小川航基 悔しさの先に見えた「個」の成長
初めて経験したW杯は、小川航基にとって「言葉で表せない」特別な舞台となった。しかし、その記憶を包んでいるのは達成感ではなく、強烈な悔しさだ。一夜明けると「昨日よりガックリ来ている」と語り、「ブラジルに勝って、その先まで見据えていた。こんなところで終わるチームじゃなかった」と敗戦を受け止めた。ベルギー、クロアチア、そしてブラジルと、日本は3大会連続で強豪相手に先制しながら勝ち切れなかった。「戦い方は間違っていなかった。前半はパーフェクトゲームだった」と振り返る一方で、勝ち切るために「最後は個々の能力を上げるしかない」と結論づけた。チーム戦術云々より、一人ひとりが世界基準へ近づくことこそ壁を越える条件だと痛感したようだ。
自身は限られた出場時間ながら、「ああいう舞台で何かを残せる人間なんだという自信はついた」と前向きな手応えも口にした。さらに長友佑都と過ごした時間について「一段階、二段階、三段階とサッカー選手、人間として成長できた」と語り、その勝利への執念に大きな影響を受けたことも明かした。
「4年後はもっと人が変わったように成長した姿で戻らないと、この結果は変えられない」。オランダ戦で同点ゴールにも等しい仕事をやってのけたが、夢であるW杯での得点に届かなかった。小川に世界との差と、自ら進むべき道をはっきり示した大会となった。
伊藤洋輝 世界基準の日常が日本を強くする
4試合フル出場で戦い終えた2度目のW杯。伊藤洋輝は、悔しさの中にも前向きな視線を失わなかった。まず口にしたのは、「怪我が多かった4年間で、もう一度ワールドカップに戻って来られたことが本当にうれしかった」という感謝だった。ブラジル戦では2失点目の直後、倒れ込んだ田中碧を真っ先に立ち上がらせた姿が印象的だった。「時間はなかったけど、まだチャンスはあると思っていた。何か奇跡が起こればと、無意識に動いていた」と振り返る。その行動はビッグクラブで培った経験以上に、「最後まで諦めたくなかった」という純粋な思いから生まれたものだった。
伊藤が強調したのは、世界との差は日常にあるということだ。シュツットガルトで飛躍し、バイエルンへ移籍したことで「日々のレベルが変わり、無意識の中で成長できた」と語る。だからこそ、「それぞれが高いレベルのクラブで力を付け、それが代表の組織力につながれば、日本はもっと強くなる」と、個々の成長こそが代表強化の近道だと考えている。
ブラジル戦でも「まずは1対1で負けないことが重要」と世界基準を口にした伊藤。クラブでの日常をさらに引き上げ、その経験を代表へ持ち帰ることこそ、日本が次の壁を破るための鍵になると確信していた。
鈴木唯人 代表を背負う重みが変えた価値観
鈴木唯人にとって初めてのW杯は「日本を背負う重み」を実感した大会だった。「日本という国を背負って戦う幸せを感じた。不安の方が大きかった」と率直な胸の内を明かす。左鎖骨の負傷を克服して臨んだが、結果的にチュニジア戦の途中出場のみにとどまり、出場機会は限られた。「ベンチに座っているだけという経験は久しぶりだった」と悔しさも味わった。それでも鈴木は「出ている選手には出ている選手の苦しさがある。自分だけが悔しいわけではない」と冷静に受け止め、「違った悔しさを得られたことは良かった」と前を向いた。
ブラジル戦を通じて最も感じたのは、世界トップとの差だった。「ドイツでプレーしているだけではまだ足りない。もっと厳しい日常が必要」と語り、チャンピオンズリーグ級の環境で日々戦うことの重要性を痛感した。「(伊藤)洋輝君やトミ君(冨安健洋)のように、普段からそういう舞台で戦っていること以上の成長方法はない」と世界基準を見据える。
4年後についても、「いきなり大きな目標だけを見るのではなく、一年一年積み重ねたい」と現実的な姿勢を崩さない。「個人として圧倒的な成長を遂げることが一番大事」。代表を背負った責任と世界との差を知った経験は、鈴木のサッカー人生をさらに加速させる原動力になりそうだ。
後藤啓介 悔しさを2030年への力に変える
後藤啓介はW杯で、思ったような出場機会を得られなかった。それでも、この経験を誰よりも前向きに未来へ結び付けようとしている。「何もできなかった悔しさと、全員が目標にしていた優勝を達成できなかった悔しさ」。その言葉に全てが凝縮されていた。世界との差について問われると、「足りないものは全部」と即答した。しかし、それを悲観することはない。「足りないものが多いということは、伸びしろがあるということ」と捉え、成長への意欲を示した。
一方で、後藤が見据えているのは4年後だけではない。まずは2028年のロサンゼルス五輪だ。「この経験をしたのはロス世代では(塩貝健人と)自分の2人だけ。この経験を絶対につなげなければいけない」と語り、五輪世代を引っ張る覚悟を口にした。「そこで歴史を変え、その流れを2030年のW杯につなげたい」というビジョンは明確だ。
ベルギーで評価を高めて、5大リーグにステップアップを果たした後藤。短いオフが開ければ、ブンデスリーガで世界トップクラスの選手たちと競い合う日々が始まる。「日本が優勝するには、5大リーグ得点王やチャンピオンズリーグ決勝で戦う選手が出てこないといけない」。自身がその第一歩になることを目標に掲げた。
ベンチから仲間を支え続けた献身性も含め、後藤が得た最大の財産は、世界一を目指す集団の基準だった。その悔しさは、すでに次の挑戦へのエネルギーへと変わり始めている。









































































