【特別インタビュー】「混ぜる」が生み出す静岡の未来。仕掛け人・飯倉氏が語る地域づくりとPRの極意
産官学民の壁を越え、静岡の地域づくりにおいて「ハブ」として活躍する飯倉清太氏。NPO法人の代表をはじめ、静岡大学の客員教授、企業の顧問など、数え切れないほどの顔を持つ同氏ですが、現在はなんと「SHIZUCONE」のインターンとしても活動しています。なぜ飯倉氏がこれほどまでに多様な人々を巻き込み、静岡の街を動かしているのか。ビジネスの原体験から「混ぜる」ことの真意、そしてこれからの静岡に必要な広報戦略まで、たっぷりとお話を伺いました。
原点はジェラート店とゴミ拾い。「行動」がPRに変わる
——さまざまな顔を持つ飯倉さんですが、飯倉さんって一体何者なのでしょうか。
飯倉氏: もともと「どこかに勤める」という概念がなかったタイプで、21歳の時に起業して一度も就職する事なく現在に至ります。最初は伊豆でイタリアンジェラートの店をやっていました。起業当初は多くの人が行き交う場所での販売なのに本当に売れなくて、悔しくて「どうやったら売れるんだ」と必死にもがいていました。そんな自分がネットもない時代にできたことは「ただ現場で毎日チャレンジすること」しかありませんでした。この試行錯誤の日々は多くの知識と経験を与えてくれ結果として半年ほどで事業は軌道に乗り始めました。
月日が経ち、30代後半に大きな転機になったのが「ゴミ拾い」です。当時、ブログ上で「観光地でゴミを捨てる人が多くてひどい」と書き込んだら、「そんなことを言ってないで、お前が拾え。書き込んだってゴミはなくならないだろ」と友人に返されて。その言葉にハッとし、ゴミ拾いを始めたんです。
——それがNPO設立や、ビジネスの好転につながっていったんですね。
飯倉氏: そうなんです。毎日車で動いていたので、スピードを変え歩いて見てみると、車では見えない多くのゴミが落ちていました。そこで仲間と話し合い、ゴミをみんなで拾い始めたんです、夢中になって拾っていると、最初のころは冷ややかな目で見られることもありましたが(笑)、続けているうちに静岡新聞の記者さんの目にとまり、取材していただいたんです。
すると、「あいつの店のアイスを食べるとゴミが減るらしいぞ」と話題になり、ジェラートの売上が右肩上がりに伸びていきました。「地域のために良いことをしていると、結果的に本業にも良い循環が生まれる」という、今で言うCSR(企業の社会的責任)の小さな成功体験でした。
——ジェラート店時代は、マーケティング的なアプローチも独自にされていたそうですね。
飯倉氏: 当時近隣のお店がものすごく売れていたのですが、自分のお店は本当に最初売れず(笑)。観光地ではあるものの「リピート率を高める」ことが大切だと仮説を立て、一番観光地で影響力のある「バスガイドさん」と徹底的に仲良くなったり、Googleマップもない時代にTwitter(現X)で渋滞情報をつぶやいて「つい割(Twitter割引)」をやったり。結果的に、当時「いいことをすれば新聞に載る」と知ってからは、「静岡新聞に100回載る」という目標を立て、6年で達成しました。補助金や助成金に頼らず、自分たちのスポンサーは自分たちがという運営スタイルも、この時の経験から来ています。
産官学民の「通訳」となり、静岡を「混ぜる」
——飯倉さんがよく口にされる「混ぜる」ことの重要性について教えてください。
飯倉氏: 人と人が混ざることによって化学反応が起きると思っていますが、外から故郷の静岡を見た時、トップダウンだけではなく、もっとボトムアップの動きが増えてもいいのではないか?昭和、平成、令和と時代は変わり、企業はさまざまなセクターの人たちとも「まざる」時代だと思っていました。だからこそ若手同士が会社の枠を越えて繋がり、その若手たちがさらに企業や町の人と「毛細血管」のように繋がっていけば、静岡が良くなっていくのでは無いかと思っていました。
現在顧問をさせていただいている静岡鉄道や他社を巻き込んだ若手研修では、あえて就業時間内に他社の若手と「混ぜる」機会を人事のみんなと作りました。その結果、若手社員の思考力や行動力が劇的に上がり、今では彼ら自身がハブとなって、静岡市内に新しいビジネスやまちづくりのプレイヤーが次々と生まれています。
——異なる企業やセクターの人たちが集まると、齟齬も起きそうですが。
飯倉氏: おっしゃる通りです。ただ、産(企業)、官(行政)、学(大学)、民(NPOなど)が集まっても、それぞれ文化も「言語」も違うため、話が噛み合いません。だからこそ、全セクターの役職を経験して「通訳」になる必要がありました。また自分がNPOセクターから企業の顧問などになった事で「自分たちにも出来るかも」と地域づくりに取り組んでいる若手がさまざまな企業と連携している姿を見ると「行動してみる」大切さを日々実感しています。もっと静岡の若者が静岡の企業と連携することが理想だと思っています。
50代からの「大人のインターン」とお金に縛られない自由
——現在、飯倉さんは「SHIZUCONE」にインターンとして参画されています。これだけの実績がある中で、なぜ今インターンなのでしょうか?
