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暮らしの中の放射線

牧野 克彦
岡田 往子

「放射線」という言葉に、どんなイメージをお持ちですか?

実は放射線は私たちの身の回りに常にあって、暮らしの中にも使われているものなんです。
放射線について正しい知識を身につけて、ご自身で考え判断する材料にしていただければと思います。

詳しいお話を、東京都市大学原子力研究所 客員准教授の岡田往子さんに教えていただきます。

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  • #01 2021年10月27日放送 第1回 「放射線」ってどんなもの?
    牧野

    3回シリーズで、「暮らしの中の放射線」というテーマで、放射線について学んでいきます。

    みなさんは「放射線」というと、何を想像しますか? 放射線は、実は私たちの身のまわりに常にあって、暮らしの中にも使われているものなんです。放射線について正しい知識を身につけて、ご自身で考え判断する材料にしていただければと思います。東京都市大学原子力研究所 客員准教授 岡田往子(おかだゆきこ)さんに伺います。

    岡田さんは東京都市大学原子力研究所では どんな研究をされているのですか?

    岡田

    放射線を使って、物に含まれている微量な物質を分析しています。例えば、パソコンでデータを記憶する部分はとても高純度なケイ素という物質でできていますが、その中には極々微量に不純物が入っています。その不純物を放射線を使って分析したりしていました。現在は、湖や沼の底につもったものに含まれている微量な物質や、放射性物質 を分析しています。

    牧野

    岡田さんは放射線について正しい知識を持ってほしいという思いで、セミナーなどの活動もされていると伺っていますが、何かきっかけがあったのでしょうか?

    岡田

    私自身はもともと生物分野の出身なのですが、大学に入ってみると、物理の知識を結構使うんです。そんな経験から、子供たちには早いうちから物理の知識、例えば光、音、波、電気、力などについて、楽しく学んでほしいと思いました。放射線は物理を学ぶと、分かってくることが多いんです。子育てをしているときに、子供たちには放射線を通して物理の楽しさを知ってもらいたいと思ったのがきっかけですね。

    牧野

    なるほど、ありがとうございます!

    それでは「放射線」について教えていただこうと思います。「放射線」という言葉は聞いたことがある方が多いと思いますが、改めて「放射線」とはどういうものなのでしょうか。

    岡田

    まずは、この世界のあらゆる物質(石とか木とか水とか)が何でできているのか……ずっと細かくしていくと、たどり着くのが元素という小さな単位です。牧野さんも、元素周期表の順番を覚えた記憶はおありですか?「スイヘーリーベボクのふね……」どうでしょう?

    牧野

    30年ぶりくらいに聞きました! でも今でも覚えていますよ。

    岡田

    水素からはじまってウランまで地球上にはおよそ90くらいの元素があります。それらの元素の中に不安定な元素の仲間がいるんです。不安定な状態の元素が安定な状態になるために出すのが放射線です。

    牧野

    えっ!そうなんですか?元素から出てくるのですね。

    岡田

    はい、不安定な元素が安定な状態になろうとする時に、出てくるのが放射線なんです。

    お風呂で例えると、熱いお湯がまわりの温度に近づこうと湯気を出して冷めていきますよね。熱いお湯を不安定な元素と考えると、お湯が湯気を出して冷めていくように、不安定な元素は放射線を出して、安定な状態になろうとするんです。

    牧野

    なるほど、そういう性質を持った元素があるんですね。

    岡田

    地球上には不安定な元素が10個以上あるんですよ。宇宙が誕生し元素ができあがった時から、少しずついろいろな元素が放射線を出して安定な状態になっていきました。そういった元素が集まって地球ができているので、地球にも放射線を出す元素があるのです。

    牧野さん、実際に放射線をご覧になったことはありますか?

    牧野

    放射線は、目には見えないですよね。先日、「霧箱」という装置で放射線の通った跡を見ました。シューッと2、3センチほどなんですけど、ヒコーキ雲のように走っていくのが見えました。

