東京支社 柿田史雄
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検討経過の積極発信を 南海トラフ地震対策計画見直し【とうきょうウオッチ/記者余論】
国の南海トラフ地震防災対策推進基本計画の見直しに向け、中央防災会議に設置されたワーキンググループ(WG)の議論が4月に始まった。国家の存亡に関わる巨大災害に備えるため、国は検討段階から関係自治体と情報共有し、国民や民間企業・団体から防災の協力を得られるよう積極的に発信してほしい。 地震防災の有識者らでつくるWGは、現行計画が決定された2014年3月以降に各地で進んだ津波避難施設の整備や建物の耐震化のほか、高齢化やIT技術の発展といった社会情勢の変化を踏まえて、新たな被害想定や必要な防災対策を決める。 4月中に開かれた2回の会合では、減災目標の達成状況が議題になった。現行の被害想定で約33
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政治に関心 若者の輪を 政策立案コンテスト主催の学生団体所属/太田あかりさん(19)都内在住藤枝市出身【決める、未来 持続可能な街へ 私の願い➁】
3月中旬、東京都内のビルの一室で、大学生約30人が複数のテーブルに分かれ、国に求めたい政策を提案し合った。首都圏の学生でつくる団体「GEIL(ガイル)」が開く1泊2日の政策立案コンテスト。早稲田大の太田あかりさん(19)=藤枝市出身=は広報担当として運営を担った。「専門知識が不十分な学生も議論に入れるよう、スタッフが支える」と工夫を語る。 団体に入ったのは、入学直後に参加したイベントがきっかけ。「高校教員の働き方」をテーマに議論した際、高校生時の担任教員に仕事の大変さをメールで尋ねると、事務作業や部活動顧問の負担の重さを明かしてくれた。「国や自治体の政策も、市民の声を聴いて作るのかな」と興
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高級静岡茶で「茶宴」コース料理のお供提案 ワインボトル入り販売 神奈川の企業
ワインボトル入りの高級茶の製造販売を手がけるロイヤルブルーティージャパン(神奈川県茅ケ崎市)がこのほど、静岡茶の始祖とされる鎌倉時代の僧、聖一国師が生まれた静岡市葵区栃沢の手摘み茶を使った高級緑茶「きよみプレミアム」の販売を始めた。高級茶をコース料理と一緒に味わう食の様式「茶宴」を広め、茶の消費拡大につなげる。 茶葉を生産するのは栃沢で茶園を営む内野清己さん(64)。手摘みした「やぶきた」の茶葉を工場で時間をかけて水で抽出し、上品な甘みとこくのある味わいに仕上げる。内野さんは「今まで高齢者の顧客が中心だった。コース料理と茶を合わせる食文化の提案で、幅広い年齢層のファンを開拓できれば」と期待
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静鉄ストア最高賞 「エコアクション21」ソーシャル部門 食文化支える活動が評価
環境保全や社会課題解決につながる企業の取り組みを表彰する「エコアクション21 オブザイヤー2022」(一般財団法人持続性推進機構主催)の表彰式が25日、東京都内で開かれ、静鉄ストア(静岡市葵区)がソーシャル部門の最高賞の金賞を受賞した。 環境に配慮した企業活動にお墨付きを与える環境省の制度「エコアクション21」の認証事業所が表彰対象。環境経営レポート部門に71社、社会課題解決への取り組みを顕彰するソーシャル部門に24社の応募があった。 静鉄ストアは店舗でのフードバンク常設や食育推進事業「鉄板焼甲子園」といった活動が「地域の食文化を支えるビジョンが明確」と評価された。森下登志美社長が表彰状
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検察官抗告の禁止 「慎重に議論すべき」 法相【刑事司法と再審】
斎藤健法相は22日の閣議後記者会見で、検察官抗告を認めている現在の再審制度について「公益の代表者として当然のこと。違法、不当な再審開始決定を是正できなくなるので抗告権の排除は慎重に議論すべき」との認識を示した。 再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを巡っては、日本弁護士連合会が再審手続きの長期化の一因になっていると指摘し「冤罪(えんざい)被害者の救済を理念とする再審制度の趣旨に反するため禁止すべきだ」と制度改正を主張している。 東京高検が特別抗告を断念し、再審開始が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=について斎藤氏は「個別事件への所感は控える」と述べた。