飯倉氏: 自分が50代半ばになり、セカンドキャリアを考えた時、「お金(報酬)」が思考や行動の邪魔になることに気づいたんです。お金が発生すると「いくらですか?」という思考になり、自ら学ぶチャンスを逃してしまいます。これを例えると100万円で企画を考えてとお願いされたら予算以上のアイデアは出せないものなのですが、予算0円で考えてと頼まれたら知恵や人脈をフルに活用し枠にとらわれない面白い企画を考えるものなんです。
首都圏などでは、自分のスキルを無償で提供する「プロボノ」の文化が根付いていますが、静岡にはまだ少ない。それなら自分が率先して「インターン」として入り、無料で学ばせてもらう代わりに価値を提供する形を作りたいと思いました。お金が絡まないからこそ、自由で純粋なアクションが起こせるんです。 お金をもらわなければ「副業」にも当たらないので多くの方がインターンを活用すれば良いと思っています。年齢とか関係ないんですよね、最終学歴じゃなくて「最新学歴」、いま自分が何を学んでいるかが重要だと思います。
——「大人のインターン」が定着すれば、静岡の企業文化も変わりそうですね。
飯倉氏: そうですね。「ランディング静岡」という異業種の交流会を不定期で開いていますが、静岡の名だたる企業である程度キャリアを積んだ人たちが、会社の看板ではなく個人のスキルで地域に入り込む事が出来ないかと常に話をしています。そういう人材が活躍する場が増えれば、もっと面白い化学反応が起きると思っています。その実験としてSHIZUCONEのインターンとして「クビになるまで」は居座るつもりです(笑)、自分の行動が誰かのヒントになればと思っています。
若者が新聞に載ることで「静岡に残る理由」ができる
——静岡の企業の広報力について、外から見てどう感じていますか?
飯倉氏: 今の学生や若い人たちは、SNSでの発信は得意ですが「プレスリリース」という概念をほとんど知りません。「良いことをしているのに知られていない」というのは、社会的に存在していないのと同じです。
地方において、新聞(活字)に載ることの信用度は今でも圧倒的です。新聞に載れば、大学も企業も「あの記事の人だね」と見てくれるようになり、明らかにスケール(成長)のスピードが変わります。
——ただ発信するのではなく、戦略が必要だということですね。
飯倉氏: その通りだと思います。学生にも伝えていますが「社会性がなければ新聞には取り上げてもらえない」だからこそ企画を創るときに「静岡新聞に載ることをゴールにして、逆算して企画を立てる」というのが重要だと話しています。新聞に載る事でパーソナルブランディングが上がったり、いま企業では当たり前となっている「CSR」や「CSV」の基本的思考を学ぶ事ができ、社会に出たときに役立つことは間違いありません。「SHIZUCONE」は、若者や企業がその「プレスリリース」という武器を知り、思考力を上げるための最高のプラットフォームになるはずだと思っています。
——最後に、メディアが地域に果たす役割についてどうお考えですか。
飯倉氏: 新聞に載るというのは、一般の人にとって「非日常」の体験です。 「SHIZUCONE」は、若者や企業がプレスリリースを打ち、戦略的PRの思考を鍛えるための最高の練習場になるはずです。若い世代が「自分たちの活動が新聞やWEBに載った!」という成功体験を持つことが重要であり、結果として静岡全体の「広報力」を上げることにつながります。広報力が上がれば静岡を「知ってくれる人」が増える、その結果「人と人がまざり」地域を盛り上げる最大の原動力になると信じています。
口動力より行動力、ぜひ「SHIZUCONE」を使ってみてください!そして「静岡の広報力」を一緒に底上げしていきましょう!