紙面編集部 遠藤竜哉
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音楽の都ウィーンから「ワクワク」を バイオリニスト中村真紀子さん(富士出身)
音楽の都、オーストリア・ウィーンで、現地オーケストラの一員として劇場文化を支えている日本人女性がいる。富士市出身のバイオリニスト中村真紀子さん。夏季帰省に合わせて、ウィーンでの暮らしや演奏活動などについて聞いた。 中村さんが所属するのは、世界屈指の劇場とされる「ウィーン・フォルクスオーパー」の専属管弦楽団。「国民劇場」と訳され、代名詞となっているオペレッタ、オペラのほかに、バレエやミュージカルの公演などを行っている。国立歌劇場と並ぶ、ウィーンを代表する劇場だ。 静岡県学生音楽コンクールで第1位を獲得し、東京芸術大付属高を経て同大を卒業。ウィーン国立音大留学中だった2005年に同管弦楽団に
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記者コラム「清流」 “生きた”水族館がある幸せ
静岡県内博物館などの収蔵品を紹介する特集の取材で「三保の水族館」として親しまれる東海大海洋科学博物館を訪れた。愛らしい魚の姿、海の中にいるような青々とした世界観。それだけで幸せだった。 人に安らぎや喜びを提供するだけではない。水族館は、科学者が価値ある探究を学術の域まで深める研究機関である。また、生物が懸命に生きる“命の現場”でもある。命の輝きこそ、水族館が持つ魅力の神髄ではないかと思う。 一方、生体展示に要するコストや関係者の苦労は並大抵ではないだろう。東海大の水族館は本年度で通常の一般公開を終え、研究に軸を移す。 この水族館に育てられた大人はたくさんいる。こ
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夢は「藤枝まるごと劇場化」 4、5日に演劇祭 山田裕幸ディレクター
藤枝市の蓮華寺池公園周辺や地元商店街を舞台に4、5の両日、昨年に続き2回目の「藤枝ノ演劇祭」が開かれる。フェスティバルディレクターの山田裕幸(劇作家、演出家)に企画の背景を語ってもらった。 東京で長年活動してきた。年齢を重ねる中で、地域に根ざした演劇祭を実現したいとの思いを抱き2017年、出身地である焼津市の隣、藤枝市に劇団ごと引っ越してきた。 公演会場兼稽古場である「白子ノ劇場」の周辺が演劇祭に適した環境で幸運だった。蓮華寺池公園と複数の商店街が一つのエリアにまとまり、歴史と文化がある。行政の支援もあり、地元のライターや学校の先生などいろいろな方が集まった。 演劇を通して伝えたいの
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静岡人インタビュー「この人」 サックバットの魅力を伝える 小野和将さん(浜松市中区)
現在広く演奏されている金管楽器トロンボーンの“先祖”に当たる古楽器サックバットのプロ奏者。昨秋、静岡市駿河区のグランシップで披露されたバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のモーツァルト「レクイエム」公演に参加した。33歳。 -BCJ参加の経緯は。 「南西ドイツ放送交響楽団首席トロンボーン奏者、清水真弓さんに声を掛けてもらった。世界的なプレーヤーの集まりであるBCJでモーツァルトの最高傑作を演奏できたことは、大きな喜びだった」 -どのような楽器か。 「17世紀前半を中心に、教会で聖歌隊を補助する役割を担った。人の声に近く、歌のニュアンスに寄せやすい。今回のBC
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歴史観光情報満載 「若い人も手に取って」 静岡県が協力、ムック完成
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」「どうする家康」で静岡県内の文化資源に注目が集まる中、歴史を楽しむための基礎知識や最新の観光情報などを案内するムック「武将と旅する 静岡・浜松・富士・伊豆」(交通新聞社)がこのほど発売された。県から出版社に働きかけ、観光と歴史の両部局が編集に協力した。 徳川家康と9人の武将らのゆかりの地を紹介し、訪問しやすい観光スポットやグルメ情報、モデルコースを列挙。「観光雑誌だが史実に忠実、それでいて固くない」絶妙なバランスを目指した。 取り上げたのは、家康のほか、井伊直政、今川義元、武田信玄、源頼朝、北条義時、北条早雲、徳川慶喜、吉田松陰、坂本龍馬。縁のある場所が多い家
