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無賃乗車 防止いたちごっこ 高インフレ一因、米国の都市部で急増

 米国の都市部の地下鉄などで無賃乗車が急増し、運行当局が防止に本腰を入れている。改札機のゲートを飛び越えにくいよう改良したり罰金額を引き上げたりと、あの手この手の対策を講じるが、不正は一部で繰り返され「特効薬はない」(当局職員)の声も。いたちごっこは続きそうだ。

米ニューヨーク地下鉄の主要駅、グランドセントラル42丁目駅の改札口=2022年12月(共同)
米ニューヨーク地下鉄の主要駅、グランドセントラル42丁目駅の改札口=2022年12月(共同)
米ニューヨーク中心部で路線バスに乗り込む利用者ら=2022年12月(共同)
米ニューヨーク中心部で路線バスに乗り込む利用者ら=2022年12月(共同)
米ワシントンの地下鉄の駅で改札機のゲートを飛び越える男性(右端)。改良型の改札機を「不正乗車への懸念に対応する」と紹介している(左)=9日(共同)
米ワシントンの地下鉄の駅で改札機のゲートを飛び越える男性(右端)。改良型の改札機を「不正乗車への懸念に対応する」と紹介している(左)=9日(共同)
米ニューヨーク地下鉄の主要駅、グランドセントラル42丁目駅の改札口=2022年12月(共同)
米ニューヨーク中心部で路線バスに乗り込む利用者ら=2022年12月(共同)
米ワシントンの地下鉄の駅で改札機のゲートを飛び越える男性(右端)。改良型の改札機を「不正乗車への懸念に対応する」と紹介している(左)=9日(共同)

 川崎重工業製の電車も走る首都ワシントンの地下鉄フォートトッテン駅。今月上旬に記者が訪れると、料金を払わずに改札機のゲートを飛び越えていく少年らの姿があった。改札機の上に手を置きにくいよう樹脂製の障害物を取り付けた効果も乏しく、「ピー」という警告音がむなしく響く。
 こうした不正が各地で目立つ。高インフレが特に低所得層の生活費を圧迫しているのが一因との見方もあり、ニューヨーク地下鉄の不正乗車の摘発件数(逮捕の場合を除く)は昨年7~9月期で1万1207件と前年同期より54%増えた。
 被害は大きい。ニューヨークの都市圏交通公社(MTA)は地下鉄と路線バスでの昨年の不正乗車による損失が5億ドル(約660億円)、ワシントン首都圏交通局は昨年6月までの1年間で4千万ドルと試算。ワシントン首都圏交通局はゲートを高さ約1・4メートルに大型化した改札機もフォートトッテン駅に用意した。
 ボストン都市圏の地下鉄などを運行するマサチューセッツ湾交通局(MBTA)は常習犯への厳罰化で臨む。無賃乗車が3回目までなら1回ごとに50ドル(約6600円)の罰金を科し、4回目からは100ドルに増やすことを昨年11月に決定。高齢者や学生向けの割引運賃を悪用した場合は3回目まで75ドル、4回目からは150ドルと定めた。
 問題は強制力が弱いことだ。MBTA職員は「警備関係者以外は取り締まる権限がなく、私たちは不正を見かけても口頭で注意するだけだ」と打ち明ける。新たな罰金制度も「ほとんど効果はないだろう」と嘆く。
 ニューヨークのMTAは、昨年12月時点で地下鉄14駅に計200人超の民間警備員を配置したと明らかにした。ジャノ・リーバー最高経営責任者(CEO)は「全ての人に歓迎される公共交通機関になるまで手を緩めない」と力説する。しかし地元在住者は「今も不正乗車を見かけるのは日常茶飯事だ」と懐疑的だ。
 路線バスでも運転手の目が届きにくい後部や中央部の扉からこっそり乗り込む無賃乗車が頻発している。米紙によると、MTAは降車時以外は後部や中央部の扉を閉めるように通達した。
 だが、運転手からは「ただでさえ定時安全運転で忙しく、不正乗車を気にする余裕はない」との不満が漏れ、徹底にはほど遠い様子だ。(ワシントン共同=大塚圭一郎)

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