
静岡県の鈴木康友知事は7月7日、県議会の全員協議会で、JR東海が計画するリニア中央新幹線静岡工区について、着工を容認することを正式に表明しました。JR東海とのリニア中央新幹線工事にかかる自然環境保全協定を、7月18に締結するとしています。
【県議会全員協議会での鈴木知事の発言全文】
<鈴木康友知事>
議長からお許しをいただきましたので、リニア中央新幹線整備に関しての私の判断とその理由について、御説明いたします。
まず、私の判断でございますが、県自然環境保全条例に基づき、リニア中央新幹線工事に係る自然環境保全協定を、事業者であるJR東海と締結することといたします。
締結日は、7月18日とすることとし、本全員協議会終了後、国、JR東海、流域10市町及び静岡市、利水団体など関係の皆様にご連絡し、最終決定といたします。
続いて、判断の理由について申し上げます。
私は、かねてより、自然環境保全協定の締結可否の判断に当たり、「県民への説明状況」と「工事に必要な法令上の手続状況」とを総合的に勘案する、と申し上げてまいりました。
まず、1点目の「県民への説明状況」の点でございますが、5月26日から6月22日にかけて22回開催された、JR東海による説明会の状況について、7月1日にJR東海の丹羽社長から報告を受けるとともに、説明会に同席した県職員からも説明を受けてまいりました。
これらによると、これまでの説明会の参加者を大きく超える1,137人にご参加いただき、そのうち多くの人が、初めて来場された方々であったとのことであります。
参加者からは、「水資源、トンネル発生土及び生物多様性に関する自然環境保全措置について、十分な対応である」、また、「不安はあるものの、これだけの対応をしてくれることがわかった」との評価、「専門的な内容をわかりやすく説明してくれた」との評価、「水資源に関する補償確認書を文書として残したのは意味があり、国の関与を引き出せて良かった」との評価、「県職員も同席し説明の機会を重ねたことで、JR東海と静岡県との連携が確認でき、安心感が醸成された」との評価、などが示されております。
ご理解に至らない方々も一部いらっしゃったとのことではあるものの、全体として、地域住民の皆様の理解は進んだものと認識いたしました。
次に、流域10市町、利水団体等、関係の皆様へのご説明ですが、県専門部会における対話完了を受け、4月から5月にかけて、JR東海が今後実施する自然環境保全措置等について、大井川利水関係協議会及び関係市町長等連絡会議において、流域10市町の首長及び静岡市長に報告し、了承をいただきました。
その上で、県中央新幹線環境保全連絡会議、県環境影響評価審査会など、リニア中央新幹線工事に関わる会議体においても説明を行うなど、必要な手続を踏んでまいりました。
加えて、県環境影響評価条例に基づく事後調査報告書に関し、条例に基づく意見募集を実施し、静岡市長、県環境影響評価審査会委員のほか、県民の皆様からの意見を確認したところ、おおむね問題ないとの反応をいただいております。
私としては、説明会の開催状況、環境影響評価手続における説明状況などを総体的に勘案すれば、地域住民をはじめとする静岡県民、流域10市町、関係団体の皆様などの理解は着実に進み、協定を締結できる段階に来たと判断いたしました。
「法令上の手続状況」について
次に、2点目の「法令上の手続状況」であります。
自然環境保全協定の締結の根拠となる県自然環境保全条例等においては、関連法令に照らして許可等が必要な場合は、「許可等が確実に見込まれる」ことが必要とされています。
そして、「確実な見込み」とは、関係法令の許可等の事前協議を終え、許可等の申請がなされている状態になったものとして、県は、これまで運用してまいりました。
今回の場合、河川法、盛土規制法などが関係法令に該当しますが、それぞれ所管行政庁である県及び静岡市と、JR東海との事務的な調整が進められてまいりました。
そしてこの度、事務的な協議が整い、7月3日付けで河川法及び盛土規制法等に関する申請等が、それぞれの所管行政庁に提出されたところであります。
これにより、県としては、許可等の「確実な見込み」が得られたと判断し、自然環境保全協定の締結に向けて必要となる法令上の手続は整ったと判断いたしました。
もちろん、リニア中央新幹線の整備に当たり、自然環境や大井川の水資源への影響などについて、依然として不安や懸念を抱かれている方はいらっしゃいます。
こうした点に、静岡県として徹底的にお応えしていく必要があり、そのためには、工事中及び工事完了後も見据えた継続的かつ永続的なモニタリング体制を構築いたします。
具体的には、県環境影響評価審査会に新たな部会を設け、県、国、地域及びJR東海とが緊密に連携した体制により、JR東海による自然環境保全措置の実施を徹底的に監視いたします。
その上で、「不測の事態が生じた場合には、必要に応じて工事を一旦止め、原因の確認や対応を検討する」ことを協定に明記することで、自然環境の保全と水資源の安全・安心の確保に確実に取り組んでまいります。
また、地域振興に係る基本姿勢をまとめた、県とJR東海との間の文書の締結について、JR東海から提案がございました。
私は、中央新幹線の開業を見据え、東海道新幹線の活用等により静岡県内の産業・観光の活性化が期待できるとの立場から、知事就任時からJR東海に対し、連携の深化を求めてまいりました。その過程において、リニア中央新幹線名古屋開業時のひかりの増便についてもお約束頂いたところであります。
今後も、東海道新幹線のさらなる活用等による地域活性化に向けてJR東海と連携・協力して取り組んでいくことは非常に重要であり、文書化することは有意義と考えますので、文書についても併せて締結してまいります。
