中国・煙台特集

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知られざる「中国ワインの都」煙台

静岡から3時間でひとっ飛び

デジタル編集部

2019/12/28

 「中国で造られている酒は?」と聞かれて何を思い浮かべるだろう。紹興酒、白酒、それとも薬酒-。中国が世界のトップ10に入るワイン産地であることは、あまり知られていない。山東省煙台市の近代ワイン産業は120年余の歴史を持ち、煙台市は国際ブドウ・ワイン機構からアジアで唯一「ワイン都市」と認定を受ける。静岡から直行便で約3時間の地へ、静岡県などが11月に企画した視察旅行に同行し、現地を取材した。



中国・煙台市北部に位置する蓬莱市のワイナリー
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煙台市
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フランスの名門シャトー進出

「シャトー・ラフィット・ロートシルト」を所有する企業が2009年に設立した「ロン・タイ」=中国・蓬莱市
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 風力発電施設が遠くに複数並ぶ。煙台蓬莱国際空港に離着陸する航空機が上空を行き来する丘陵地に、ブドウの段々畑が広がっていた。広さ約30ヘクタール。ワイナリー「LONG DAI(ロン・タイ)」が赤ワインで一般的なカベルネ・ソーヴィニヨン種など、複数の品種を栽培していた。

 来訪者を迎える建物は灰色を基調にした現代的な石造り。イタリア製という試飲機にカードを差し込むと、黒みがかった深紅の赤ワインがグラスに注がれた。渋みは気にならない。舌の上に辛さが残るフレッシュな味わいが印象深かった。

【動画】イタリア製の試飲機を使って試飲する様子
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 ロン・タイはフランスの名門ワイナリー「シャトー・ラフィット・ロートシルト」を所有する企業が2009年に設立した。ゼネラルマネジャーのチャールズ・トロイテネールさんは「煙台は日照時間が長く、冬も気温が下がらない。ブドウ栽培に最適の地」と語る。名高いワイン産地ボルドーとほぼ同じ緯度にあり気候も近い煙台の土壌を、3年かけ分析した上で進出を決めたと解説した。

 13年にワイン製造を始め、品質が安定した今年9月に初出荷したばかり。試飲する際、チャールズさんは「味は大目に見てほしい」と謙遜しつつ、熟成させる樽(たる)を今後170個から700個に増やすとの増産計画に自信をのぞかせた。

ゼネラルマネジャーのチャールズさん(左)=中国・蓬莱市
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ブドウ畑を示す地図。カベルネ・ソーヴィニヨンを中心にカベルネ・フラン、マルスランなどが栽培されていた=中国・蓬莱市
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<メモ>

煙台市は山東省東部の都市で人口約712万人。4区と蓬莱(ほうらい)市など七つの県級市と、県で構成する。国際ブドウ・ワイン機構によると、2018年の中国国内のワイン生産量は9億3000万リットル(予測値)で世界10位。煙台市内の生産量は中国国内の3分の1以上に上る。



中国近代ワイン発祥の地
張裕酒文化博物館

 煙台で本格的にワイン製造が始まったのは張裕葡萄醸酒(張裕ワイン)が創立された1892年。現在、張裕は世界トップブランドの一つになるまでに成長し、市の中心街にある創業当初の工場跡地は張裕酒文化博物館として整備され、“中国ワイン”の歴史を学べる場になっていた。

【動画】張裕酒文化博物館の地下貯蔵庫や展示施設
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 館内には創業以来の文書やワインボトルが展示されていた。見どころは地下約7メートルのワイン樽の貯蔵庫。約100年前に製造された約1万5千リットルの樽は直径3メートル以上ある。見学の最後に、樽の香りが強く残るフルーティーなワインを試飲し、ブランデーの瓶詰めも体験した。中国の若い女性やカップルらが見学する姿もあった。

約100年前に製造された樽=中国・煙台市
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観光に力

 ワインを切り口にした観光振興に力を注ぐ煙台市。聞けば、市内に10カ所以上、見学できるワイナリーがあるという。宿泊施設やゴルフ場が併設された施設もあり、観光スポットとなっている。

 静岡と煙台を結ぶ便は現状、中国から日本への観光目的の利用が大半を占める。博物館の一室で行われた行政府との懇談で、煙台市文化観光局の王棋部長は「静岡と民間交流を深めて関心を持ってもらい、訪中利用も増えるよう努力したい」と話した。

静岡―煙台を結ぶ格安航空会社(LCC)の中国聯合航空の直行便。月、木、土曜日の週3便を運航する。直行便は名古屋、大阪、福岡でも運航され、煙台市行政府によると、2020年春に東京への就航も計画される=牧之原市の富士山静岡空港
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ホテルの廊下 EVで疾走

中心街の街並み。多数の高層ビルが並び、金融機関の建物が目立った=中国・煙台市内のホテルの窓から
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 煙台市内の海岸線が見渡せる中国四大名楼の一つ「蓬莱閣」、煙台山公園内の「旧日本領事館」なども巡り、それぞれで悠久の歴史や中国らしい風情を感じた一方、活気にあふれる街並みに何度も驚かされた。昨年には日本からイオンモールが経済技術開発区に出店。人口はこの20年で約50万人増えたのだという。

1泊したナイツホテルの外観=中国・蓬莱市
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 1泊した蓬莱市のナイツホテル(2018年開業)は、ディズニーランドをほうふつさせるテーマパーク前にそびえ、アメリカの国会議事堂を思わせる威容だった。到着すると、ロビーの飾り物だろうと思っていたクラシックなデザインの電気自動車(EV)に乗せられ、巨大な廊下を移動。子ども用2段ベッドがある「森」をモチーフにした部屋や、大型遊具が据えられた屋内入浴施設などを次々と案内された。

 800室を備え、総工費は17億元(約265億円)。「(山東省北部の)威海と蓬莱の中ではナンバーワンの自負がある」。ホテル責任者の女性が得意気に語って見せた姿にこの地の勢いを感じた。

【動画】EVで廊下を疾走
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