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三遠南信道、完成いつ? 人口減少加速、焦る住民

 三遠南信自動車道約100キロ区間の建設促進と静岡、愛知、長野の県境域の交流連携を目指す第30回三遠南信サミットが24日、長野県飯田市で開かれます。サミットは30年近く開催されてきましたが、三遠南信道の全線開通時期は未定です。山間部で人口減少が加速する中、沿線からは「住民がいなくなってしまう」と焦りにも似た本音が漏れています。住民の声と工事の現状についてまとめました。

一体どこまで完成? 全長100キロのうち40キロ弱が開通

 三遠南信道は浜松市北区の新東名高速道浜松いなさジャンクションから、愛知県を経由し、長野県飯田市の中央自動車道飯田山本インターチェンジに至る南北約100キロを結ぶ計画の道路。国の整備区間と、市や県による現道改良区間がある。全線が開通すれば浜松―飯田間の所要時間が約2時間となる見通し。物流や観光など3県境域の経済面の活性化に加え、災害時の広域支援・連携や集落の孤立化防止の効果も期待される。

三遠南信道
三遠南信道
 三遠南信道はこれまでに、浜松いなさJCT(浜松市北区)―鳳来峡IC(愛知県新城市)間と東栄(同県東栄町)―佐久間川合IC(浜松市天竜区)間、長野県の飯田山本―飯田上久堅IC間の計40キロ弱が開通した。部分的に利便性が向上したが、未整備区間が長く、浜松―飯田間の所要時間が劇的に短縮したとは言いがたい。
 〈2022.10.22 あなたの静岡新聞〉

開通への期待と焦り交錯

 静岡県西部と愛知、長野県の39市町村が加盟する三遠南信地域連携ビジョン推進会議(SENA)は24日、第30回三遠南信サミットを長野県飯田市で開く。三遠南信自動車道約100キロ区間の建設促進と3県境域の交流連携を目指し、1994年からサミットを重ねてきたが、全線開通時期は未定。山間部で人口減少が加速する中、沿線からは「いつになったら完成するのか。住民がいなくなってしまう」と焦りにも似た本音が漏れる。

浜松市天竜区佐久間町と愛知県東栄町を結ぶ三遠南信自動車道佐久間道路の「佐久間川合インターチェンジ」付近=2019年2月23日午前、浜松市天竜区佐久間町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
浜松市天竜区佐久間町と愛知県東栄町を結ぶ三遠南信自動車道佐久間道路の「佐久間川合インターチェンジ」付近=2019年2月23日午前、浜松市天竜区佐久間町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 三遠南信道はこれまでに、浜松いなさJCT(浜松市北区)―鳳来峡IC(愛知県新城市)間と東栄(同県東栄町)―佐久間川合IC(浜松市天竜区)間、長野県の飯田山本―飯田上久堅IC間の計40キロ弱が開通した。部分的に利便性が向上したが、未整備区間が長く、浜松―飯田間の所要時間が劇的に短縮したとは言いがたい。
 沿線の一角、浜松市の北遠地区では特に開通への期待が大きい。天竜区佐久間地区自治会連合会の大見芳会長(69)は「他地域と医療、観光で連携が深まるはず」と展望する。
 佐久間では約10キロ離れた愛知県東栄町の病院に通う住民が多く、道路の改良は切実な問題だ。加えて、道路アクセスが向上すればイベントやキャンプの来訪者が増える可能性もある。過疎化は年々深刻さを増すだけに、大見さんは「タイミングが遅すぎる」と、遅々とした道路整備状況にいらだちを募らせる。
 同区水窪町の「スーパーまきうち」は市内の市場などで買い付ける刺し身が人気で、3月に開いたマグロのイベントでは広域から客が集まった。牧内基社長(43)は三遠南信道が全通すれば、「信州からも客を呼び込めるかもしれない」と語る。
 SENAは産業振興や防災、移住促進など広域連携による約80のプロジェクトを進めている。事務局の浜松市企画課の担当者は「全線開通により、これまでの取り組みが本格的に効果を発揮する」と早期完成を切望する。
 〈2022.10.22 あなたの静岡新聞〉

工事の最難関は? 青崩峠トンネル工事 脆弱な岩盤との戦い

 浜松市と長野県飯田市を結ぶ三遠南信自動車道の建設で、最難関工事とされる県境の青崩峠トンネル(4998メートル)の本坑工事が進んでいる。本坑は2018年、先行の調査坑に続いて工事が始まった。工期は23年3月までの予定。日本を二分する大断層帯「中央構造線」沿いの複雑で、ぜい弱な岩盤との戦いが続いている。

掘削が進む青崩峠トンネル=浜松市天竜区水窪町
掘削が進む青崩峠トンネル=浜松市天竜区水窪町
 現場周辺は中央構造線に沿って谷が形成され、青崩峠は国道152号の通行不能区間になっている。工事は本県側(仮称・池島トンネル)と長野県側(同小嵐トンネル)の両側から進み、既に約3500メートルを掘り進めた。先端部では最新の掘削機械が活躍する。
​ 〈2021.12.7 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