10代女性の50%がしていた「空想」時間が半減!ムダを愛する余裕が、次のイノベーションに
先日、大盛況のなか閉幕したビジネスマッチングイベント「TECH BEAT Shizuoka 2026」。会場にあふれる革新的な技術やアイデアに圧倒される一方で、ふと考えさせられたことがあります。それは、「真のイノベーションには『思考の余白』が不可欠である」という説です。日々の業務から離れ、ボーッと物思いにふける時間—。一見ムダに見えるこの「空想」の時間こそが、これまでにない新しい発想を生む最大の燃料だと言われています。しかし、今、私たちの未来を担う世代の脳から、この「空想時間」が着実に消滅しているという衝撃的なデータが存在します。
■ 激変する若者の空想習慣
TBS生活DATAライブラリの調査によると、「ときどき空想にふけるほうだ」と答えた人の割合は、全国・静岡市ともに年々減少しています。例えば全国調査では、2000年代前半には24%前後で推移していた割合が、2010年代半ばから下落傾向を強め、現在では16%台まで落ち込んでいます。静岡市調査においても同様に、2006年の28.3%をピークに減少が続き、直近では15%前後にまで減少しています。


特に深刻なのが「若者の変化」です。
2000年代前半、10代女性の約50%、10代・20代男性の30〜40%が「ときどき空想にふける」と回答していました。若者の半数近くは、日常的に自由なアイデアや空想に心を躍らせていたのです。
ところが現在、この数値は全年代が一律で10〜20%程度の低い水準へと激減。


かつて空想の宝庫だった若者たちの脳から「空想」の習慣が失われつつあります。「こんな未来があったら面白そう」「もしもこれができたら…」という無謀な空想こそが、技術革新やイノベーションの第一歩です。空想しない若者が増えた日本で、果たして未来を突破するような新事業や革新技術は生まれ続けるのでしょうか?
■ 犯人はスマホとSNS?脳のスキマ時間を完全にジャック
なぜこれほどまでに、若者たちの脳から「空想」が消えてしまったのでしょうか。
一つの大きな節目として考えられるのが、2010年代に私たちの生活へ急速に進入してきたスマートフォンの普及です。日本では2008年にiPhoneが発売され、2011年にはコミュニケーションアプリ「LINE」がサービスを開始しました。まさに2010年代前半は、スマートフォンが急激に普及し、生活様式が劇的に変わっていった時期と重なります。
実際に、TBS生活DATAライブラリで2010年から2018年まで調査していた「1日あたりのインターネット利用時間」の推移を見ると、2010年代を通じて長時間利用者の割合が増加しています。
※2018年のみ、質問が「私用での1日あたりのインターネット利用時間についてお答えください」に変更となっているため、「3時間以上利用」の数値が減少しています

さらに、2019年から調査が開始した「平日のスマホ使用時間」のデータを見ると、平日にスマホを3時間以上使う人は2022年には半数以上(50.2%)。直近の調査でも約半数の人が毎日3時間以上スマホ画面を見つめて生活しています。

しかし、変化したのは「利用時間」だけではありません。人々の「意識」そのものもネットやSNSに大きくシフトしていることが明らかになりました。

「インターネット・SNS利用に対する意見」のデータを見ると、「ネットやSNSを使うことは大切な生活の一部になっている」と答えた人は2011年以降上昇を続け、2020年前後には約6割近くにまで達しました。
さらに「ネットやSNSが使えなくなったら代わりにすることがなくて困る」と感じる人も約2割存在しています。
※2021年までは「インターネット利用に対する意見」、2022年以降は「インターネットやSNS利用に対する意見」に変更となったため、2021年と2022年で数値に差が生じています
かつて通勤通学や待ち時間、寝る前に存在していた「手持ち無沙汰でボーッとする時間」は、ネットやSNSが「大切な生活の一部」となった結果、スマホにジャックされつつあります。こうして、私たちは自ら空想を生み出すはずの「脳のスキマ時間」を手放してしまっているようです。
■ 「一見ムダと思える時間」を、もう一度見直そう
「効率」や「タイパ(タイムパフォーマンス)」が重視される現代において、何も生み出していないように見える「ボーッとする時間」は、効率化の波に飲み込まれて真っ先に消去されつつあります。
しかし、効率的な情報収集からは「既存の延長線上のアイデア」以上のものは生まれにくくなります。枠を飛び越えるようなイノベーションに必要なのは、非効率で、一見ムダに思える「空想」の時間です。
あえてスマホを置き、意図的に無駄な時間を作る。
「無駄」と切り捨ててきた「空想」の価値をもう一度見直すことこそが、静岡から、そして日本から未来を変える最高のアイデアを芽吹かせる、最も贅沢で必要な投資になるのではないでしょうか。
データ出典:
2000年~2025年11月実施 TBS生活DATAライブラリ全国調査(男女13~69歳 7,389~7,429サンプル)
2000年~2025年11月実施 TBS生活DATAライブラリ静岡市調査(男女13~69歳 561~570サンプル)