
取材班ピックアップコンテンツ
- 海洋研究開発機構(JAMSTEC)「駿河湾海洋予測可視化サイト」
- サクラエビ資源再生のための科学的政策提言
- 川辺川ダム計画再始動 熊本・球磨川流域ルポ
- シンポジウム「サクラエビとアラル海」
- 取材班の思い、考え方…イラストで解説 ⇒実態編 ⇒理念編
- 静岡県、山梨県、早川町、つながりは… 富士川を巡る政治的位置関係(概念図)
新着記事
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富士川水系の劇物 富原橋で最高濃度 静岡県調査
富士川水系雨畑川に高分子凝集剤が混じった汚泥が不法投棄された問題で、県は21日、富原橋付近の富士川の流水から、凝集剤成分が変化してできる劇物アクリルアミドモノマー(AAM)を比較的高濃度で検出した、と発表した。県はこの検出結果を受けて再調査したが、再びAAMを検出した。 検出したのは富士宮市と富士市にかかる富原橋付近。県が5月11日実施の調査で1リットル当たり350ナノグラムのAAMを検出した。昨年7月以降、県などが計4回実施した調査では最高で、環境省の2007年度全国調査の最大値同49ナノグラム(香川・高松港)の7倍に当たる。24日の再調査でも、同61ナノグラムを検出した。 11日の調査では、富士市内の2カ所でも同65ナノグラムのAAMを検出した。国が担当した山梨県側の2カ所などでは検出できなかった。県生活環境課は「人体に影響はない」としつつも継続して調査する方針。
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山梨・雨畑ダム発電再開へ 3年ぶり、堆砂除去半ば
日本軽金属雨畑ダム(山梨県)の堆砂問題で、水害を引き起こしてストップしていた湛水(たんすい)と発電が近く再開されることが21日までに、関係者への取材で分かった。同ダムでは堆砂除去を5カ年計画で行う予定だったが、ダムの再稼働を見切り発車する事態に、近くの集落の住民は複雑な表情だ。 ダムは国から土砂撤去の行政指導を受けた直後の2019年8月の台風で、集落に冠水被害などをもたらした。その後、地元の反発を受けて湛水と発電を停止した。ことし7月1日までに湛水を再開し、同日からダム湖と導水管でつながる角瀬発電所が発電開始する。 取材に対し、日軽金は「20~21年の短期計画で300万立方メートルの土砂移動と搬出を行った」と回答。河道を確保したことを再稼働の理由とした。 ただ、ダム上流の雨畑川からは毎年、平均50万立方メートルの新たな土砂が流入する。また、20年11月時点でダムの堆砂率(総貯水容量に対する堆砂の割合)は120%で、1630万立方メートル以上の土砂があった。日軽金は現在の堆砂率を住民にも明らかにしていない。 同社は国に対し、20~24年度に計700万立方メートルの土砂撤去を約束したが、道半ば。周辺の男性は「水利権をまっとうに行使するということだと思うが、地元が埋まらないことを一番に願っている」と淡々と述べた。 (「サクラエビ異変」取材班)
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サクラエビ春漁 回復基調で終了 200トン超えは自主規制後初
サクラエビの春漁が8日夜、終了した。水揚げ量は約202トン(出漁計23回)で、昨年の春漁約141トンに比べて1・4倍に増えた。県桜えび漁業組合(実石正則組合長)が記録的な不漁を受けて2018年秋から自主規制を導入して以来、初の200トン超えとなり、静岡市清水区由比の漁業関係者は「漁獲量が回復基調を見せ、漁師の努力が実を結びつつある」と話した。 春漁は3月27日に解禁となったが、天候不順が続き当初は漁獲が伸びなかった。5月中旬に入ると一転して各日の漁獲量が10トンを超え、同16日には最多の約21トンを記録した。好天に恵まれたことで、静岡市清水区蒲原の富士川河川敷ではエビの天日干しで桜色に染まった光景が広がった。 9日早朝には由比漁港(同市清水区)と大井川港(焼津市)で春漁最後の競りが開かれた。競りを見守った実石組合長は春漁について「自主規制をしつつ漁獲が増えるということは、分母となる資源も増えているのではないか。次の秋漁が楽しみだ」と総括した。 ■「富士川環境改善で好影響」 漁業者ら指摘 河口にサクラエビの産卵場がある富士川水系で2009年から続いた高分子凝集剤入り汚泥の不法投棄が19年に終わり、河川環境が大幅に改善したとの指摘が漁業者らから寄せられている。春漁に好影響を与えたとの見方が相次いでいる。 「天然アユのはみ跡が十数年ぶりに見られる」と話すのは本流に漁業権を持つ芝川漁協の関係者だ。川底の石と石の隙間に入り込んでいた粘着質の泥が少なくなり、ケイ藻が生えるようになった。中流域でも水生昆虫類が確認されている。 サクラエビ漁師によると春漁の主漁場は富士川の沖合で、河口にも群れがいた。「灰色だった川の泥が自然の茶色に戻ってきた」と話す。県水産資源課も「回復初期からさらに進み、回復基調になった」と指摘する。 由比港漁協の宮原淳一組合長は「川がきれいになり、本来の海を取り戻しつつある。人間ができることについては今後も取り組むつもりだ」と話した。
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訃報=大森信氏死去 サクラエビ研究第一人者、84歳
サクラエビ研究の第一人者として知られる東京海洋大名誉教授の大森信(おおもり・まこと)氏が4日午前、脳梗塞により療養中の神奈川県小田原市で死去した。84歳。大阪府出身。通夜は8日午後6時半から、葬儀は9日午前9時半から神奈川県藤沢市辻堂神台1の3の36、和田湘南斎場で。喪主は長男洋(ひろし)氏。 国内では駿河湾だけで専門の漁が行われるサクラエビの生態や漁業などに関する研究に取り組み、台湾産サクラエビが駿河湾産と同種であることも突き止めた。共著書に「さくらえび漁業百年史」(静岡新聞社)など。本社「サクラエビ異変」取材班と連携する私的研究会に参加し、不漁の原因についての学術論文も執筆した。