静岡の味、農家がネットで生配信 アプリで消費者と絆

 焼津市を拠点にライブ配信アプリを運営するマイスター社が、静岡県内農家を配信者に取り込み、需要を喚起している。インターネットの生中継で商品を売る「ライブコマース」の機能を活用。新型コロナウイルスの流行で「巣ごもり消費」が伸びる中、生産者と消費者をつなぐ新たな手法として注目を集める。

ネットの生中継でイチゴを紹介する藤田由香さん=2020年12月、牧之原市の藤田農園
ネットの生中継でイチゴを紹介する藤田由香さん=2020年12月、牧之原市の藤田農園

 「新鮮でとってもおいしいです」。2020年12月、牧之原市片浜のイチゴ農家「藤田農園」の作業場で、藤田由香さん(35)がスマートフォンに向かって話し掛けた。同社のアプリ「LIVE812(ライブハチイチニ)」で、イチゴの箱詰めの様子をほぼ毎日生中継している。
 藤田さんが、ライブ配信を行う「ライバー」になったのは同月から。これまで市場に出荷したり、オンラインギフトで百貨店に卸したりしていたが、コロナで売れ行きが不安になった。新たな販路を模索する中で、同社からライブコマース活用の提案を受けた。
 視聴者は商品が気に入れば、画面上の「商品一覧」のアイコンを押して購入する。収穫したその日のうちに発送する新鮮さや、藤田さんの明るい人柄が受け、全国の視聴者から連日注文が入る。藤田さんは「リスナー(視聴者)の質問にその場で答えられるので、味の魅力や栽培のこだわりを伝えやすい。消費者をすぐ近くに感じる」と手応えを語る。
 同社によると、同アプリのライバーは全国に約2千人。このうち農家は全体の5%に当たる約100人で、県内の配信者も多いという。広報部の山口明日実さん(32)は「配信内容について社内で厳正な審査があり、リスナーの信用につながっている」と話す。
 浜松市南区で白ネギなどを栽培する農家杉山連さん(29)も1月上旬から同アプリでライブコマースを始めた1人。「生産者の思いを直接伝えられるため、買う側も思い入れを持って購入してもらえるのでは。コロナの中で将来性を感じる販売方法」と指摘する。

 ■移住後押しも
 ライブ配信アプリ「LIVE812」を運営するマイスター社は焼津市栄町に本社を構え、2020年5月に事業を開始した。同社のスタジオを使用するライバー25人ほどが都市部から同市や静岡市に移住し、地域振興にも一役買っている。
 アイドルグループ「Sexy zone」に楽曲提供したこともある音楽家TAK(タク)さん(30)は昨年8月、家族3人で都内から静岡市に引っ越した。コロナ禍で仕事は自宅でもできるライブ配信中心になり、都内にいる理由が薄れた。「特にクリエイターの仕事は場所を選ばないことが多い。コロナをきっかけに地方への移住は加速するのではないか」と話す。

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