    岡田

    アルコールの気体をいっぱいにした「霧箱」という装置でご覧になったんですね! 白い線がシューッと飛ぶように見えるんですよね。

    牧野

    そうなんです。放射線が飛んだ跡が、白い線として見えました。

    岡田

    スタジオ内の空気中にも放射線があります。これは、空気中のラドンという物質が放射線を出しているんですよ。私たちはいつも自然界からの放射線を受けているんです。

    牧野

    「ラドン温泉」、私も行ったことがあります。放射線って常に私たちの身のまわりにあるんですね。次回は、空気中以外の放射線のお話を伺います。

    岡田さん、ありがとうございました。

  • #02 2021年11月3日放送 第2回 放射線と食べ物
    牧野

    「暮らしの中の放射線」、今回は2回目、空気中以外の放射線についてです。東京都市大学原子力研究所 客員准教授 岡田往子(おかだゆきこ)さんに伺います。

    岡田さんは、東京都市大学原子力研究所で湖や沼の底につもったものに含まれている微量な物質や、放射性物質の分析をされています。また、放射線について正しい知識を持ってほしいという思いから、セミナーで放射線についてお話しする活動もされています。

    前回は、私たちの身のまわりにも放射線があるということを教えていただきました。空気中以外からも放射線を受けているのですか?

    岡田

    そうなんです。私たちは空気から、大地から、宇宙から、そして食べ物からと、毎日の暮らしの中で自然界の様々なところから放射線を受けているんですよ。

    牧野

    私たちは自然界から放射線を受けているんですね。

    岡田

    そうなんです。日本では1年間に平均で『2.1mSv』の放射線を自然界から受けて生活しています。

    Sv(シーベルト)とは、私たち人間が放射線を受けたとき、身体にどのくらいの影響が出るのかを表す単位になります。mSv(ミリシーベルト)はSvの1/1000。2.1mSvという放射線量では健康への影響を心配する必要はないレベルです。

    それではここで、私からクイズです!平均2.1mSvの自然界からの放射線は「宇宙から」「大地から」「空気から」「食べ物から」受けているのですが、この4つのうち、日本ではどこから一番放射線を多く受けているのでしょうか?

    牧野

    放射線は空気の中にもあるということですから、自分の体が一番長く触れている「空気から」ではないでしょうか!?

    岡田

    残念、正解は食べ物です!日本では「食べ物から」が一番多いんですよ。食べ物からは0.99mSvの放射線を受けています。さきほどお話したように1年間で平均2.1mSvの放射線を自然界から受けているので、その半分くらいが食べ物からということになりますね。

    牧野

    これを聞いて不安になった方もいらっしゃると思いますが、食べ物にはどのような放射線が含まれているのですか?

    岡田

    食べ物のなかで放射線を出すもののトップに挙げられるのはカリウムです。このカリウム、すべての食品に含まれています。カリウムというと、どこかで聞いたことがあると思うのですがどうですか?

    牧野

    栄養素のカリウムでしょうか?家庭科で習った気がします。

    岡田

    カリウムは植物にも動物にも私たちにも必要な栄養素です。このカリウムという元素には3種類の仲間がいて、その中のカリウム40が放射線を出します。私たちも植物も動物も、カリウム40だけを排除して、栄養素にすることができないのです。そのため、すべてのカリウムを栄養素として体内に取り入れ、使い、排出、これを繰り返し、体の中でほぼ一定の割合に保たれているのです。

    牧野

    2011年の福島第一原子力発電所の事故以来、食品に関する放射性物質への関心が高まっていますが、日本の食品に含まれる放射性物質に基準はあるのでしょうか?

    岡田

    福島の事故で拡散された放射性セシウムのことですね。それについては、事故以降に基準ができました。この基準値はEUやアメリカと比べても厳しい値で、日本では基準値を超える農産物は流通していません。

    牧野

    そうなんですね、福島の食品についてはどうなんでしょうか?

    岡田

    福島県では事故後、農産物への放射性セシウムの検査体制を整え、さらに農家の努力により、今では山奥でとれる山菜などのほんの一部を除き、放射性セシウムの基準値を下回っています。

    牧野

    流通しているものは基準値を下回っているものなんですね。それにしても、自然界から一番放射線を受けているのが「食べ物から」というのは驚きでした。今までのことをまとめると、私たちは「宇宙から」「大地から」「空気から」「食べ物から」放射線を受けていて、それは日常の中に常にあるものだということですね。

    次回は自然界以外からの放射線についてです。岡田さん、ありがとうございました。

  • #03 2021年11月10日放送 第3回 放射線とガンの関係
    牧野

    「暮らしの中の放射線」というテーマで、3回シリーズで放射線について学んでいます。今回は3回目、自然界以外からの放射線のお話です。東京都市大学原子力研究所 客員准教授 岡田往子(おかだゆきこ)さんに伺います。

    岡田さんは、東京都市大学原子力研究所で湖や沼の底につもったものに含まれている微量な物質や、放射性物質の分析をされています。また、放射線について正しい知識を持ってほしいという思いから、セミナーで放射線についてお話しする活動もされています。

