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朝のデスクおすすめ 4月2日

 おはようございます。静岡県内、春らしい陽気が続いていますね。この「知っとこ」のコーナーではきょうも日中4回、さまざまな切り口から記事まとめをお届けします。この時間は今朝公開した記事の中から、私がぜひお読みいただきたいと思う記事をまとめてご紹介します。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・村松響子〉

「頑張れよ」「負けるなよ」15歳、初島の船出 島民が港でエール

 静岡県内唯一の有人島、熱海市初島の初島中を今春卒業した田中南さん(15)が1日、三島市の高校に進学するため島を出発した。初島港には下級生や教職員、幼い頃から成長を見守ってきた多くの島民が集まり、夢に向かって一歩を踏み出した田中さんにエールを送った。

島民の声援に手を振って応える田中南さん=1日午後、熱海市の初島港
島民の声援に手を振って応える田中南さん=1日午後、熱海市の初島港
 進学先の日大三島高の制服を着て両親と定期船に乗り込んだ田中さんに、島民は「頑張れよ」「負けるなよ」と声援を送った。
 出港時刻になり船が岸壁を離れると、下級生らは堤防の突端まで追いかけて別れを惜しんだ。田中さんは目を潤ませながら「ありがとう」と応え、島民の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
 初島中からの卒業生は2年ぶり。小中学校の9年間、同学年がいない環境で学校生活を送った田中さんは「たくさんのクラスメートと授業を受けるのが楽しみ」と語り、「将来は声優になりたい。放送部に入って朗読やアナウンスの力を磨きたい」と目を輝かせた。
 初島では、進学などで島を離れる生徒を島民が見送る行事が数十年前から続いていて、親子で経験した家庭も多いという。

入社式、新スタイルで 静岡県内企業、オンライン/分散/PCR

 新年度の1日、静岡県内企業が実施した入社式は、オンラインを活用した会場の分散やPCR検査の事前実施など、新型コロナウイルス感染症対策に配慮した新スタイルの式典で顔合わせの場を設け、経営トップらが期待の言葉を投げ掛けた。

明電舎が沼津市内に会場を移して開催した本社採用者の入社式=1日午前
明電舎が沼津市内に会場を移して開催した本社採用者の入社式=1日午前
 TOKAIグループは、静岡市葵区の会場と県内外の事業所19拠点をテレビ会議システムでつなぎ、分散形式で開催した。会場には新入社員125人の代表13人が出席し、大型スクリーンにオンライン出席者の映像を映し出して一体感を出した。
 大卒と高卒合わせて188人が入社したヤマハ発動機は前年と同様、全員での式は行わず、磐田市の本社で複数の部屋に分かれ、オンラインで日高祥博社長の訓示を聞いた。全新入社員には2週間前から検温や体調、行動の記録、同居家族の健康状態などの報告を求めたという。595人が入社したスズキも浜松市南区の本社のほか、オンラインも使って複数の寮や工場で分散開催した。
 大勢が集う会場での感染リスクを避けるため、式典前にPCR検査を取り入れる企業も目立った。河合楽器製作所は新入社員21人にPCR検査キットを事前配布して、陰性を確認。昨年は規模を縮小した上で社外で式典を行ったが、今年はコロナ前まで例年実施していた浜松市中区の本社内に会場を戻した。清水銀行グループや鈴与もPCR検査を事前に実施して陰性を確認した上で、対面形式で行った。
 明電舎は、例年都内で実施していた本社採用者73人の入社式を沼津市に変更した。首都圏の感染者数が高止まりしている現状を踏まえ、新入社員らの研修施設を有する同市に初めて会場を移した。明電舎の新入社員、山田智子さん(22)=静岡大卒=は「就職活動はオンラインが多く、会社に足を運ぶこともほとんどできなかったので、対面での入社式に臨めてうれしい。一日も早く自立して、社会に貢献したい」と意気込んだ。

