あなたの静岡新聞
▶ 新聞購読者向けサービス「静岡新聞DIGITAL」のご案内
あなたの静岡新聞とは?
有料プラン

テーマ : 読み応えあり

観光立国 「中国待ち」構図強まる 人手不足、受け皿懸念も

 全国旅行支援で国内が活気づく中、観光立国の再建は訪日客の回復に懸かっている。さまざまな国からの誘客に力を入れる政府だが、新型コロナウイルス禍前に全体の3割を占めていた中国人客の本格回復は見通せないままで「中国待ち」(観光業者)の構図が強まっている。また観光業界は人手不足に悩み、受け皿の脆弱さが懸念される。

東京・銀座を歩く人たち=18日午後
東京・銀座を歩く人たち=18日午後
海外から羽田空港に到着した訪日客=2022年10月
海外から羽田空港に到着した訪日客=2022年10月
訪日客数と訪日消費額
訪日客数と訪日消費額
東京・銀座を歩く人たち=18日午後
海外から羽田空港に到着した訪日客=2022年10月
訪日客数と訪日消費額


明暗
 アジア最大級の予約サイトを運営する「KKday Japan」(東京)によると、台湾や香港などからの春節(旧正月)の訪日旅行が絶好調だ。売上高はコロナ禍前の2019年同期比で2倍以上に急伸した。
 担当者は「3年近くため込んだ訪日旅行熱」と興奮を隠せない。一方で本国での感染状況が深刻な中国人客はごくわずかで明暗が分かれた。
 政府は中国からの直行便受け入れを成田や関西など4空港に限り、厳しい検疫も実施する。中国側は海外への団体旅行を停止したままで、旅行会社幹部は「春節期間の中国人客は限定的。回復の時期はツアー解禁や感染収束次第」とみる。

爆買いの残像
 SMBC日興証券は23年の訪日客数を2250万人程度、過去最多だった19年(3188万人)の7割に戻ると予想。訪日客年間消費額では、日本総合研究所が19年の6割超に相当する3兆1千億円と試算した。中国人客が今年夏以降、徐々に回復するのが前提とされ、遅れれば下振れする。
 名古屋市の名鉄百貨店は昨秋以降、中国の通信アプリ「微信(ウィーチャット)」に商品情報を掲載した。広報担当者は「訪日客の売り上げの8割を占めた中国人客に早く戻ってほしい」。政府関係者は「脳裏に爆買いの残像があり、中国人客に期待する人はやはり多い。彼らの往来再開なしに観光立国の再建はない」と言い切る。

手が回らず
 一方で観光業界は人手薄が顕在化する。帝国データバンクの昨年10月の調査によると「旅館・ホテル」で非正社員が不足しているとした企業は75%。人員整理をしながらコロナ禍をしのいだ側面が他業種より色濃く、再雇用の見極めも難しい。
 全国旅行支援は年末年始の中断を挟み10日から再開した。だが割引率などの変更に伴う客への説明が負担となり、参加を見送った事業者もある。
 スノーリゾートで知られる北海道ニセコ町のホテルの担当者は「手が回らず、空室があるのに予約を受けられないことがある」と嘆く。
 政府が「訪日観光を成長戦略の柱に据え続ける」(国土交通省幹部)ためには、コロナ禍で経営体力を奪われた事業者への支援が欠かせない。
 日本総研の藤山光雄主任研究員は「デジタル技術も生かしつつ業務効率化でサービスの質を高め、従業員の待遇改善につなげる好循環が求められる。復調の兆しが見える今こそ、働き方の見直しや設備投資が重要だ」と指摘する。

いい茶0
▶ 追っかけ通知メールを受信する

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む