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静岡まつり 御台所役に大石さん(清水区)「見ている人笑顔に」
静岡まつり実行委は12日、3月31日~4月2日に静岡市中心部で開く同まつりの主要行事「大御所花見行列」に参加する御台所(みだいどころ、徳川家康の正室)役などの選考会を同市駿河区のグランシップで開いた。御台所役に清水区の大学生大石萌生さん(19)を選出した。 御台所と行列を共にする奥女中の最高位の上﨟(じょうろう)役には、葵区の長橋真鈴さん(25)と、駿河区の望月愛弓さん(28)を選んだ。 花見行列は大御所の家康が家臣を引き連れて花見をした故事にちなむ。時代装束姿の市民らが旧駿府城下を練り歩く。御台所と上﨟役は華やかな着物に身を包み盛り上げる。 大石さんは「毎年観客として楽しみにしている
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静岡市歴史博物館 来館10万人、7カ月で突破 桜井さん親子に記念品
静岡市歴史博物館は12日、来館10万人を記念した式典を同市葵区の同館で開いた。節目の来館者となった同区の会社員桜井祐次さん(47)と小学5年生の美命(みこと)さんの父娘に記念品を贈った。 昨年7月のプレオープンから約7カ月での達成。美命さんの歴史の勉強のために「ふらっと寄った」という桜井さん親子は今年1月の全面開館以降、初めての訪問。「私たちが10万人目と聞いてびっくりした。徳川家康が注目されているので、展示を充実しつつ地元の歴史をさらに紹介してほしい」と喜んだ。 桜井さん親子、中村羊一郎館長、田辺信宏市長らがくす玉を割った。中村館長は「市民の期待に添えるよう、あらゆる努力をする。将来に
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「語り芸」の魅力知って 人気浪曲師の玉川奈々福 23日、下田で親子向け公演
人気浪曲師の玉川奈々福が県文化財団(グランシップ)とタッグを組み、親子向けの出前公演「にっぽんこども劇場~浪曲わんだーらんど」を展開している。23日に下田市で開催する公演に先立ち、浪曲の魅力を語ってもらった。 落語にはなじみがあっても浪曲がどんな芸能か分からない、という人は多いと思う。落語は1人で行うのに対し、浪曲は語り手である浪曲師が、三味線を演奏する曲師と2人1組になって披露する。 グランシップの企画では浪曲を子どもにも分かりやすいように工夫して発信する。題材はシンデレラ。誰もが知る西洋の童話だが、古典的な浪曲のフォーマットに落とし込んである。話の筋を追いながら浪曲がどんな芸なのか理
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不条理と暴力、詩人の愛憎劇 「天上の花」 片嶋一貴監督
詩人萩原朔太郎(1886~1942年)の没後80年に合わせて昨年12月から各地で上映が続く映画「天上の花」は、朔太郎の娘、葉子の同名小説が原作。朔太郎を師と仰ぐ三好達治と朔太郎の末妹の愛憎劇だ。暴力的なシーンにどきりとするが、片嶋一貴監督は「太平洋戦争下で社会が閉塞[へいそく]し、個人がストレスをためる様子は新型コロナ禍に通じる」と指摘する。 昭和初期。東出昌大が演じる達治は朔太郎の末妹の慶子(入山法子)と出会い、恋に落ちる。結婚を認めてもらうために出版社に就職するが、倒産。失意の中、見合い結婚をする。 日本はきな臭い時代へと進む。達治は戦争を賛美する詩を精力的に作り名を上げる。朔太郎の
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深海生物の標本群 東海大海洋科学博物館【美と快と-収蔵品物語㊿】
駿河湾に面する三保半島の先端近くで、半世紀にわたって「三保の水族館」として愛され、本年度で通常の公開を終了する東海大海洋科学博物館(静岡市清水区)。展示の目玉の一つが、2010年7月に開館40周年記念として設置された「深海生物の標本群」だ。40年間に駿河湾を中心に採集された魚類や無脊椎動物を一堂に紹介している。 生物の多様性伝える 計157種のホルマリン液浸標本を展示している「深海生物の標本群」の全体像 魚類115種、無脊椎動物42種、計157種のホルマリン液浸標本を展示している。最小の約3センチ(テンガンムネエソ)から最大の約120センチ(ミツクリザメ)までサイズは多様。駿河湾の
