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愛知県警の勾留男性死亡事件 留置の番人、機能不全 委員「抜き打ち検査、必要」

 愛知県警岡崎署で容疑者の男性(43)が勾留中に死亡した事件を受け「留置施設視察委員会」の在り方が問われている。留置施設の運営状況を監視する独立機関だが、警察側が視察を“お膳立て”するため、署員らの問題行為を見抜きにくいという課題が浮上。各地の視察委が機能不全に陥っている可能性があり、現役の委員からも抜き打ち検査の必要性を指摘する声が上がり始めている。

留置場で勾留中の男性が死亡した愛知県警岡崎署=2022年12月
留置場で勾留中の男性が死亡した愛知県警岡崎署=2022年12月
留置施設視察委員会の課題
留置施設視察委員会の課題
留置場で勾留中の男性が死亡した愛知県警岡崎署=2022年12月
留置施設視察委員会の課題


目玉
 視察委は監獄法に代わる刑事収容施設法の「目玉」として各都道府県警に設置され、愛知では2007年6月に発足。弁護士や医師、地域住民ら8人の男女で構成され、任期中は地方公務員として扱われる。氏名は公開していない。
 視察委の活動の中心は、各警察署の視察だ。留置場まで入って衛生状況を確認するほか、署員や被留置者とも面会。改善すべき点をまとめ、警察側に伝える。関係者によると、視察委の提案で(1)電動シェーバーの使い回しをやめ、それぞれに貸与(2)翻訳機を配備(3)性的少数者の被留置者に配慮するよう署員を指導―といった成果が実現した。

件数のみ
 しかし、警察官の問題行為に対する監視は十分とは言えない。
 関東地方の警察本部で視察委員を務める弁護士によると、2人一組で1年に数十署を訪問。署側と事前に日程を擦り合わせ、被留置者との面会も希望者を中心に1人に絞られる。岡崎署のようなケースは「これまで聞いたことがない」と語る。
 岡崎署員は統合失調症の男性に対し連続113時間以上にわたり手錠や捕縄を使用。弁護士は、こうした戒具について署から説明を受けたことはあるが、「件数の報告にとどまる」と明かす。不満を抱える被留置者は委員に手紙を送ることができるが、読み書きが苦手な容疑者も少なくなく「吸い上げられていない声がある。もっと踏み込んで把握に努めないといけない」と自戒を込めた。
 愛媛県警で21年まで4年間、視察委員を務めた田川靖紘・愛媛大准教授も「警察に緊張感を持ってもらうため、委員が戒具に関心を寄せているという姿勢を見せることが大事だ」と指摘。警察官に対する人権教育の徹底も訴えた。

リモート
 愛知県警では、新型コロナウイルス感染拡大の影響でここ2年はリモートでの視察が主流となり、被留置者との面会は1度も実現していない。
 第三者機関である視察委は岡崎署の事件に関する調査・捜査の対象外だが、県警幹部は「視察委の在り方を見直すことは、類似事件の再発防止に役立つかもしれない」と話している。

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