首都キーウで、ゼレンスキー大統領(中央右)と歩くバイデン米大統領(同左)(AP=共同)
電撃訪問の経過(イメージ)
電撃訪問の経過(イメージ)
20日、ウクライナの首都キーウに到着したバイデン米大統領(ロイター=共同)
20日、ウクライナの首都キーウで、ゼレンスキー大統領(中央右)と歩くバイデン米大統領(同左)(AP=共同)
電撃訪問の経過(イメージ)

未明の出発
 バイデン氏は土曜日の18日夜、ワシントンのイタリア料理店でジル夫人と夕食を取り、ホワイトハウスに戻った。
 公開された日程はそれで終了だったが、19日午前4時15分、ワシントン郊外の米軍基地からバイデン氏や側近、医療チームや警備担当ら少人数を乗せた専用機がひそかに欧州へ飛び立った。
 ドイツの米空軍基地を経由した後、ウクライナとの国境に近いポーランド南東部ジェシュフの空港に着陸。周辺の駅で列車に乗り換えて国境を越え、約10時間かけてキーウに到着したのは20日午前8時ごろ。国境上空には複数の米軍偵察機が飛び交う厳戒態勢だった。
 「米国の支持は揺らがないと伝えるため、ここにきた」。約5時間のキーウ滞在中、バイデン氏は空襲警報が鳴り響く屋外をゼレンスキー氏と歩き、ウクライナを支える姿勢を誇示した。
秘密保持
 政権はホワイトハウスのほか、国防総省や情報機関、大統領警護隊(シークレットサービス)の少人数の担当者で数カ月前に訪問計画を立て始めた。情報管理に細心の注意を払ったのは、事前に動きが漏れればバイデン氏の身が危険にさらされるからだ。
 バイデン氏は17日にホワイトハウスの大統領執務室で側近と協議し、訪問を最終的に決断。ホワイトハウスは17日、米メディア2社だけに事前に報道しない約束で同行取材を認めた。同行記者に集合場所を知らせるメールのタイトルは「ゴルフトーナメントの到着案内」と、ゴルフ旅行を装う入念ぶりだった。
 秘密保持は徹底された。19日時点でバイデン氏は既に移動中だったが、国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は同日の米テレビのインタビューで「ウクライナ入りする計画はない」と否定してみせた。
 米国の支配の及ばない戦地訪問計画は困難を極めた。バイデン氏の出発数時間前にはロシア側にも通告、不測の事態を防ぐためにあらゆる手を尽くした。バイデン氏に危険が及べば、核大国である米ロの直接戦争になりかねないと警告した可能性がある。
 ホワイトハウス高官は「訪問は大胆で危険を伴った。侵攻が続く限り米国がウクライナを支援し続けることを、もう誰も疑わないだろう」と語った。(ワルシャワ共同=高木良平)

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