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マイナンバー関連事業入札 コスト抑制に競争欠かせず 一部業者依存から脱却へ

 国と地方公共団体が共同運営する法人によるマイナンバー関連の情報システムなどの調達で、複数業者による競争を経ない随意契約などが相次いでいることが判明した。税金が原資となる公的機関のシステム調達では、コスト抑制のための企業間競争が欠かせない。だが現実には一部事業者に依存するケースが多く、政府はそうした状況からの脱却に向け対策に乗り出した。

コンビニのセルフレジで、自身のマイナンバーカードを使いビールを購入する河野デジタル相=1月、東京都千代田区
コンビニのセルフレジで、自身のマイナンバーカードを使いビールを購入する河野デジタル相=1月、東京都千代田区
官公庁の情報システム調達の競争活性化のための方策例
官公庁の情報システム調達の競争活性化のための方策例
コンビニのセルフレジで、自身のマイナンバーカードを使いビールを購入する河野デジタル相=1月、東京都千代田区
官公庁の情報システム調達の競争活性化のための方策例

 例外
 「システムを構築したベンダー(提供業者)と別の企業に保守や改善を任せると、知見不足でトラブルの復旧遅れや情報漏えいが生じかねず、国民サービスに影響が出る恐れがある」
 マイナンバーカードの発行などを業務とする地方公共団体情報システム機構(J―LIS)の担当者は、関連事業の契約にあたり一般競争入札を実施する必要性を認めつつ、随意契約や一者応札が多くなる背景を明かした。随意契約などの場合、コスト高になる懸念があるが「事業者との交渉を通して費用抑制をしている」と説明する。
 機構は会計規程で、売買契約などをする際は一般競争入札を原則とし、随意契約などは例外と位置付けている。政府でマイナンバー関連システムの整備に携わった武庫川女子大の金崎健太郎教授(公共政策)は「システムを構築する技術力や短期間で仕上げられる能力が事業者に求められるが、応じられる企業が少ない」と随意契約などが多くなる理由を解説する。
 環境整備
 マイナンバーのような官公庁などのシステム調達では、特定企業の技術に依存した製品を採用した後、他社製品への切り替えが難しくなる「ベンダーロックイン」が問題となっている。企業間競争が損なわれ、価格の高止まりや品質の低下を招きかねないからだ。
 公正取引委員会は2022年2月の報告書で「競争政策の観点から、多様なシステムベンダーが参入しやすい環境を整備することが重要」と強調。ベンダーロックインの回避には、設計図が公開されているオープンソースソフトウエアを採用した仕様設計や、官公庁のシステム関連人材の確保が必要と指摘した。
 デジタル庁も今月、中小・ベンチャー企業の参入機会を拡大するといった施策を盛り込んだ報告書案を公表。検討会では「(中小・ベンチャーの参入拡大により)競争する法人を増やすことが政府に求めることだ。競争が増えていかないと日本の経済は活性化しない」といった意見が委員から上がった。
 金崎教授は「複数のベンダーと対話しながら契約相手を選ぶような方式を採用する必要がある」と指摘した。

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