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トルコ・シリア大地震 「世紀の災害」政権強調 責任回避狙い?擁護と反発【大型サイド】

 トルコのエルドアン大統領が今回の大地震を「世紀の災害」と強調している。備え不足が被害拡大につながったとして政権批判が高まる中、地震の巨大さに国民の目を向けさせ、責任を回避しようとする思惑が透ける。反政府系メディアは「世紀の油断」と酷評。被災地には政権擁護と反発が渦巻く。

トルコ南部アダナでアパートが倒壊した現場=13日(共同)
トルコ南部アダナでアパートが倒壊した現場=13日(共同)
14日、トルコ・アンカラで防災当局者との会合後に声明を出すエルドアン大統領(ゲッティ=共同)
14日、トルコ・アンカラで防災当局者との会合後に声明を出すエルドアン大統領(ゲッティ=共同)
倒壊したアパートの跡地に置かれていた写真=13日、トルコ南部アダナ(共同)
倒壊したアパートの跡地に置かれていた写真=13日、トルコ南部アダナ(共同)
トルコ南部アダナでアパートが倒壊した現場=13日(共同)
14日、トルコ・アンカラで防災当局者との会合後に声明を出すエルドアン大統領(ゲッティ=共同)
倒壊したアパートの跡地に置かれていた写真=13日、トルコ南部アダナ(共同)

大地震
 「世紀の災害、と言われている。大げさな表現ではない。(専門家が)こう言っている」「連続した地震は最も強力な原爆数百個分に相当するエネルギー」。エルドアン大統領は14日、テレビ演説でこう訴えた。
 政権の立場を代弁するアナトリア通信は「地震のエネルギーは1995年の阪神大震災の10倍」「今回の地震はこの断層で観測されたどの地震よりも大きい」などと日本を含む各国専門家11人のコメントを並べ、地震の激しさを伝えてきた。
 約100年前の共和国建国以来、最悪の地震犠牲者数を記録したが、国際的には地震規模以上の被害だったとの見方が根強い。
 コメントを引用された米大学の地震専門家は「(トルコ政府は)私の言葉を悪用したのか。地震は避けられないが、被害規模はそうではない」とツイッターで反論した。スペインの専門家は、トルコのファクトチェック機関に「トルコと同じ規模の地震は世界で毎年10~20回発生している」と説明した。
印象操作
 被災地には各階の底が重なるように真下に落ちる「パンケーキ崩壊」を起こした強度不足の建物と、倒壊を免れた建物が混在する。トルコは耐震基準を定め、行政の監督制度も整っているが、十分に機能していないのが実情だ。
 反政府系メディア、ソズジュ紙によると、耐震基準を問わないまま政府が建築登記を認めた住宅が被災10県に29万4千戸あった。無許可で建設、住民が居住してきた「違法物件」だったが、2018年に政権が特例で認めた。前回大統領選の直前だった。
 最大野党の党首は「『世紀の災害』とは『自分たちはどうすることもできない、問題を解決できない』という意味だ。災害を誇張するための印象操作だ」と批判する。
 被災地を歩くと、想像を絶する被害が広がっている。トルコ南部アダナの会社員メフメト・ユルマズさん(28)は「世界的な大災害だ。完璧な対応なんてできない」とまくし立て、政府を擁護した。崩れる直前にアパートを逃げ出した大学生オカン・クルジャリさん(21)は「備えがなかっただけ。みなが責任から逃れようとしている」と訴えた。(アダナ、イスタンブール共同=日出間翔平、橋本新治)

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