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- 静岡のマーケット
- 2025/06/27
子育て世代の葛藤と60代の再燃 ~ライフステージで変わる「おしゃれ」価値観~
前回のコラム(https://www.at-s.com/s/business/data/393.html)では、年代別のお小遣いの使い道についてご紹介しました。お小遣いの使い道として調査全体で最も多いのは「友人・同僚・部下などとの飲食」、次いで高いのが「衣服」でした。そして特徴的なのが「衣服」の割合が20代と60代で特に高い結果だったというところ。20代で衣服の項目が高いのは皆さんも感覚としてわかるかと思うのですが、60代のほうが20代よりも「衣服」にお小遣いを使う人の割合が高かったのは少々意外だったのではないでしょうか。
そこで、今回のコラムでは2024年11月に実施したSBS生活DATAライブラリ静岡市調査の結果より、世代間の「ファッション」に対する意見を比較しました。世代間で「ファッション」への関心度を比較していくと、ライフステージの変化によって「ファッション」に対する価値観が変化しているのでは?という結果が明らかになりました。
まずはグラフ①をご覧ください。
グラフ①は年代別お小遣いの使い道について、「ファッション」に関する項目のみを抜粋したものです。

グラフ①を見ると、20代はいずれの項目も高い水準となっており、20代のファッションに関する関心度の高さが表れています。
各項目20代が高いのは皆さんの予想通りかと思いますが、気になるのは30代と60代。美容院・理髪代を除き、30代は20代と比べると数値がガクッと低くなってしまっています。また、60代を見ると「衣類」が全年代でトップになっているほか、「化粧品・ヘアケア用品」の数値が29.4%と20代・40代に次ぐ高い結果となっています。全体的に30代~50代ではファッション用途でのお小遣いの使用は少なくなり、60代で再びファッションにお小遣いを使うようになったと考えられそうです。
ではファッションへのこだわりはいかがでしょうか。「ファッションにこだわりがあるほう」と回答した人の割合について性別と年代で比較してみました。グラフ②が男性、グラフ③が女性を年代別に比較したものです。


グラフ②を見ると、男性は10代が最もファッションへのこだわりがあり、20代から徐々に減少をはじめ、40代では23.0%と最も低い数値となりました。その後、男性50代・60代では再び33%台へと回復しています。
グラフ③を見ると、女性10代・20代ではファッションへこだわりがある人が60%と半数以上だったのに対し、女性30代では38.3%と急激に減少しています。女性40代で47.5%と5割弱まで回復するものの、50代では36.8%となっており、30代から50代にかけてはファッションへのこだわりが比較的低い結果となっています。
一方で、女性の60代では再び数値が伸びて51.7%まで回復。半数以上がファッションにこだわりがあるということがわかります。また、グラフ②③で同世代の男女を見比べると、どの世代も男性よりも女性の方が数値が大きく、ファッションへのこだわりが強いと考えられます。
女性の第一子出産時の平均年齢が30.9歳(厚生労働省の人口動態統計2022年版より)のため、まさに30代~50代は子育て世代。子育てに忙しくなり、自身へのファッションへのこだわりが薄れていると仮説を立てられそうです。また、男性40代のこだわりが最も低いのも、女性同様に子育て世代であることや、キャリアにおける「働き盛り」と責任増大による多忙化が影響しているのではと考えられそうです。
さらに女性に焦点を当てて年代別のファッションへの考え方について比較してみました。

グラフ④は女性のファッション情報に対する関心について年代別に比較したグラフです。年代が高くなるほど「ファッション情報に関心が強い方」が減少しています。逆に「ファッション情報をあまり気にしないほう」は年代が高くなるほど増加している傾向にあります。また、「関心が強いほう」「あまり気にしないほう」の割合が逆転したのは女性30代からで、ファッション情報への関心は30代がターニングポイントとなっていると言えそうです。
続いて、服や靴の選び方を比較したものがグラフ⑤です。こちらも年代が高くなるほど「素材、仕立てを中心に選ぶほう」が増加し、「色・柄・流行を中心に選ぶほう」が減少傾向にあります。「素材、仕立てを中心に選ぶほう」が「色・柄・流行を中心に選ぶほう」を上回るようになったのは40代でした。

さらに、グラフ⑥で毎日着る服に対する意見について年代別に比較をしました。「気をつかうほう」に関しては10代・20代では40%を上回っていましたが、30代から50代に関しては20%後半から30%前半を推移するようになり、60代で再び増加して60.3%となっています。30代から50代にかけては「気をつかうほう」よりも「気をつかわないほう」が高い割合となっており、特に30代・50代では50%以上が「気をつかわないほう」と回答しているのも特徴的です。

グラフ④~⑥を見ると、女性30代~50代という子育て世代で価値観に変化があることがわかります。そこで、同居している子供(大学・大学院生以下)がいる女性といない女性のファッションへの価値観比較を行いました。そのグラフが⑦です。
※サンプル数の都合上、女性50代は割愛しました。

同居している子供の有無で比較をすると、30代・40代ともに子供がいない方が「ファッションにこだわりがある」「気に入ったものは高くても買う」などの項目が高い結果となり、子供がいない方がファッションへの意識が高いと考えられそうです。おそらくですが、子供がいる場合はおしゃれさよりも動きやすさや利便性を重視したり、子育てや教育費にお金がかかる分、自身のおしゃれは限られた中でやりくりしているのでは、と考えられます。
30代・40代は子供の有無でファッション意識はくっきりと二極化しています。子供がいなければ「ファッションにこだわりがある」「気に入ったものは高くても買う」は日常でも、子育て中は「汚れてもOK」などの優先度が高くなるのでしょう。
おしゃれにかけたい情熱は、いつの間にか子供への情熱となり、「オムツ代」や「塾代」という名前に変わって財布から消えていく…、そんな子育て世代の女性は葛藤しているのかもしれません。
いかがでしょうか。年齢やライフスタイルによってファッションへの価値観は変わっていくもの。自分の生活にあったおしゃれを楽しみたいですね。
株式会社トムス
出典:2024年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査(男女13~69歳 563サンプル)
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