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育休中のリスキリング支援 「育児は仕事より大変」 首相発言に反発相次ぐ

 岸田文雄首相が、育児休業中の女性がスキルを身に付けるための学び直し「リスキリング」を支援する考えを表明したことに反発の声が相次いでいる。子育て当事者らが「育児は仕事よりも大変」などと非難し、首相は発言の3日後に「本人が希望することが前提」と強調。釈明に追われた格好だ。

リスキリングを巡る主な発言・投稿(似顔 本間康司)
リスキリングを巡る主な発言・投稿(似顔 本間康司)

 「育児中など、さまざまな状況にあっても主体的に学び直しに取り組む方々をしっかりと後押しする」。27日の参院代表質問での首相答弁。自民党の大家敏志氏が、産休・育休中に技能や学位を取得することで「キャリアアップが可能だ」とし、リスキリングに取り組む企業を支援するよう提案、首相は賛意を示した。
 首相の発言に対し、交流サイト(SNS)のツイッターで「赤ちゃんの育児は過酷」「学び直しの時間などない」と批判が続出。IT企業サイボウズの青野慶久社長は「赤ちゃんを育てるのは、普通の仕事よりはるかに大変。子育てをしてこなかった政治家が言いそうなことですね」と指摘した。
 子育て支援に取り組む認定NPO法人フローレンスの駒崎弘樹会長は「政治家が男性育休取ってないから、こんなトンチンカンなこと言い出すんだよ」と皮肉った。その上で、政府がリスキリングを推進するなら、育休中も保育所に預けられる制度にすべきだと求めた。
 野党も攻勢を強めた。共産党の小池晃書記局長が29日のNHK番組で「育休中は子育てに格闘している。リスキリングなどできるわけがない」と述べた。国民民主党の榛葉賀津也幹事長も「がっかりした。(子育て支援の重要性を)『自民党さん、やっとわかってくれたな』と思ったら、総理がこれを言うんですから」と批判した。
 こうした反発も受け、首相は30日の衆院予算委員会で沈静化を図った。自民党の鈴木貴子氏への答弁で「私自身も3人の子どもの親。子育てというものが経済的、時間的、精神的に大変だというのは目の当たりにしたし、経験した」と言及。27日の自身の答弁について「本人が希望した場合には、学び直しを後押しできる環境整備を強化していくことが大事だ」と理解を求めた。
 日本総合研究所の池本美香・上席主任研究員は「子育てで体調を崩す母親への支援が求められる中で、学び直しと言われてしまうと『現場を分かっているのか』という反発が生まれるのは当然だ」と話す。
 一方、日本では育児負担が母親に集中し「学習機会が失われているのは確か」と指摘。母親が大学で学ぶために子どもを保育所に預けやすくしたり、男性の育児参加を促したりするなど「どのような形で学びの機会を保障するか、丁寧に説明する必要がある」と強調した。

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