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静岡人インタビュー「この人」 書籍「視覚障害者柔道の歴史-人物史を中心に-」を出版した 伊藤友治さん(浜松市西区)
小学2年の時に突然強度の弱視になった。雄踏中、浜松日体高、淑徳大で柔道に打ち込み、県内の盲学校教員になった後は指導者として柔道に関わった。視覚障害者柔道の歩みをまとめた書籍は初めて。点字出版などの桜雲会から発刊した。NPO法人日本視覚障害者柔道連盟副会長。73歳。 -書籍の内容は。 「明治時代から現代まで、視覚障害者柔道が日本国内でどのように始まり普及したのか、発展への課題は何かをまとめた」 -読みどころは。 「盲学校の校内日誌などを調べ、昭和初期に京都盲学校で教えていた記述を見つけた。昭和中期にリハビリテーションの観点から、欧州の影響を受けて普及したというのが従来の認識だが、戦前の
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袴田さん再審、20日抗告期限 公開法廷で主張尽くせ 「大崎事件」元裁判官・根本渉弁護士【最後の砦 刑事司法と再審】
強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた東京高裁決定は、20日に抗告期限を迎える。再審制度の不備や不当を訴える声が法曹界を中心に一層強まる中、袴田さんと同様に審理が長期化している鹿児島県の「大崎事件」の再審請求審を裁判官時代に担当した根本渉弁護士(65)=第一東京弁護士会=が18日までに取材に応じ、「現在の制度は請求当事者にとって納得しがたい形になっている。ルールの整備が必要だ」との認識を示した。 日本弁護士連合会は請求審での検察官による不服申し立て禁止や証拠開示の制度化の必要性を主張している。 根本氏は、検察官の不服申し立てが禁止されれば、「
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ネコ版フードバンク始動 浜松の団体、多頭飼育の崩壊防止へ 余った餌、必要な飼い主に
浜松市の動物愛護団体「捨て犬!捨て猫!ゼロの会」が一般家庭で余った市販のキャットフードを募り、多頭飼育の飼い主や地域の野良ネコに餌を与えるボランティアに贈るネコ版フードバンクに取り組んでいる。支援をきっかけに、多頭飼育崩壊の未然防止につなげたり、飼い主のいないネコの不妊手術の協力を得たりする。 「フードにゃんド」と銘打った事業で、2月からキャットフードの受け付けを始めた。同団体は過去の多頭飼育崩壊した家庭の支援を通じ、社会からの孤立や生活困窮との関わりを実感した。餌代の負担軽減とともに、早期に飼い主から助けを求められるような信頼関係を築き、飼育放棄による野良ネコの繁殖や殺処分を防ぐ。 「
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再審の証拠開示制度 法相「慎重な検討必要」
斎藤健法相は14日の閣議後記者会見で、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた13日の東京高裁決定に関連し、再審請求審での証拠開示の制度化は過去の法制審議会での議論を踏まえ「慎重に検討する必要がある」との認識を示した。 再審請求審での証拠開示を巡っては、刑事訴訟法に具体的な手続きが規定されておらず、担当裁判官の姿勢次第で格差が生じているとの批判がある。 斎藤氏は、2011年から3年間にわたって刑事司法制度の在り方が話し合われた法制審議会特別部会の議論を挙げ、再審請求審の証拠開示の制度化は通常審との手続き構造の違いから「一般的なルールを設けるのは
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再審の証拠開示制度 斎藤法相「慎重な検討必要」
斎藤健法相は14日の閣議後記者会見で、強盗殺人罪などで死刑判決が確定した袴田巌さん(87)=浜松市中区=の再審請求を認めた13日の東京高裁決定に関連し、再審請求審での証拠開示の制度化は過去の法制審議会での議論を踏まえ「慎重に検討する必要がある」との認識を示した。 再審請求審での証拠開示を巡っては、刑事訴訟法に具体的な手続きが規定されておらず、担当裁判官の姿勢次第で格差が生じているとの批判がある。 斎藤氏は、2011年から3年間にわたって刑事司法制度の在り方が話し合われた法制審議会特別部会の議論を挙げ、再審請求審の証拠開示の制度化は通常審との手続き構造の違いから「一般的なルールを設けるのは