加えて、流域10市町及びJR東海との間で、JR東海による自然環境保全措置とモニタリングの着実な履行、継続的な情報共有と対話、そして、流域の経済発展や地域振興に資する取組を連携して推進することを明記した確認書を取り交わす予定と伺っております。
この確認書についても、流域10市町及びJR東海からの求めに応じ、県としても立会うこととし、引き続き、流域における地域振興についても取り組んでまいります。
リニア中央新幹線整備に関するこれまでの道のりについて
さて、今回の判断に当たり、リニア中央新幹線整備に関するこれまでの道のりについて、触れさせていただきます。
申し上げるまでもなく、リニア中央新幹線は、世界でも有数の人口集積地域である三大都市圏を新たに結び、巨大経済圏であるスーパーメガリージョンを形成するものであり、我が国の新たな国土の大動脈として、経済社会の成長を支える「国家的プロジェクト」であります。
静岡県としても、リニア中央新幹線建設を契機とした高速交通の将来像に大いに期待すると同時に、新幹線ネットワークのあり方が大きく変わり、東海道新幹線は、ひかり・こだま重視の輸送形態となることが想定されるなど、経済波及効果についても大いに期待できると考えています。
一方で、国に認可された計画では、静岡県内に駅は設置されないこととなり、また、貴重な自然の宝庫である南アルプスの直下を通り、大井川の水資源への影響が懸念されるなど、静岡県ならではの地域事情が発生いたしました。
こうした大井川流域や南アルプス地域をはじめとする静岡県の地域事情及びリスクへの不安や懸念に対し、当時のJR東海の初期対応は十分なものとは言えず、県、関係市町、利水者との間の意識のずれは決定的なものとなりました。
このことは、リニア中央新幹線に関する環境影響評価手続に係る県知事意見に集約されており、国土交通大臣に対する環境大臣意見にも「環境保全について十全の取組を行うことが、本事業の前提である」と述べられ、JR東海との間で、徹底的な自然環境保全措置を具体化することが必要不可欠となりました。
こうした状況の中、県は、大井川流域市町の意見を踏まえ、県中央新幹線環境保全連絡会議に「専門部会」を設置し、JR東海による具体的な自然環境保全措置を、科学的・工学的見地から専門的に検討する体制を整えました。
国にも参加していただいた2つの県専門部会は、本年3月の対話完了を迎えるまで延べ44回開催され、また、令和5年12月以降、JR東海と300回を超える実務レベルでの対話を積み重ねるなど、今日に至るまで、丁寧な議論を積み重ねてまいりました。
こうした徹底的な対話を踏まえ、田代ダム案による、トンネル湧水の全量戻し、オンサイト処理の実施による、要対策土の可能な限りの無害化・減量化、二重遮水シートとベントナイトシートを併用した徹底的な封じ込め、ネイチャーポジティブという新たな概念を盛り込んだ生物多様性の保全の取組など、静岡県の地域事情を踏まえ、他工区と比較しても踏み込んだ対策をJR東海が行う自然環境保全措置として盛り込むことができました。
工事着工後も、自然環境保全協定に盛り込む水質等に関する詳細な基準が満たされているかを定期的なモニタリングを通して管理するとともに、異常事象が発生した場合には躊躇なく工事を中断し、専門的な知見を踏まえた対応を行うことも合意することができました。
今後、工事が進む過程において、追加的なコアボーリングの実施などにより、さらなる環境保全措置が必要となった場合にも、環境影響評価審査会に設ける新たな部会等において、専門的な知見を踏まえた対策を検討してまいります。
様々な状況が進展する中で、本県の水資源及び生物多様性に対する影響が生じうるあらゆるケースを想定し、現時点において最善を尽くした検討を行うことができたことは、専門的な知見に基づき、国にも関わっていただきながら、十分な時間をかけて進めてきたJR東海との対話の成果であったと評価しております。
結びに当たり、ご協力、ご尽力いただいた全ての関係者の皆様に、改めて、感謝申し上げます。
流域10市町、静岡市及び利水団体の皆様とは、大井川水系の水資源の確保や水質の保全等の環境保全措置等について、県と一体となって、不安の払拭に向けた 検討に臨んでいただきました。
国土交通省におかれましては、有識者会議で本県とJR東海との対話に関しての論点を整理していただくとともに、今年1月には事務次官に立ち会っていただき、万が一の場合に備えて、水利用に影響が生じた場合の対応として、他に例のない内容を盛り込んだ補償確認書を締結することができました。
JR東海には、我々県との対話において、様々な経緯はありつつも、最終的には真摯かつ思い切った対応をしていただいたことで、本日を迎えることができたと考えております。
そして、県議会 の皆様におかれては、これまで、長きに亘り、リニア工事に係る諸問題について熱心にご議論いただき、この判断に至ったものであります。
誠にありがとうございました。
まさに「これからが本番」であります。
JR東海に対しては、将来にわたり、「リニア中央新幹線整備」と「大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全」の両立を遺漏なく実施していくよう、そして、県及び流域10市町等への正確な情報提供、住民の皆様への丁寧な説明等を行うよう引き続きしっかりと求めてまいります。
結びにあたり、引き続き、県議会議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、説明を終わります。













































