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大的射抜き観客拍手 静岡浅間神社で新春恒例の神事
平安時代、朝廷で行われた神事に倣い、天下太平や除災招福を祈念し矢を放つ新春恒例の「奉射祭(ぶしゃさい)・大的式(おおまとしき)」が15日、静岡市葵区の静岡浅間神社で行われた。 同神社で研さんを積む弓道教場の会員が烏帽子(えぼし)と直垂(ひたたれ)をまとい神事に臨んだ。6人の射手が2人一組になり、約60メートル先の直径約1・5メートルの大的を目がけ、交互に2本ずつ計12本の矢を放った。的に命中すると見物客から拍手が起こった。 射手を務めた長嶋恵子さん(71)は「戦争のない世界と新型コロナウイルスの終息を祈った」と述べた。
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記者コラム「清流」 指揮者に見るリーダー像
オーケストラの指揮者にはいろいろなタイプがいる。苛烈な統率力で楽団員を震え上がらせるトスカニーニ型、聖人が教え諭すようなワルター型、フットボールの友情的コーチングを見るようなバーンスタイン型、民主的に主体性を引き出すアバド型などだ。 昨年末静岡フィルに客演しマーラーの交響曲などを演奏した世界的指揮者、小林研一郎さん(82)の稽古風景を見学した。作品を熟知し音楽的目標を明確にしながら奏者に敬意を払い厳しくも温かく導いた。とても勉強になった。 混迷する世界である。音楽界では戦前風のトスカニーニやワルター型はほぼ絶滅。米国から欧州に乗り込んだバーンスタインや冷戦後を象徴したアバドももういない。
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大盤解説に静岡県内外から700人 掛川で王将戦 神谷八段ら登壇
掛川市で将棋の王将戦7番勝負第1局が行われた8、9の両日、同市の大日本報徳社大講堂では大盤解説会が開かれた。サテライト会場を含め、両日で県内外の約700人のファンが固唾(かたず)をのんで勝負を見守った。 立会人の久保利明九段(47)や副立会人の神谷広志八段(61)=浜松市中区=、八代弥七段(28)=東伊豆町出身=らが登壇し、藤井聡太王将(20)と羽生善治九段(52)の対局の様子を説明した。 次の一手を予想するクイズもあり、抽選で選ばれた来場者にプロ棋士が揮毫(きごう)した色紙や掛川産トマトなどが贈られた。
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映画「えんとこの歌」追悼上映会、静岡で11日に 寝たきりの歌人・遠藤滋さん(旧清水市出身)が主人公
寝たきりの歌人として知られ今年5月に74歳で亡くなった遠藤滋さん(旧清水市出身)を主人公にした伊勢真一監督の映画「えんとこの歌」の上映会とトークイベントが11日、静岡市葵区の静岡シネ・ギャラリーで開かれる。遠藤さんを追悼するとともに、唯一の歌集「いのちゆいのちへ」の刊行1周年を記念して、その人生を振り返る。 学生時代からの友人でもある伊勢監督は1999年、遠藤さんと介護者の日々を追ったドキュメンタリー映画「えんとこ」を公開した。「えんとこの歌」は、2016年に相模原市の知的障害者施設で入所者らが元職員に殺傷された事件に衝撃を受け、50代から短歌を詠むようになった遠藤さんを改めて取材した続編
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静フィル、名指揮者・小林研一郎さんと共演 20年ぶり「巨人」演奏へ
静岡市民らでつくる静岡フィルハーモニー管弦楽団(静フィル)が27日、同市葵区の市民文化会館大ホールで創立45周年記念演奏会(静岡新聞社・静岡放送後援)を開く。日本を代表する指揮者小林研一郎さんと共演し、20年ぶりの演奏となるマーラーの交響曲第1番やグリーグのピアノ協奏曲を披露する。 小林さんとの共演は創立25周年、35周年記念演奏会に続く3度目。「巨人」の副題を持つマーラーの交響曲第1番は25周年記念でも演奏した大曲だ。ピアノ協奏曲では小林さんの長女で国内外で活躍する小林亜矢乃さんがソロを務める。 22日夜に市民文化会館で行われた交響曲の稽古では団員約100人が小林さんの指揮の下、弦楽器