「総額表示」義務化スタート 静岡県内の小売店、値札など新様式に変更

 商品やサービスの価格を消費税込みで値札・メニューに示す「総額表示」が1日から義務付けられ、税抜き価格のみを表示していた県内の小売りや飲食の各店は値札などの様式変更を進めた。「支払額が分かりやすい」。消費者から歓迎の声が上がった一方、店側は新型コロナ禍で景気の先行きが不透明な中、新表示が割高に映って買い控えられないよう税込みと税抜きを並べて記す慎重な対応が目立った。

税抜きと税込み価格が表示された値札=1日午後、静岡市駿河区の田子重下川原店
税抜きと税込み価格が表示された値札=1日午後、静岡市駿河区の田子重下川原店
 30年以上前から税抜きのみの表示だった食品スーパーの田子重(焼津市)。義務化を機に紙の値札に税込みと税抜きを併記し、長年の様式を改めた。新様式は値上がり感を抱かせない配慮から税抜きを大きめ、税込みを小さめに工夫。税込み100円超の菓子をかごに入れた買い物客は「今まで90円台だった品物が割高に見えると手を伸ばしにくくなる」。一方、「買い物額を暗算しやすくて便利になった」と好意的な声も多く聞かれた。
 パソコン・周辺機器販売店OAナガシマを展開するZOA(沼津市)も値上げでないことを伝えようと税込みと税抜きを併記した。ただオンラインショップ(通信販売)はシンプルに税込みのみ。担当者は「今後販売に影響が出れば、値下げを検討するかも」と明かす。
 「ただでさえコロナ禍で大変なのに作業が増えた」とは浜松市中区のかたやま酒店店主の片山克哉さん(65)。店頭の酒1点ごとに掲出していた税抜き価格と味の特徴を紹介する手作りラベルに、総額表示の値札を貼り付ける作業に追われた。片山さんは「時期をずらす配慮があっても」と不満を漏らす。
 沼津港の鮮魚料理店「さかなや千本一」は3月初旬から、約300部のメニュー表を税抜きと税込みの併記に作り替えてきたが一部が間に合わず、従来の表に直筆で総額を書き加えた。浜松市中区の飲食店「はせがわ」は3月下旬にメニュー表を一新。値下げした料理も多数あるという。店長の長谷川浩さん(48)は「人気料理を強化し、新メニューを導入する良い機会になった」と前向きにとらえた。

初日は5組が宣誓 富士市、パートナーシップ宣誓制度スタート

 法律上の婚姻ができない同性カップルや事実婚の関係性を認める富士市の「パートナーシップ宣誓制度」が1日に始まった。静岡県内では浜松市に次ぎ2市目。初日に合わせて5組が宣誓書を提出して受領証を手にした。今後2組も提出を予定している。

宣誓書受領証を受け取り、小長井義正市長(中央)と記念撮影をする2組のカップルの代表者=1日午後、富士市役所
宣誓書受領証を受け取り、小長井義正市長(中央)と記念撮影をする2組のカップルの代表者=1日午後、富士市役所
 初日は、富士市役所で宣誓書受領証交付式が行われ、宣誓書提出予定者を含めた4組が出席した。小長井義正市長は「皆さんの願いを形にできた。制度はスタートしたがこれからが大事。誰もが生きづらさを感じない社会の実現に向け制度を拡充していく」と述べ、各カップルに受領証と記念の花を手渡した。
 2009年から共に生活し、受領第1号となったカップルは「順番にこだわりはなかったが、認められる社会になったことがうれしい。今後に希望が持てる」と喜んだ。パートナーの女性と式に出席したトランスジェンダーの山崎成さん(43)は「同じ住所で暮らしても(法律的には)他人の2人。もしもの時にパートナーがどうなるか不安だった。やっとみんなと一緒のスタートラインに立った」と感慨を語った。
 同制度は、互いがパートナーと認め合う2人が共同生活を約束した関係であるとの宣誓書を市に提出して宣誓すると、市が受領証を交付して公的に証明する。同市では市営住宅の申し込みや中央病院での手術・検査の同意代行、税証明交付申請などで法律上の夫婦と同様の対応が可能になる。県内では浜松市が2020年度に同制度を開始。富士市によると同日時点で少なくとも全国80以上の自治体が導入している。
地域再生大賞