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作家の島村菜津さん 「食」を通じた反マフィア運動伝える【多士才々】

 映画「ゴッドファーザー」などの影響でマフィアのイメージが強いイタリア南部シチリア島で今、「食」を通した反マフィア運動が盛んだという。その取り組みを取材した「シチリアの奇跡」(新潮社)を出版したノンフィクション作家の島村菜津さんは、「楽しくなければ変えられない。“食”はその最適なツールです」と話す。

「食や町の多様性を守るには、上から目線の改革ではなく、日常からじわりと変えていくのが有効。特に女性の役割が重要です」と話す島村菜津さん
「食や町の多様性を守るには、上から目線の改革ではなく、日常からじわりと変えていくのが有効。特に女性の役割が重要です」と話す島村菜津さん

 東京芸術大で美術史を学び、イタリアの豊かな食文化に魅了された。グローバル化で失われゆく食の多様性を見直すイタリア発の運動を紹介した2000年の「スローフードな人生!」は、日本でもブームを起こした。
 一方で、「スローフード」の言葉が本来の趣旨から離れ、都合よく利用されることに悩んだ。「社会に根付かせるにはどうしたらいいか」。そんな時にシチリアで出合ったのが、若い世代を中心とした反マフィア運動。マフィアからの押収地で環境や人権に配慮した有機農業を営んだり、「みかじめ料」不払いを掲げる店を応援したりすることで、マフィアの影響力を排除する試みだった。
 身近な買い物から社会課題の解決を目指す「エシカル(倫理的)消費」にも通じる。島では近年、凶悪事件は減ったものの、マフィアによる脅しや情報操作も残る中、楽しみながら社会を変えようとする若者たちの姿は「日本にとってもヒントになる」と考える。
 くしくも1月中旬、マフィアのボスが逮捕された。島の友人からの“速報”に興奮しつつ、「腐敗や脅威が根絶したわけではない」。島ではマフィアによって亡くなった人は500人以上いるとされ、新世代の軽やかな戦いも、犠牲者の命の上に立つ。引かれるのは「人生を懸けて真の民主主義を諦めない人たち」。そんな存在を追い続ける。

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