    前回は放射線と食べ物の話を伺いました。今回は、自然界以外からの放射線について、教えて下さい。「放射線を受けると、がんになる」と聞いたりしますが、実際のところどうなんでしょうか。

    岡田

    放射線は一度に沢山の量を受けると危険です。一度に100mSv以上の放射線を受けるとガンになる確率が増えることが分かっています。前回お話しましたが、Sv(シーベルト)とは、私たち人間が放射線を受けたとき、身体にどのくらいの影響が出るのかを表す単位になり、mSv(ミリシーベルト)はSvの1/1000です。

    牧野

    100mSvって、どのくらいの量なんでしょうか?

    岡田

    前回、自然界から受ける放射線の量は日本では平均年間2.1mSvという話をしました。100mSvというと、50年分を一度に受けるという計算になります。しかし100mSv未満の量で、少しずつ放射線を受けた場合にガンになるか?というとデータがないんです。私たちが、他の要因でガンになるのと区別がつかないということです。

    牧野

    他の要因といいますと?

    岡田

    塩分のとり過ぎや偏食などの食生活の乱れや運動不足など、個人の生活習慣ですね。

    牧野

    私たちの身近にある放射線を利用するものとして、自然界以外ではどんなものがあるのでしょう?

    岡田

    放射線の利用でみなさんがよく知っているのは、医療ですよね。レントゲン写真やガン治療にも使われていて、私たちの身体の健康を守るため、病気を早期に発見するために欠かせない技術なんです。

    牧野

    レントゲンでは、どのくらいの放射線を受けているのでしょうか?

    岡田

    レントゲン写真の種類にもよるんですが、胸部レントゲン写真を1回撮ると胸に0.05mSvを受けることになります。これは自然界から受ける放射線、日本平均の2.1mSvからすると、約1/40ですね。

    医療で使われる放射線は、研究者や技術者が積み重ねた研究から、被ばくをできるだけ抑える技術を発展させていますし、身体への影響がないレベルと判断できる量の放射線を用いています。

    でも、これをどう捉えるか。放射線を使って検査し、早い時期に病気を知ることを望むのか、ごく少量の放射線でも受けることは嫌だ、と思うかです。

    牧野

    正確な情報を知った上で、私たち自身で判断することなんですね。

    岡田

    その他にもいろいろな産業で使われています。例えば、紙おむつには、放射線の力を使って作られた、水分をいっぱい吸収する材料が使われています。ここで注意しなければならないのは、放射線の力を使っているだけで、完成した製品から放射線が出るということではありません。

    火に強い防火カーテンや自動車などに使われる熱に強いチューブなどもあります。新しい素材はたくさん研究され製品化されています。放射線の通り抜ける力を利用しているものとして一番身近なのは、空港の手荷物検査ですね。珍しいところでは、製鉄所の鋼板。鉄の板を作る工程ではなくてはならないものです。「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、灼熱の鉄を薄くしていくので、その厚みを測定するのに放射線を使っています。

    牧野

    空港の手荷物検査などは知っていたのですが、紙おむつにも放射線の力を利用して作られた材料が使われているとは知りませんでした。放射線は身近にあるもので、正しく知れば恐れるものではないと思いましたし、きちんとした情報をもとに自分で判断することが大切なんですね。

    岡田

    その通りです。

    牧野

    岡田さん、3回にわたってありがとうございました。

PROFILE

  • 岡田 往子

    東京都市大学理工学部原子力研究所 客員准教授。
    日本大学農獣医学部水産学科卒業。
    千葉大学博士(理学)修得。高純度材料や考古学資料の微量元素の分析や福島支援(20km圏内の放射性物質測定、放射線教育など)。群馬県赤城大沼周辺の放射線測定にも力を注いでいる。

  • 牧野 克彦

    SBSテレビ「イブアイしずおか」の報道担当、「Soleいいね!」のレギュラーパーソナリティとして、長くSBSテレビの顔として活躍してきた、マッキーこと牧野克彦アナウンサー。朝の顔らしくさわやかに信頼性のある話題をお伝えします。
    趣味はゴルフ、長風呂、健康グッズを試すこと、読書、人に会うこと。自称・健康法評論家、健康マニアとして健康本を月に5冊ほどは読むようにしている。1日の始まりは白湯。寝る前にえごま油かアマニ油を少量がルーティーン。一本歯下駄を愛用している。