作家の日比野コレコさん どんな批判も称賛も小説で受け止める【多士才々】
「私が小説の器なのではなくて、小説が私の器です。どんな批判もどんな称賛も、小説で受け止めたいと思います」。18歳で文芸賞を受賞し、作家デビューした日比野コレコさん。贈呈式では小説との関係をそう表現し、今後の抱負を語った。
家に娯楽の対象になるものがなく、幼い頃から図書館で借りてきた小説を読んでいた。小学校低学年の頃には小説を書き始め、これまでに段ボール箱1箱分の作品を執筆。新型コロナウイルス禍を契機に高校2年から新人賞に投稿するようになり、大学1年で文芸賞を射止めた。
受賞作「ビューティフルからビューティフルへ」は、「死にたい歴=年齢」であるナナ、「骨がいっぽん無駄に生えてきそう」な恋をする静、その恋の相手とつるむビルEという、高校生の男女3人の物語。抜群の言語センスで思春期の絶望と希望を描き、選考委員から「過剰だ、と思いつつ惹かれずにはいられない」と評価された。
「言葉のねじれ」が好きだと言う。ラップや都々逸、俳句、川柳、広告コピー…。興味は多方面に及び、そうした言葉の断片が音楽の「サンプリング」のように換骨奪胎して用いられる。言葉遊びも作品の魅力だ。
とはいえ、他の表現ではなく、小説を執筆することに並々ならぬ思いがある。「絶対小説がいい。短歌とか詩とか小説に入れようと思ったら入れられるし、一番広い」。小説は自身の感情や考えを投げ込む「機関」だと語る。「だから、私が生きている限り、小説を書くことをやめることは絶対ないです」
筆名は、禅語の「日日是好日」から。「踏み石を跳んでいくみたいな感じで、私の人生がどんどん好転していく予感がしています」