【W杯 ラウンド32】いきなりブラジルとの大一番へ。日本代表の“静岡県勢”が握る、決勝トーナメント躍進の鍵

サッカージャーナリスト河治良幸

グループステージを2勝1分けの無敗で突破した日本代表に、いよいよ本当の戦いが待っている。ラウンド32では優勝候補のブラジルと激突。ここからは一つ負ければ終わりのノックアウトステージだ。

オランダと2-2で引き分け、チュニジアに4-0で快勝し、スウェーデンとも勝ち点を積み重ねた3試合を通して、日本は守備の安定感と選手層の厚さを示してきた。一方で、ブラジルは個の能力で世界最高峰と言われる相手。その差を埋めるためには、日本らしい組織力と献身性、そして限られたチャンスを仕留める勝負強さが欠かせない。

静岡ゆかりの4人、元磐田ユースの伊藤洋輝(バイエルン)と後藤啓介(フライブルク)、磐田でプロ入りした小川航基(NECナイメヘン)、清水エスパルス出身の鈴木唯人(フライブルク)もそれぞれの立ち位置でチームに貢献し、日本代表の躍進のため、さらなる活躍を狙っている。

ここまで最も存在感を示しているのが3バック左で全3試合フル出場を続ける伊藤洋輝である。森保一監督からの信頼について問われても「ピッチに立てるので、全力でプレーするだけです」と語る。与えられた役割を全うすることだけに集中する姿勢は実に伊藤らしい。

試合間隔の短い今大会では、チーム練習後も斉藤俊秀コーチと戦術確認を行うなど、選手やスタッフと積極的にコミュニケーションを取る。バイエルンで過密日程を戦い抜いてきた経験も生きている。「しっかり寝て、しっかりご飯を食べて、できるトリートメントを受ける」と伊藤。世界最高峰で身につけた日常の積み重ねが、この短期決戦でも安定したパフォーマンスにつながっている。

ブラジルの個人能力に関しては伊藤自身も「一発でやられないように気をつけます」と警戒を強める。一方で、日本は基本的に右から組み立て、左から仕留める攻撃が機能しており、左からビルドアップにアクセントを加えたり、時に積極的な攻め上がりを見せる伊藤は「みんなが自信を持って配給できていると思うので、継続してやっていきたい」と語る。守るだけでなく、伊藤の左足はブラジル攻略の重要な武器になる。

途中出場ながら強烈な存在感を放っているのがFWの小川航基だ。オランダ戦では同点ゴールにつながるプレーを見せ、スウェーデン戦でも流れを変えたストライカーは、ブラジル戦のポイントを極めて明確に語る。

「鍵になるのはゼロの時間を長くすること。失点をしないということが一番だと思います」ブラジル相手に主導権を握る時間は長くない。それでも少ないチャンスは必ず訪れると小川は「チャンスは少なからず来るイメージはしています。そのチャンスを決め切ることが大事」と語り、その一撃を決めるイメージもできている様子だ。

「この瞬間を待っています。一番得点が欲しい試合と言っても過言ではない。僕のゴールは本当に価値があるものになる」と小川。オランダ戦は2-2に追い付く大仕事。結果こそ頭の上部に触れた鎌田大地の得点になったが、ここからチャンスはあると前を向いていた。その試合がブラジル戦になれば、真のヒーローになれる。

ここまで途中出場にとどまっている後藤と鈴木も、この先はさらに重要な存在になる。大会直前に21歳の誕生日を迎えた後藤はチュニジア戦でW杯デビューを果たした。ただ、時間帯とスコアもあり、守備の貢献が目立つ試合でもあった。日の丸を背負う一人として、ある種のエゴを捨ててチームの勝利に貢献しようと奮闘する後藤。強く記憶しているのが、カタールW杯のクロアチア戦で前田大然が決めた得点だ。チームのために戦っていれば、必ずそうしたチャンスが来るということで、そのエピソードを胸に刻んでいる。

右鎖骨の骨折からW杯に間に合わせた鈴木も、チュニジア戦では持ち前の推進力を披露した。狭い局面でも前を向けるドリブル、シュートへの積極性、複数ポジションをこなせる柔軟性は、一発勝負では大きな価値を持つ。延長戦も視野に入るノックアウトステージでは、途中投入の選手が勝敗を決めるケースは珍しくない。森保監督がここまで積極的な選手起用を行ってきたのも、この総力戦を見据えての準備と言える。

ブラジル戦を突破しないことには先に進めないが、日本サッカーにとって新たな歴史への挑戦である。ここまで伊藤はディフェンスラインの主力として、小川はジョーカーとして流れを変えてきた。彼らの働きはもちろん期待されるが、後藤と鈴木がどういう形で起用されて、新たなW杯のヒーローになるチャンスを掴むのか。
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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