ウクライナ集合住宅にミサイル着弾 防空網増強へ支援不可欠 迎撃、3分の1は失敗
ロシアが14日、ウクライナ各地へのミサイル攻撃を行い、東部ドニプロの集合住宅では多数の市民が死傷した。ウクライナは飛来したミサイル38発のうち25発を迎撃したとするが、3分の1を撃ち漏らし、それが甚大な被害をもたらした。ウクライナ側は防空網の増強に向けた欧米の支援拡充が不可欠だと訴える。
空っぽ
「言葉も感情もない。心の中は空っぽだ」
ドニプロの住宅攻撃で負傷した女性アナスタシヤ・シュベツさん(23)はインスタグラムでこう訴えた。建物は巨大な爪でえぐられたように崩れ落ち、住人らががれきの下敷きに。シュベツさんの両親は行方不明のままだ。従軍した恋人は戦死したという。
ウクライナ空軍などによると、住宅に撃ち込まれたのは、ソ連時代に開発された空対艦ミサイルKh22とみられ、超音速戦略爆撃機ツポレフ22M3から発射された。空母などへの攻撃用と想定され、地上の標的を狙うのには適していないが、通常の巡航ミサイルに比べて高速で飛来するため迎撃が難しいという。
「能力ない」
Kh22と同種のミサイルはこれまでに210発以上発射されたが、迎撃に成功した例はほぼない。空軍司令官は「ウクライナには現在、これらのミサイルを撃ち落とす能力はない」と認めた。
Kh22は数百メートルの誤差が出るなど命中精度は低いとされ、市街地への使用は多くの巻き添え被害を生む恐れがある。検察当局は「集合住宅の付近に軍事施設はない」と断言し、「明確な戦争犯罪」と非難した。
昨年6月に約20人が死亡した中部ポルタワ州クレメンチュクのショッピングセンターへの攻撃でも、Kh22の改良型が使われたとみられている。
2分以内
14日の攻撃では、首都キーウ(キエフ)も標的になった。米シンクタンク戦争研究所によると、ミサイルは北方のベラルーシに配備されたロシア製地対空ミサイルシステムの「S300」と「S400」から発射された可能性がある。ベラルーシから発射後、2分以内という短時間でキーウに着弾するため、現状では迎撃は不可能だという。
キーウでは今回、空襲警報が作動する前にミサイルが落ちた。空軍報道官は攻撃を防ぐには、ベラルーシの発射元を破壊するしかないと訴えた。
ウクライナは、米国が供与を決めた地対空ミサイルシステム「パトリオット」があれば、撃ち漏らしは防げると主張。ただパトリオット使用にはウクライナ兵に訓練を施す必要があり、配備には数カ月かかる。ドニプロの攻撃現場の近くに住む男性は米紙に「世界が私たちを見捨てないよう望む」と欧米の支援強化を訴えた。(キーウ共同)