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「この日を待っていた」袴田さん姉ひで子さん涙 無実信じ57年
一度は閉ざされた重い扉が再び開いた。東京高裁が13日、袴田巌さん(87)の再審開始を認めた。袴田さんの逮捕から57年間、無実を信じ続けた姉のひで子さん(90)は目頭を押さえ、「この日を待っていた」と声を震わせた。一方、検察が最高裁に特別抗告する可能性もあり、支援者はさらなる長期化を危惧する。 雨が打ち付ける中、正午ごろから高裁正門前には支援者や報道陣計約150人が集まった。雨がやんだ午後2時2分、高裁から正門に小走りで駆けてきた弁護団の2人が「再審開始」「検察の抗告棄却」の垂れ幕を掲げると、支援者から拍手と歓声が起こった。続いて、弁護団の小川秀世事務局長と庁舎から出てきたひで子さんは支援
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記者コラム「清流」 「平穏な一日を」
言霊を信じるだろうか。古代日本では、言葉には霊力があり、発した内容が現実になると信じられていたという。 記者になって10年間、取材の縁が切れなかった警察組織は、験を担ぐ人が多かった。警察署で「最近は事件事故が起きないですね」と軽口をたたくと、「そんなことを言うもんじゃない」と一喝されたり、「記事になる事案がなくてすみませんね」と嫌みを返されたりしたこともあった。 ひとたび事件や事故が発生すれば、昼夜問わず対応に当たる。緊張感に満ち、験を担ぎたくもなるだろう。地域を守る警察官に敬意を表したい。 この春で警察取材から少し離れることになるが、微力ながら県民の安心安全を願って毎朝声に出すことに
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視覚障害者柔道の歴史一冊に 連盟副会長の伊藤さん 浜松市西区
NPO法人日本視覚障害者柔道連盟副会長の伊藤友治さん(73)=浜松市西区=がこのほど、書籍「視覚障害者柔道の歴史-人物史を中心に-」(2022年、社会福祉法人桜雲会)を出版した。明治期から2021年東京パラリンピックまでの視覚障害者柔道の歩みをまとめた初めての通史。 伊藤さんによると、視覚障害者柔道はこれまで、リハビリテーションの観点からフランスを中心とした欧州で生まれ、昭和中期に日本に入って普及したというのが定説だった。しかし、戦前の校務日誌や点字新聞を精査すると、京都盲学校で1930(昭和5)年に柔道を教え始めたとの事実が明らかになり、書籍にまとめた。 伊藤さんは「視覚障害者でも健常
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海保ヘリ 離着陸訓練 遠州灘で救助想定、浜松市消防局と連携
浜松市消防局と海上保安庁は24日、遠州灘での水難事故や自然災害での救助対応を想定した海保のヘリコプターの離着陸訓練を同市南区の遠州灘海浜公園凧(たこ)揚げ会場で初めて実施した。1月に市消防局と御前崎海上保安署が締結した覚書に基づき、救助ヘリが離着陸する際の手順を確認した。 訓練は、要救助者を助けた海保のヘリが公園に着陸し、市消防局の救急隊に引き渡すとの想定で進めた。同庁第3管区海上保安本部のヘリが羽田航空基地(東京都)を出発し、大規模災害時に関係機関が使う防災相互通信用無線で、公園で待機する市消防局と連絡を取りながら着陸した。 砂ぼこりを巻き上げて着陸するヘリに公園利用者が近づかないよう
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大名統治に菓子の力 「食」通じ徳川政権学ぶ 浜松市中区で講演会
食を通じて徳川家康や徳川政権への理解を深める講演会「家康好みを浜松食材で探る」(浜松市主催)が22日、同市中区のホテルで開かれた。静岡文化芸術大文化・芸術研究センターの宮崎千穂准教授が講演し、菓子にまつわる江戸幕府の儀式が統治の上で果たした役割などを説明した。 江戸城で大名にまんじゅうなどの菓子を振る舞う「嘉定(かじょう)」や、将軍が自ら大名に餅を手渡していたわる「玄猪(げんちょ)」といった年中行事の様子を、浮世絵や史料を踏まえて紹介した。 大名の格に応じて席次や菓子を受け取る順番が異なるなど、儀式によって「将軍の権威化と家臣の序列化が進んだ」と指摘。菓子の力が将軍と大名の仲をつないだだ
