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対日ビザ再開 中国一転、下ろした拳 経済低迷で「実取る」

 中国政府が日本人に対する渡航ビザ(査証)発給手続き再開を発表、日本の水際対策強化への対抗措置として振り上げていた拳を一転して下ろした。背景には、新型コロナウイルス拡大で低迷した経済の回復を最優先させ「名を捨てて実を取る」(中国外交筋)との判断があった。ただ水際を巡る双方の応酬は、薄氷を踏むような両国関係を改めて浮き彫りにした。

8日、北京首都国際空港で成田行きの便の搭乗手続きをする人たち(共同)
8日、北京首都国際空港で成田行きの便の搭乗手続きをする人たち(共同)


立て直し
 「水際強化策を取り下げれば、ビザをすぐ再開させる」。中国は10日に対抗措置を発表した直後から日本側に対し、中国からの渡航者全員に対する入国時のPCR検査などをやめれば、措置を直ちに撤回すると非公式に打診していた。
 中国のコロナ対策抜本緩和を受け、先陣を切って水際強化を表明した日本に対し、強硬姿勢に出た中国。今度は日本が水際措置を緩和する前に撤回に踏み切った。中国外交筋は狙いをこう解説する。「背に腹は代えられない。コロナの感染拡大で痛んだ中国経済を立て直すには、日本から投資を呼び込むしかない」
 日中間の人的往来の活発化を急がなければならなかったのは、中国が17日発表した2022年の国内総生産(GDP)が前年比3・0%増にとどまり、「5・5%前後」とした政府目標が異例の未達に終わったことが大きい。

一寸先
 水面下で日中間のやりとりが続く中、日本政府が最も懸念していたのは、21~27日の春節(旧正月)の大型連休に大勢の中国人が日本に押し寄せる事態だった。日本政府内には「日本国民が動揺してしまう」(北京の外交筋)との懸念があった。
 中国側にもこの事情は伝わり、春節が終わるタイミングで対抗措置を取り下げ、日本側が水際対策を緩和する環境整備を図った。日本政府は「経済界にとっては歓迎すべき展開だ」(外交筋)と評価。対策の緩和については感染状況などを慎重に見極めながら判断する構えだ。
 今回のビザ発給再開について中国外交筋は「時には妥協も必要だ」と語り、水際対策を巡って日本側にも柔軟な対応を求める考えを示した。ただ「日中関係は一寸先は闇。水際の問題が解決しても、また次の問題が起きる」とも漏らした。(北京共同=福田公則)

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