企業との伴走で実効性高める
―企業の「健康経営」実践のために、どのような支援を行っているか教えてください。
高倉支社長 「健康経営アドバイザー」※の資格を持つ社員が、経営者と従業員に寄り添い、実効性の高い実践を支援しています。また「健康経営アクサ式」と銘打ち、通常の健康経営の範囲である健康管理・健康増進や心の健康だけではなく、夢や生きがい、ライフプランなどのお金の健康(社会的な健康)まで含めた「人の健康」、あるいは「企業の健康」といった「トータル的な健康」を実現することを目指しています。
また県内の自治体・協会けんぽ支部・商工会議所等と連携協定や覚書を締結し、密接に連携・協働して事業者の皆さまの健康経営実践と県民・市民の皆さまの健康づくりを継続的にサポートしています。本年6月には県、全国健康保険協会静岡支部、アクサ生命の3者共催「健康経営実践セミナー」を県内6カ所で開催、延べ160社196名にご参加いただきました。
※東京商工会議所が創設した認定資格の取得者

川田課長 「ふじのくに健康づくり推進事業所宣言」事業で、事業所のモチベーションアップを図っており、今年8月現在で7,481事業所に宣言いただいています。難しく考えず「毎日ラジオ体操をする」など簡単な目標でいいので、まず宣言することを第一歩にしてほしいです。
また優れた活動や今後に期待できる取り組みを表彰する「健康づくり活動に関する知事褒賞」も、2012年度から昨年度までに88事業所が受賞していて、事例集にまとめて県民の皆さまにご覧いただけるようにしています。本年度も11月6日まで募集しているので、選考基準を満たす企業の皆さまはぜひご応募ください。
安田支部長 協会けんぽでも「ふじのくに健康宣言事業」を実施しています。2024年8月末現在で6,970事業所が参加し、全国では愛知県に次いで2位です。現在、健康経営優良法人の取り組みを中心に事例集を制作しています。県の事業とも連携していて、静岡支部に申請すると県の認定も受けられます。
健康宣言の要件の一つが健診・保健指導を受けることになっていますが、協会としてもなるべく多くの方に健診を受けていただけるよう、特定健診に3大がんの検査をプラスした生活習慣病予防健診の自己負担額を下げたり、検査項目を追加する付加健診の対象年齢を拡大したりしています。健診機関と連携して、受けたその場で保健指導や医療機関の受診について説明してもらう事業を進めるとともに、健診の結果や問診票の回答などを事業所全体で数値化した「事業所カルテ」も提供しています。
まずは自社の現状把握から
―健康経営に取り組もうとする企業は、何から取り組んだらよいのでしょうか。
高倉支社長 難しいと思われるかもしれませんが、決してそうではありません。我々の進め方は、大きく分けて四つのステップに分けています。まずは健康宣言をし、責任者や担当者を決め、当社の「健康習慣アンケート」を実施して自社の現状や課題を知ることが第一です。初めてアンケートを実施すると、従業員との認識の違いにショックを受ける経営者も非常に多くいます。
従業員向けのセミナーなどで繰り返し健康の重要性を伝えるなど環境整備を進めた後、運動を取り入れるなど会社の現状や課題に応じた健康経営実践計画をつくり、実施後は従業員の参加状況などを把握して振り返りや改善をします。このステップを繰り返すことが健康経営を成功させる鍵です。