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脱炭素へ取り組み発表 静岡市内の高校生ら フードロス工夫提案も
静岡市内の高校生や大学生が脱炭素に向けた取り組みなどを披露する「ゼロカーボン提案発表会」(同市主催)が19日、清水区の静清信用金庫草薙研修センターで開かれた。 同日、静岡鉄道としずてつジャストラインが静鉄電車・路線バスを終日無料にして公共交通機関利用を呼びかけるなどした「クールチョイス2022 in しずおか」の関連企画。同社の関係者ら約80人が耳を傾けた。 清水桜が丘、静岡市立、駿河総合、城南静岡、静岡サレジオの5高校のほか、静岡大や県立大などの学生らでつくる3グループが参加した。城南静岡高のチームは、食品の保存方法やレシピの工夫といった、日常生活の中でフードロスを防ぐ取り組みを紹介。
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バッハ♪オルガン作品全曲演奏 大木麻理(静岡出身)、リサイタルで“走破”計画
気鋭の若手オルガニストとして活躍の場を広げている大木麻理=静岡市出身=がJ・S・バッハ(1685~1750年)のオルガン作品全曲演奏に取り組んでいる。200曲以上にも及ぶオルガン曲を毎年1回、計14回のリサイタルで“走破”する計画。昨年に続き2回目となるリサイタルを20日、静岡音楽館AOI(同市葵区)で開催する。 「両親との別れ、そしてバッハの旅立ち」と題する演奏会。曲目の中心となるのは、20歳前後のバッハが初めて本格的に作曲を始めたとされるドイツ中部アルンシュタットでの作品。大木は「幼くして両親を亡くした悲しい経験を乗り越え、音楽家として独り立ちするバッハの&ld
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統一感と個性40編 「しずおか連詩の会」グランシップで発表会
「2022年しずおか連詩の会」(県文化財団、県主催、静岡新聞社・静岡放送共催)の発表会が6日、静岡市駿河区のグランシップで開かれた。まとめ役の詩人野村喜和夫さん、詩人の暁方ミセイさん、作家でフランス文学者の堀江敏幸さん、細胞生物学者でもある詩人の田中庸介さん、若手歌人のホープ木下龍也さんが、200人以上の来場者を前に、5日までに創作した全40編の連詩「『光を塗りかえる』の巻」を朗読、解説した。 完成した詩の一つ一つを作者本人がリレー形式で読み上げた。それぞれの詩に込めた思いや背景を解説し、実際の会話や創作会場の雰囲気を振り返った。 6年ぶりの参加で第1詩を担当した暁方さんは「それぞれジャ
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妖艶な異世界表出 しずおか連詩の会 全40編「『光を塗りかえる』の巻」完成 静岡・グランシップ
「2022年しずおか連詩の会」(静岡県文化財団、県主催、静岡新聞社・静岡放送共催)は5日、静岡市駿河区のグランシップで3日目の創作が行われ、全40編の「『光を塗りかえる』の巻」を完成させた。一線で活躍する詩人、作家、歌人ら5人が5行詩と3行詩をリレー形式で繰り返し、妖艶で不穏な異世界を表出させた。作品を朗読、解説する発表会は、6日午後2時からグランシップ11階の会議ホール・風で行う。 参加者は本紙読者文芸選者で詩人の野村喜和夫さん、詩人の暁方ミセイさん、作家でフランス文学者の堀江敏幸さん、細胞生物学者でもある詩人の田中庸介さん、若手歌人のホープ木下龍也さん。前日までに完成した26編に続き、
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静岡人インタビュー「この人」 全国アマチュアオーケストラフェスティバル 静岡大会の実行委員長を務めた 佐々木智子さん(静岡市駿河区)
9月に静岡市駿河区のグランシップで開かれたフェスで、300人のアマチュア奏者による演奏を成功させた運営サイドの“立役者”。県内で10年ぶりの開催となった今回、大会は50回の節目を迎えた。静岡フィルハーモニー管弦楽団副理事長、サブコンサートマスター。49歳。 -静岡フィルの役割は。 「ホスト楽団として参加者をもてなすことに徹した。広上淳一先生の指揮で大曲を演奏したいと全国から集まった方々が集中できるよう、休憩コーナーでいつでも冷たい静岡茶を飲めるようにしたり、参加者の要望や困り事を聞く担当を配置したりして、最大限環境を整えた」 -苦労もあったのでは。 「一昨年の