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  • 2025/07/31

花火の裏で日本人は何を思う? SNSが変えた「戦争」の距離感とデータに映る若者の危機意識

8月といえば夏休み。コロナ禍で中止となっていた花火大会も多くが復活し、楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。そんな花火大会ですが、一説では戦後の慰霊や復興のシンボルとして始まったものが多いとのことです。

終戦から80年という節目を迎える今年。日本人の「戦争」に対する意識はどう変化してきたのか、今回は、毎年全国7400人を対象にJNN系列28局が実施している「生活DATAライブラリ」から、そのリアルな変化を追ってみたいと思います。

※TBS生活DATEライブラリとは、全国の13~69歳男女7400サンプルを対象に実施する調査です。
都道府県人口を参考に地区を割り当て、北海道から沖縄に至る全国の都市部を母集団として調査を行っています。

まず、戦争に対する意識の時系列推移を表したものが下のグラフです。

グラフ①_トムスコラム「戦争への意識変化」 (1).jpg

オレンジが「この先、日本と外国が戦争する可能性はあると思う」、青が「ないと思う」と回答した人の割合を示しています。調査データから見ると、日本人の戦争に対する意識は3つの期間に分けられます。

リサイズ表・修正_トムスコラム「戦争の意識変化」.jpg

第1期(2013年~2017年):不安感の上昇
東シナ海や南シナ海での中国の活動活発化、IS(イスラム国)による日本人人質事件、北朝鮮の核ミサイル開発など、外部の脅威が次々と現れた時期です。戦後日本人が持っていた楽観的な見方は徐々に変化し、「戦争する可能性はあると思う」という意識が高まりました。

第2期(2018年~2021年):懸念の後退
第1期から一転して「可能性はない」が急回復しました。この時期は北朝鮮情勢が「対話」によって緩和された時期と重なります。また、2020年以降の新型コロナウイルスのパンデミックにより国民の関心が国内へと向いたことも、戦争への懸念が低水準で推移した一因と考えられます。

第3期(2022年以降):危機意識の増大
2022年にロシアがウクライナに侵攻、その後も台湾や中東をめぐる緊張が激化しました。これにより、今まで遠い出来事だった戦争が、「身近なもの」へと意識が変わった可能性が高いです。国際情勢に劇的な改善が見られない限り、この傾向は続くでしょう。

さらに、グラフ2・3では「戦争する可能性はあると思う」「ないと思う」と回答した人の割合推移を年代別に表しました。

グラフ②リサイズ_トムスコラム「戦争への意識変化」 (1).jpg

グラフ③リサイズ_トムスコラム「戦争への意識変化」 (1).jpg

いずれの年も、10~30代は40~60代と比べて「あると思う」の割合が高く、40~60代は「ないと思う」の割合が高くなっています。若年層のほうが戦争への危機感が高いようです。

いくつかの要因が考えられますが、そのうちの一つにSNS・インターネット利用の影響が考えられます。2024年の各年代別に、「戦争する可能性はあると思う」と「ないと思う」と回答した人の休日のスマホ利用時間の差を比較したのが下記7つのグラフです。

グラフ④−①_トムスコラム「戦争への意識変化」全体.png
グラフ④−②_トムスコラム「戦争への意識変代」10.pngグラフ④−③_トムスコラム「戦争への意識変代」20.png
グラフ④−⑥_トムスコラム「戦争への意識変代」30.pngグラフ④−④_トムスコラム「戦争への意識変化」40代.png
グラフ④−⑤_トムスコラム「戦争への意識変代」50.pngグラフ④−⑥.png_トムスコラム「戦争への意識変化」60代.png

10代の差は小さいものの、全ての年代において「戦争する可能性はあると思う」と回答した人のスマホ利用時間のほうが長くなっています。スマホの利用頻度の高い人のほうが危機感を感じる割合が増えている理由として、SNSやYouTubeなどで簡単に世界の情報に触れられるようになったこと、SNSでの「いいね数」や投稿、ヤフーニュースコメント欄への書き込みなどで他人の意見を目にする機会が増えたことなどがあると考えられそうです。また、だれでも簡単にSNSを使えるようになったことでフェイクニュースの拡散や、過激な表現の情報を目にする機会が増えてしまったことも少なからず影響しているのかもしれません。

世界的な緊張状態が解消されないまま、不安定な情勢が続く昨今。若者たちが示す高い危機意識は、彼らが日常的に触れている情報や社会の状況から「今の日本、世界は安全とは言えないのかもしれない」という判断をしているからなのかもしれません。

今後、私たちは平和をどのように守り、築いていけるのか。戦後80年という節目を迎えるこの時期に、私たちにできることを考えてみませんか。

出典:2024.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7400サンプル)
2023.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7400サンプル)
2022.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7400サンプル)
2021.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7401サンプル)
2020.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7400サンプル)
2019.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7389サンプル)
2018.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7397サンプル)
2017.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7397サンプル)
2016.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7410サンプル)
2015.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7408サンプル)
2014.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7408サンプル)
2013.11 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7407サンプル)

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