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防衛費と安保3文書 増税論議、政権内さや当て 「中国」表現に折衷案【表層深層】

 防衛費増額と安全保障関連3文書改定に向けた調整が大詰めを迎えている。財源捻出の増税先行に目を光らせる自民党保守派に対し、公明党や財務省は方向性を年内に示すべきだと主張。さや当てが続く。文書に書き込む中国の位置付けについても強硬論と外交重視派の綱引きがあり、政府内には折衷案が浮上する。

首相官邸を出る自民党の宮沢税調会長=7日午後
首相官邸を出る自民党の宮沢税調会長=7日午後
自民、公明両党の防衛力強化に関する幹部協議会を終え、記者団の取材に応じる自民党の萩生田政調会長(右)と公明党の高木政調会長=7日午後、国会
自民、公明両党の防衛力強化に関する幹部協議会を終え、記者団の取材に応じる自民党の萩生田政調会長(右)と公明党の高木政調会長=7日午後、国会
防衛力強化に向けた政権内のせめぎ合い
防衛力強化に向けた政権内のせめぎ合い
首相官邸を出る自民党の宮沢税調会長=7日午後
自民、公明両党の防衛力強化に関する幹部協議会を終え、記者団の取材に応じる自民党の萩生田政調会長(右)と公明党の高木政調会長=7日午後、国会
防衛力強化に向けた政権内のせめぎ合い


けん制
 「防衛費の財源について首相の指示があった。大変短期間になるが、来週議論していただく」
 7日午前、自民党本部。税制調査会会合で宮沢洋一会長は、いよいよ財源論議に入ると宣言した。夕方には岸田文雄首相と官邸で面会。終了後、記者団が内容を尋ねると「皆さんが報道しているような話です」とけむに巻いたが、増税が話題の中心だったと思われる。
 2023年度から5年間の防衛費総額を約43兆円とした首相の5日の指示を受け、焦点は財源に移った。22年度当初予算の防衛費は約5兆4千億円。これをベースに考えれば、単純計算で16兆円程度の追加支出となる。財源をどう確保するか、政権内で見解が割れる。
 自民の保守系議員は防衛費増額を強く求める一方で「歳出改革の努力が先だ」「当面は国債発行でいい」と主張する。萩生田光一政調会長は6日「全て税で賄うとか、来年から増税が始まるとの間違ったメッセージ」と指摘。財政規律重視派や財務省の「増税ありき」の姿勢をけん制した。
 警戒するのは「増税が前面に出れば防衛力強化の機運がしぼむ」(自民国防族)との展開だ。政権支持率が低迷する中で増税を決めれば世論の反発につながり、来春の統一地方選にも影響しかねないとも強調する。

優先順位
 こうした流れを懸念する向きもある。中でも公明は、国債発行は将来への負担先送りだとして、安定財源確保の必要性を訴える。山口那津男代表は6日「財源措置は年内に明確に示すべきだ」と先送り論にくぎを刺した。
 7日の自民、公明両党の幹部協議会では、歳出改革や決算剰余金などで補えない不足分を「税制措置」で対応すると確認した。つまり増税対応を挙げた上で、優先順位は前に行かないよう配慮した格好。自民幹部は早々に「しばらくは増税など必要ないということだ」と言い切った。

ニュアンス
 外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」で中国にどう触れるかでも意見は分かれる。
 自民保守派や国防族は中国の軍事行動を「脅威」と明記するよう要求。政府、外務省は「敵対的なニュアンスがあり、対話ムードに水を差す」と憂慮する。不満を募らせる国防族。小野寺五典安全保障調査会長は6日の党会合で「外務省の立場は関係ない。われわれが決めることだ」と語気を強めた。防衛力強化を進める上で「脅威の認識は外せない」(防衛相経験者)というわけだ。
 これに対し公明は「挑戦」との表現にとどめたい意向だ。公明や支持母体の創価学会は長年、中国と独自の関係を築いてきた。11月に日中首脳会談が実現し、山口氏も近く訪中を模索している。中国をできる限り刺激したくないとの意図があるのは間違いない。
 浮かんだのは間を取る案だ。国際秩序や同志国への「挑戦」と国家安保戦略に書き込み、別文書の国家防衛戦略には、中国による排他的経済水域(EEZ)への弾道ミサイル発射に対して「脅威と言わざるを得ない」と言及する―。保守系の自民中堅は「脅威の文言が入るなら、それでいい」と着地に期待した。

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