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来年度予算編成 最大予算、膨らむ債務 日銀依存、狭まる政策余地

 2023年度の当初予算案は岸田政権が決めた防衛費の大幅増額を反映させた結果、過去最大を大幅に更新する見通しとなった。累積債務が膨らみ続ける中、国債市場は大量購入を続ける日銀への依存を強めている。将来的に金利が上昇すれば国債の利払いが急増しかねず、政策運営の余地は狭まりつつある。

懸念される財政悪化の構図
懸念される財政悪化の構図


付け替え
 「一定の影響はあるかもしれない」。鈴木俊一財務相は、5年間で約43兆円の防衛費増額を決めた16日の臨時閣議後に、財政の健全性の目安となる基礎的財政収支(プライマリーバランス)を25年度に黒字化する政府目標にとって、重荷となる可能性をにじませた。
 23年度予算案が前年度当初比で6兆円以上も膨らむ見通しになったのは、防衛費増額の4財源の一つとして、国有ビルの売却収入や特別会計の剰余金などをかき集めた「防衛力強化資金」の4兆6千億円程度を一括して計上することが大きい。
 ただ経済官庁の幹部は、こうした財源の多くが他の用途からの「付け替えに過ぎない」と指摘する。例えば、強化資金に算入する「外国為替資金特別会計」の剰余金は、従来は7割を目安に一般会計に繰り入れて幅広い歳出の財源に充てられ、新規国債発行の抑制につながっていた。
 また一般会計の余りで防衛費に充当する「決算剰余金」も、これまでは半分を国債の返済に充て、残り半分を補正予算に使ってきた。こうした財源が防衛費に回ることで、今後編成される補正予算などが赤字国債に一段と依存する可能性が高まるとの見方だ。ある自民党幹部は、防衛費を大幅に増やしたことで「他のいろいろな政策でも今後、増額圧力がかかるのは必至だ」と指摘する。

緩み
 政府が発行した国債の流通市場では最近、指標となる10年債で取引が一日中成立しない「異常事態」が頻発している。金利上昇を抑え込もうと日銀が市場外で大量の国債を購入しているためで、国債の発行残高に占める日銀の保有割合は9月末時点で初めて5割を超えた。日銀が超低金利を維持することで政府は借金がしやすくなり、財政規律の緩みにつながっているとの指摘は多い。
 過度な円安による物価高など、大規模な金融緩和策の弊害が鮮明となる中で、岸田政権は現行政策のよりどころとなる政府と日銀の共同声明の改定検討に動き始めた。ただ政策修正が金利急騰を招けば国債の利払い費が膨張し、財政の悪化を招く可能性もあり、難しい判断を迫られる。

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