
秋葉監督は試合後、「最後までファイトし続ける、最後の最後までゴールを狙い続ける、体を張り続ける。いや、変わったなと思いましたから、素晴らしいです」と振り返った。就任から約1カ月、沖縄や御前崎でのキャンプを通して繰り返し求めてきたのは、ゴールへ向かうこと、ボールを奪いに行くこと、そして最後まで走り抜くことだったが、秋田戦ではその土台が確かにピッチ上に表れていた。
秋田は開始直後に失点しても、自分たちのスタイルを変えなかった。前線へロングボールを送り、球際とセカンドボールの争いに持ち込み、ボールを奪えば一気にゴールへ向かう。昨季の磐田が苦しめられたパワフルなサッカーを、この日も徹底してきたが、磐田もそこで逃げることなく、空中戦に競り合い、セカンドボールへ出ていき、身体をぶつけながら相手の圧力を受け止めた。
前半途中には中盤でアクシデントもあり、金子大毅に代わって井上潮音が急きょ投入される難しい展開となったが、チーム全体の強度は大きく落ちなかった。百年構想リーグをJ2・J3の32位、J1まで含めれば52位で終えたチームが、短期間でまず「戦える集団」へ変わり始めたことはポジティブに捉えていいし、秋葉監督も「僕が来て、1カ月ちょっとでこれだけのものを見せてくれた」と選手たちを評価している。
ただし、キャプテンの藤原健介が語ったように、「52位だったので、変わらないとおかしい」。磐田が目指しているのは昨季からの改善ではなく、J1昇格、さらにJ2優勝であり、そう考えれば秋田戦で示した「戦える」というベースの上に、何を積み上げるかが重要になる。

その一つが、ボールを持ったときのクオリティだ。秋田のロングボールに競り勝ち、セカンドボールを拾っても、磐田もすぐに前へ蹴り返してしまう場面が少なくなく、結果として再び競り合いになり、試合は秋田が得意とする展開へ戻っていった。秋葉監督も「本来であればもっと技術やアイディア、判断を発揮できる中で、相手の戦い方におつき合いして、全体的に視野が狭くなってしまった」と認め、ハーフタイムには「もっと広げられる、落ち着いて周りを見てごらん」と伝えている。
つまり、秋葉監督が目指しているのは単純に前へ蹴り続けるサッカーではなく、戦うべきところでは徹底的に戦いながら、マイボールになった瞬間にはピッチを広く使い、技術と判断で相手の圧力を外していくサッカーだ。そこで初めて、自分たちがゲームのテンポを決められる。藤原も「セカンドボールを拾った時に、もうちょいサイドに散らせれば、自分たちのボールになる時間を増やせた」と振り返り、「そこを上回るぐらいのクオリティ」を課題に挙げていた。
J2優勝を狙うのであれば、ここは大きなポイントになる。秋田だけではなく、いわきFCをはじめ、ロングボールやハイプレス、球際の強度を前面に出してくる相手とのゲームは必ずある。そうした相手と同じだけ走り、同じだけ戦うのは最低条件で、その上でボールを動かして相手を走らせ、試合のテンポそのものをコントロールできるかどうかが、長いシーズンを安定して勝ち抜くための鍵になる。
90分間すべてを高強度のトランジションゲームにする必要はない。攻めるべきところでは一気に人数を掛ける一方、相手の勢いが増した時間帯にはボールを握り、ピッチを広く使ってゲームを落ち着かせる。どこで速く攻め、どこでいったんテンポを落とすのか、その使い分けができるようになれば、秋田のような相手に対しても自分たちの土俵へゲームを引き込める。

もう一つ、今季の磐田が持つ大きな可能性が選手層と競争力だ。秋田戦ではユーリ・ララ、ダニーロ、イアゴ・テレス、太田、佐藤大樹、牲川歩見と6人の新戦力が先発し、後半から特別指定選手の小池直矢、さらに乾貴士やジョアン・ヴィクトルらもピッチに立った。小池は右サイドでアグレッシブな仕掛けを繰り返し、川合徳孟らとのコンビネーションでも攻撃を活性化。失点につながるロストという課題は残ったものの、一人で相手をはがして局面を前へ進められる推進力は、長いシーズンで大きな武器になり得る。
ただ、秋葉監督がこの試合について「この20人がベスト」と言い切ったからといって、開幕戦のメンバーがそのまま固定された序列になるわけではない。そもそも秋葉監督自身、開幕戦のメンバー選考について、対戦相手が秋田であることも含めて最後まで悩み抜いていた。それだけ現在の磐田には多くの選択肢がある。
今回ベンチ外となった選手にも、既存戦力ではFWマテウス・ペイショットやMF上原力也、佐藤凌我がおり、新戦力にもボールを持って個で違いを作れる小原基樹や野澤零温が控える。さらにキャンプで出遅れた渡邉りょうも徐々に状態を上げており、秋葉監督にとっては誰を先発させ、誰を試合途中から送り込むのかという嬉しい悩みが続くことになる。
秋田戦で選ばれた20人は、その時点、その相手に対するベストだった。しかし長いシーズンを考えれば、「ベスト20」は毎週変わっていい。むしろ競争が激しく、前節にベンチ外だった選手が次節にはスタメンへ食い込むような状態を維持できることが、J2優勝を目指す磐田にとって大きな強みになる。

次節は国立で横浜FCと対戦する。秋田とは相手の特徴もゲーム展開も異なるだけに、誰がスタートのピッチに立ち、誰が終盤の勝負どころを任されるのかは分からない。開幕戦で結果を残した選手も決して安泰ではなく、ベンチ外だった選手にもすぐチャンスがある。その緊張感をシーズンを通して保てるかどうかも、豊富な戦力を本当の「選手層」に変えるためのポイントになるだろう。
一方で、最後はやはりゴールだ。秋葉監督は「1点では何が起こるか分からないのがサッカーですし、3点、4点、5点ともっと何点も取れるようにならなければいけない」と語った。秋田戦でも追加点を奪えるチャンスはあり、藤原は後半開始直後にシュートを放ち、アディショナルタイムには牲川のロングフィードから最終ラインの背後へ飛び出した。本人も「決めないといけない場面が2点あった」と振り返り、キャプテンとして「ああいったシーンを決めないといけない」と責任を背負っている。
太田も開始直後のゴールだけでなく、前線で起点となる仕事にはさらなる向上の余地があり、小池や川合、乾らを含め、個々のクオリティをどう組み合わせてチームとして複数得点につなげるのかも、J2優勝への重要なテーマになる。そして前述したペイショット、佐藤凌我、渡邉りょうらも含めれば、前線の組み合わせにはまだ多くの可能性が残されている。
それでも、開幕戦で最も重要な土台は見えた。昨季シーズンダブルを許した秋田の強度に対して逃げず、最後まで戦い、秋葉監督が「変わった」と評価できるだけの姿勢を示した。ただし、藤原が言うように「もっと変わらないといけない」。
球際で戦い、走り切り、身体を張ることをスタートラインにして、ボールを奪ったあとの技術と判断を高め、ピッチを広く使いながら自分たちで試合のテンポをコントロールし、最後はチャンスを確実に仕留める。そして毎週の激しい競争から、その相手、その試合に最も適したメンバーを送り込んでいく。
戦えるチームから、戦った上でゲームを支配できるチームへ。その過程で豊富な戦力を本当の競争力へ変えられるか。秋田との1-1は、秋葉ジュビロが確かに変わり始めたことと、J1昇格、さらにJ2優勝へ向けてその先に何を積み上げるべきなのかを、同時に示した開幕戦だった。









































































