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「再考コロナ時代 5類移行」 逼迫解消は不透明 医療体制に課題山積

 政府は新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、5月8日に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げる。幅広い医療機関で患者が受診できるよう体制を拡大するとしているが、逼迫解消につながるかどうかは不透明な部分がある。搬送先の調整に自治体が関わらなくなったり、財政支援が減ったりすることで、病院の負担が増す可能性もある。医療現場の課題は山積みだ。

感染を防ぐためのゴーグルをつけて、新型コロナ患者を回診するNTT東日本関東病院の櫻井隆之感染症内科部長=20日、東京都品川区
感染を防ぐためのゴーグルをつけて、新型コロナ患者を回診するNTT東日本関東病院の櫻井隆之感染症内科部長=20日、東京都品川区
新型コロナウイルス患者の治療の様子=20日、名古屋大病院(同病院の山本尚範救急科長提供、画像の一部を加工しています)
新型コロナウイルス患者の治療の様子=20日、名古屋大病院(同病院の山本尚範救急科長提供、画像の一部を加工しています)
新型コロナ5類移行に伴う医療提供体制の見直し
新型コロナ5類移行に伴う医療提供体制の見直し
感染を防ぐためのゴーグルをつけて、新型コロナ患者を回診するNTT東日本関東病院の櫻井隆之感染症内科部長=20日、東京都品川区
新型コロナウイルス患者の治療の様子=20日、名古屋大病院(同病院の山本尚範救急科長提供、画像の一部を加工しています)
新型コロナ5類移行に伴う医療提供体制の見直し

 8回の波
 「3年間ずっと厳しい状況だった」。軽症や中等症の感染者の診療に携わってきたNTT東日本関東病院(東京都品川区)の櫻井隆之感染症内科部長は、岸田文雄首相が5類への引き下げを表明した20日、入院患者の回診をしながら現場での奮闘の日々を振り返った。
 2020年1月に国内で初めて感染者が確認されてから3年。8回の流行の波が発生し、3200万人超が感染、6万5千人以上が亡くなった。同病院では都内の多くの患者を受け入れてきたが、昨年秋から続くオミクロン株による第8波では「3人退院しても同じ日にまた3人入院して病床が埋まる。入れ替わりが激しかった」と話す。
 見直し
 新型コロナ患者の治療や入院は、感染拡大を防ぐため、発熱外来など指定された一部の医療機関が担っているが、患者が集中して医療逼迫を招く一因となった。
 加藤勝信厚生労働相は「もっと幅広い病院や診療所が対応してもらえるようにしていく」としており、3月上旬をめどに現行の医療体制を見直した新しい方針を示す意向だ。
 だが医療現場は懐疑的だ。櫻井医師は「5類になるから全部の医療機関で診てほしいが、あまり期待していない」と話す。院内感染を防ぐため個室を用意したり動線を分けたりできない医療機関は、感染者の診療に加わるのをためらうと予想されるためだ。
 厚労省は昨年6月、「病棟全体を専用病棟にしなくても新型コロナ患者を受け入れられる」とする専門家の提言を基に、インフルと同等の体制で新型コロナ診療に当たる方法を周知した。ただ高い感染力を警戒する医療関係者は多く「院内感染対策への支援は必要不可欠」と訴える。
 見直しでは、発熱外来設置や病床確保への財政的な支援がどうなるかにも注目が集まる。縮小していけば、新型コロナを診療する医療機関は、かえって減る恐れもある。
 救急搬送
 新型コロナでは、自治体が搬送先の調整で大きな役割を担ってきたが、5類になると救急隊や医療機関が個別に搬送先や入院先を探すことになる。山本尚範・名古屋大病院救急科長は「患者が特定の医療機関に偏らないようにするための振り分けができなくなる。搬送時間も長くなり、行き先が決まらない事案が一層増える恐れもある」と指摘する。
 医療費は一定の自己負担を求め、公費による支援を縮小していく。新型コロナの治療薬は高額で「経済的な事情から治療を断念する人も出かねない」と懸念する。
 櫻井医師は「この3年間で行政が診療所を一つ一つ訪ねて、どうすれば新型コロナに対応できるか指導できれば良かった」と反省点を挙げた上で、こう訴える。「高齢者など早く治療が必要な患者に、すぐ薬を投与して悪化を防げる仕組みが大事。どれだけ早く通常の診療に落とし込めるかが鍵だ」

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