川田課長 最初は、健診の結果から自社にどんな課題があるかを考えると、取り組むべきことを思いつきやすいのではと思います。「健康づくり」と大きく構えすぎず、自社の課題を解決することで、健康度の上昇や労働力損失の防止につなげてほしいです。
県健康増進課としては、健康経営全般をアドバイスするというより、例えば運動や栄養など、それぞれの専門職を要望に応じて派遣するサービスをしています。3回まで無料ですので、ぜひ活用してほしいです。
安田支部長 「自社の課題を」という話がありましたが、従業員がまず健診を受けること、そして「結果がどうだったか」など、経営者が従業員に声を掛けることが、健康経営の第一歩につながると考えています。
また、自社目標として「禁煙」のような目標にしてしまうと、なかなかハードルが高くなってしまうので、他のことに目を向けるのも一つの手です。県内では運動不足が課題になっていますので、ラジオ体操やストレッチ、通勤時に少し歩くといったことから始めて達成感を味わうことも次のステップに進むために大事です。
人材確保や企業価値向上に期待
―健康経営に取り組むことには、どのような意義があるのでしょうか。
高倉支社長 一つは人材の確保です。ワークライフバランスの改善や業務上のストレス軽減が従業員の満足度やワークエンゲージメントを高め、離職率の低下に繋がります。労働環境が良くなれば人材を採用しやすくなり、入社後の定着率が向上する効果も期待できます。
また企業イメージが向上することで、金融機関、取引先企業など外部からの高い評価につながり、円滑な事業運営実現の一助にもなります。
川田課長 働き盛り世代の方を健康にすることで、家庭や地域に健康づくりの取り組みが広がることを期待しています。ご存知の通り静岡県の健康寿命は全国トップクラスです※。第4次静岡県健康増進計画でも、健康寿命の延伸を大きな目標の一つに掲げています。事業所単位で健康経営に取り組まれることが、事業所の発展だけではなく、従業員の生活の質や社会環境を向上させ、ひいては県民の健康寿命の延伸につながると考えています。
※2021年の厚労省の報告によると、静岡県の2019年の健康寿命は、男性73.45歳、女性76.58歳で男女ともに全国5位

安田支部長 「健康経営優良法人」※に認定されると、企業価値の向上や融資での優遇といったメリットがあります。さらに言うと今年度から、中小規模法人部門のうち小規模法人は認定を受けるために満たすべき項目の数が緩和されました。これまで要件が厳しいと考えていた小規模法人の皆さまには、ここで少し踏み出していただくのがいいのかなと考えています。
※経済産業省と日本健康会議が健康経営に取り組む優良な法人を認定する制度。
高倉支社長 「健康経営優良法人2024」には、前年の約1.2倍となる576社の中小企業が認定されました。毎年継続的に取得する、ロゴを名刺に印刷される企業が徐々に増えてきたと実感しています。それだけ対外的なアピールの効果があるということです。
生産年齢人口の減少と従業員の高齢化、深刻な人手不足、そして国民医療費の増加。日本の構造的な課題を背景に、人材を確保し、長く生き生きと企業で働いてもらえる環境づくりが、継続的な企業活動に不可欠と考える経営者が増えています。そうした意識を持った企業が、健康経営優良法人認定を活用しているのだと思っています。当社では、ご希望があれば健康経営優良法人の申請から取得までしっかりサポートさせていただきます。
サポート 積極的に活用を
―健康経営については、企業規模を問わず取り組むべき課題といえそうですね。
安田支部長 先ほど健康経営優良法人のハードルが下がった話をしましたが、小規模の企業の場合、従業員が健康を害しても、長い間休んでもらうことが難しく、次の人を雇う必要などが生じ、ダメージは大きいといえます。むしろ中小企業こそ健康経営に取り組むべきだと考えます。

高倉支社長 当社でも、仕事と病気の両立支援に注目しています。定年が65歳やそれ以上に伸びていくと、必然的に仕事をしながら病気にかかる方も非常に多くなってきます。病気になっても仕事に復帰できるようサポートしていきたいと考えています。
川田課長 最近のトレンドとして、女性の健康づくりも注目されています。女性のライフイベントに応じた健康づくりや女性に多い病気に対する取り組みなどの必要性を理解してほしいです。
高倉支社長 外部の支援を受けずに健康経営に取り組む場合、こうしたトレンドなどの情報がなかなか入ってこないのがネックになります。初めはいろいろなサポートを積極的に活用していくことが、一つのポイントになります。
健康経営についてちょっと興味がある、話を聞いてみたいという方は、(下記のリンクから)健康経営アドバイザーの無料相談にお申し込みください。
またホームページでは、取り組み事例や従業員の声を多数掲載していますので、こちらも参考にしていただければと思います。
更に詳しく「健康経営アクサ式」を知りたい方はこちら
https://www.axa.co.jp/company/hpm/
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