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記者コラム「清流」 命救った生徒の勇気
浜松市西区の女子高生(18)が昨年末、畑で倒れている高齢女性を見つけて119番し、保護に結びつけた。女性は認知症の疑いがあり、前日に行方不明になっていた。発見が遅れたら、命に関わる事態になったかもしれない。 認知症など行方不明者の早期発見のため、浜松市を含む県内の多くの市町が徘徊(はいかい)のおそれのある人を事前に登録し、履物に番号のシールを貼るオレンジシール事業を進める。市内では昨年12月末時点で、935人が登録されている。 優れた仕組みでも、大切なのは市民の協力だ。女子生徒は女性を見つけた当時の心境を「怖かったけど、思い切って声を掛けた」と振り返る。トラブルを嫌い、声かけがためらわれ
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浜松城北工高講師 飯尾さん 環境教育で脱炭素貢献賞
浜松市中区の浜松城北工高の講師飯尾美行さん(69)がこのほど、環境省の第5回環境カウンセラー環境保全活動表彰で脱炭素社会貢献賞を受賞した。「地球にやさしいエンジニア」の育成を掲げ、同校で約30年間にわたって推進する環境教育が評価された。 同校の環境教育は1991年、地球環境問題への世界的な関心の高まりを受けて始まった。飯尾さんは教諭時代の95年に環境部を同校につくり、毎年のように生徒と中田島砂丘(南区)や浜名湖で清掃に取り組む。環境ボランティア活動を卒業単位として認定する仕組みを県内で先駆けて整えた。 環境に配慮したもの作りの国際規格「環境マネジメントシステム(ISO14001)」の生徒
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保育士の就職サポート 浜松市中区でフェア 採用予定など相談
静岡県や県社会福祉協議会は28日、潜在保育士の職場復帰や保育士を目指す学生の就職活動を支援する「保育のお仕事フェア」を浜松市中区のアクトシティ浜松で開いた。学生や社会人計37人が保育園の担当者から施設概要や採用予定を聞いた。 県西部で保育園などを運営する21法人が個別面談ブースを構えた。岡崎女子大3年の太田瑞菜さん(西区出身)は「業務のデジタル化がどれくらい進んでいるのかなど、働き方を想像できるよう具体的な情報を聞きたい」と話した。 アカペラグループ「RAG FAIR」の元メンバーで保育士のおくむら政佳さんによるセミナーもあった。
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浜名湖ならではの観光は 浜松商高生がプラン 交通の課題も指摘
浜松市中区の浜松商高の3年生が26日、観光マーケティング研究の授業の中で作成した浜名湖周辺の観光プランを同校で発表した。浜名湖地域の特性や課題を踏まえた「ならではプラン」をテーマに、歴史文化や自然、食の魅力を盛り込んだツアー案を提示した。 生徒52人が15班に分かれ、これまでに市観光・シティプロモーション課や旅行会社のJTB浜松支店から、浜名湖地域の観光の現状を学んだ。各班はプラン作成にあたり、地域の誘客上の強みと弱みを整理し、ターゲット層を設定した。 奥浜名湖地域のミカン農園やうなぎ料理店を巡るツアーを考えた班は、市内の公共交通機関の利便性に課題があると指摘し、JR浜松駅周辺のレンタカ
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心の垣根越えるアートの力紹介 東京芸術大学長が講演 浜松・中区
浜松市中区の認定NPO法人クリエイティブサポートレッツはこのほど、東京芸術大の日比野克彦学長の講演などを通じて共生社会や障害者の学習支援の在り方を考えるイベント「ともにいるだけで学びになる~福祉とアートの現場から~」を同区の市福祉交流センターで開いた。 日比野学長は、芸術家と福祉施設の利用者らが交流を重ねて作品を生み出す「TURN(ターン)」プロジェクトを紹介した。多様な参加者が共同で制作活動に取り組むうちに「障害の有無や地域性といった垣根がなくなっていった」と、共生を促進するアートの可能性に言及した。 同法人が2022年度に受託した、障害者の生涯学習機会の創出を目指す文部科学省の事業の