サンゴの「人工繁殖」技術で、豊かな北限の海と生態系を守る
ビジネス環境が激変する今、自社だけで解決できない課題はありませんか?しずコネでは、企業や地域と教育機関を繋ぎ、新たな価値を共創する産学連携コンテンツをお届けします。「難しそう」と思われがちな大学の素晴らしい研究シーズを、「ビジネスでどう使えるか?」「どんな社会課題を解決できるか?」という視点でわかりやすく紐解きました。「うちのこの技術と組み合わせたら面白いかも!」「この課題を一緒に解決したい!」と感じたら、それが連携への第一歩です。ぜひ、未来のビジネスを創る「予想外のつながり」を見つけてみませんか。
この研究・技術の「ここがスゴい!」

絶滅危惧II類に指定されている造礁サンゴ「エダミドリイシ」は、1930年代から駿河湾に生息、90年代には分布北限域で最大の群落を形成しており、駿河湾の湾奥部の沿岸生態系を支えてきた非常に重要な存在です。
しかし、90年代後半から低水温やガンガゼの食害によりその数が減少しています。
駿河湾では2000年代から、エダミドリイシの枝片を育て移植するという無性生殖による保全活動が進むものの、遺伝的多様性※の維持が難しく、近年は、卵から育てる有性生殖を用いた種苗生産の併用が求められていました。
本研究では、地元漁協の協力を得て、大掛かりな中間育成施設を使わずに、陸上の「簡易水槽」での採卵・幼生飼育と、海中での飼育を組み合わせることに成功。
卵から育てたサンゴ(2021年生まれ)が産卵サイズにまで成長しており、分布北限域において人工的にサンゴを増やす画期的な手法を確立しました。
これによりこれまで駿河湾の沿岸生態系を支えてきた基盤生物であるサンゴ群集の縮小を食い止めることにつなげることができると考えています。
※遺伝的多様性…形、色、模様、性格などに個体差をもたらす「遺伝子」のバリエーションのこと
理想のパートナー・共創アイデア

サンゴの初期の生残率をさらに上げるため、陸上での中間育成施設開発にむけた実験に一緒に取り組んでくれる企業を求めています。
・水処理装置・アクアリウム設備・プラント関連の企業様 (サンゴの赤ちゃんが育ちやすい水質・水流を保つ「陸上飼育設備」の共同開発・実証実験に協力していただける企業)
・SDGs(ネイチャーポジティブ・生物多様性保全)を推進したい企業様 (企業のCSR活動や環境保全プロジェクトとして、駿河湾のサンゴ保全を共に支援・発信していただけるパートナー様)
・環境教育や地域活性化に取り組む団体・企業様 (陸上でのサンゴ飼育・展示を通じた、新しい教育プログラムや体験型ツーリズムの共同開発)
これまでの連携実績・エピソード

これまで、内浦漁業協同組合、平沢マリンセンター、NPO法人海辺を考えるしおさい21といった地元の方々の協力を得て活動してきました。
研究データが少ない分布北限域のサンゴですが、内浦漁業協同組合と平沢マリンセンターの協力で作成した簡易水槽で初めてサンゴの産卵を観察できた時のワクワク感は忘れられません。
今後、陸上の飼育設備がしっかりと整えば、産卵の瞬間や1ミリほどの小さなサンゴの赤ちゃんなど、普段は海中でしか見られない貴重な姿を地元の子どもたちに見せることができ、素晴らしい海の環境教育になります。
知財情報
特になし
執筆者
東海大学海洋学部水産学科 中村 雅子 教授