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こども家庭庁4月発足 「異次元の少子化対策」視界不良 予算倍増、議論は置き去り

 子ども関連政策の司令塔となる「こども家庭庁」が4月に発足する。国の新たな省庁誕生は2021年9月のデジタル庁以来で、少子化や児童虐待、貧困など深刻化する課題に総合的に対応。厚生労働省と内閣府から関連部署を移管し、職員数も大幅に増やす。岸田文雄首相は年頭記者会見で「異次元の少子化対策」を掲げ、改めて子ども関連予算を倍増する考えを示した。しかし肝心の財源議論は置き去りで、視界不良の船出となる。

こども家庭庁のイメージ
こども家庭庁のイメージ

 22年の国内出生数は初めて80万人を割る見通し。少子化の急速な進行は経済活動や社会保障制度の維持に影響し、「静かな有事」と呼ばれる。政府はこども家庭庁を首相直属とし、対応を急ぐ。
 厚労省、内閣府の関連部署の職員約200人から約1・7倍となる350人体制(国立児童自立支援施設を含めると計430人)で発足。民間や自治体職員も登用する。
 「こども成育局」「こども支援局」の2部門を設け、保育行政や児童虐待防止、妊娠・出産支援、日常的に家族の世話や家事をする「ヤングケアラー」、子どもの貧困対策などを集約する。
 新たに取り組む政策もある。小学校入学前の0~5歳児のうち、保育所や幼稚園に通っていない子どもは「無園児」とも呼ばれるが、親子の孤立を防ぐ。ベビーシッターなどによる性被害が相次いだことを受け、加害者が子どもに関わる仕事に就けないように無犯罪証明書制度も検討する。
 一方、幼稚園や小中学校の教育分野は移管されず、文部科学省との縦割りは残ったままだ。
 こども家庭庁の23年度当初予算案は4兆8104億円で、厚労省と内閣府の関連部署の22年度予算と比べ、約1200億円の上積みにとどまった。小倉将信こども政策担当相は「倍増に向けた一里塚になる」と胸を張るが、増税慎重論を押し切る形で増税案を巡る論議が白熱し、過去最大に膨張した防衛費とは対照的に、子ども予算の議論は置き去りにされた。
 岸田首相は4日の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と強調。関係省庁による新たな会議を設け、3月末までに(1)児童手当の拡充など経済的支援(2)幼児教育・保育、産後ケアなど子育てサービスの拡充(3)育児休業制度の強化―などのたたき台を作る方針だ。
 6月策定の経済財政運営の指針「骨太方針」までに子ども予算倍増に向けた大枠を示す考えも表明したが、財源は明言しなかった。児童手当拡充などには数千億円以上が必要とみられる。企業からの拠出金、公的保険料への上乗せ、増税などが選択肢となりそうだが、いずれも負担増を伴い難航が予想される。

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