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浜松新野球場 結局いくらかかるの? 規模や構造で割れる意見

 浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区に静岡県が整備する新野球場。県議会最大会派の自民改革会議と浜松市経済界や鈴木康友市長との間で、球場の規模や構造を巡って意見が分かれています。今回六つの案で80億~370億円となることが分かった概算事業費の内容を中心に、新野球場の建設に向けた動きをまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 渡部遥介〉

概算事業費最大370億円 2万2千人収容ドーム球場の場合

 静岡県が浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区に整備する新野球場の概算事業費を80億~370億円と見積もったことが21日、関係者への取材で分かった。球場全体を覆うドーム構造を採用し、収容人数をプロ野球の試合が年数回開催できる2万2千人規模にした場合に最も高額となる。野球場を含む公園全体の概算事業費は最大500億円超に膨らむことも判明した。

県がまとめた新野球場の概算事業費
県がまとめた新野球場の概算事業費
 県が概算事業費を取りまとめたのは規模や構造が異なる6案。規模は草薙球場相当(2万2千人)と愛鷹球場相当(1万3千人)の2案、構造はドーム球場、スタジアム球場で外野スタンドがコンクリート構造と盛り土構造の3案を比較検討した。
 1万3千人規模のドームは290億円、2万2千人規模で外野スタンドをコンクリート構造にした場合は210億円。最も事業費を抑えられるのは1万3千人規模で外野スタンドを盛り土構造にしたケースで80億円だった。
 年間の球場利用者数は7万~13万人、年間の経済波及効果は3億~21億円、大規模修繕費を含む年間の維持管理費は1億~5億円と想定。いずれも2万2千人規模のドームが6案の中で最大だった。
 県は10月5日の県議会建設委員会で、アカウミガメに関する環境影響調査の結果とともに概算事業費を公表する。12月に案を絞り込み、パブリックコメント(意見公募)を経て年度内に基本計画を策定する方針。
 新野球場を巡っては、県議会最大会派の自民改革会議が昨年、高校野球県大会が開催可能で一般市民が使いやすい規模とするよう県に提言。一方、浜松市経済界や鈴木康友市長は今年8月に川勝平太知事を相次いで訪ね、プロ野球が開催できる2万2千人以上の規模と全天候型ドームを求めた。
 〈2022.9.22 あなたの静岡新聞〉

地元の鈴木康友浜松市長「全天候型ドームタイプ」要望 

 浜松市の鈴木康友市長は22日、県庁に川勝平太知事を訪ね、同市西区の遠州灘海浜公園篠原地区への新野球場整備を求める要望書を提出した。構造については、市内経済界と足並みをそろえ「全天候型ドームタイプ」を要望。多額のコストなどを理由に市内外で反対論もある中、鈴木市長は「経済界と連携して取り組んでいる。オール浜松で機運を醸成したい」と述べ、ドーム型野球場の建設を強く求めた。

川勝平太知事(左)に遠州灘海浜公園篠原地区への野球場整備を要望する鈴木康友浜松市長=22日午後、県庁
川勝平太知事(左)に遠州灘海浜公園篠原地区への野球場整備を要望する鈴木康友浜松市長=22日午後、県庁
 鈴木市長はプロ野球が開催できる2万2千人以上の規模と、天候に左右されずにコンサートなど幅広いイベントが開催可能な全天候型ドームタイプを要望した。ドームにすることで、夜間照明による生態への影響が懸念されるアカウミガメなど自然環境との共生や、集客イベントによるにぎわいの創出にもつながると強調した。
 川勝知事は「中途半端なものにならない方がいい。要望にできる限り沿いたい」と述べ、年内にまとめる基本計画案への反映に前向きな姿勢を示した。
 県は9月に野球場の規模や構造別に、建設費や維持管理費、経済波及効果なども含めた複数の全体事業費を県議会に提示し、12月に基本計画案を公表する見通しを明らかにしている。
 〈2022.8.23 あなたの静岡新聞〉

県議会最大会派の自民は「高校野球規模に」

 浜松市西区の遠州灘海浜公園篠原地区に整備される新野球場について、県議会最大会派の自民改革会議は16日、高校野球県大会が開催可能で一般市民が使いやすい規模とするように求める提言を県に提出した。川勝平太知事はプロ野球を開催できる比較的大きな規模の球場を建設する意向を示しており、知事と自民の間で球場の規模を巡る考え方の違いが浮き彫りになった。

和田直隆交通基盤部長に提言書を手渡す野崎正蔵代表(右から3人目)=16日午後、県庁
和田直隆交通基盤部長に提言書を手渡す野崎正蔵代表(右から3人目)=16日午後、県庁
 鈴木利幸県議が座長を務める会派のプロジェクトチーム(PT)が提言を検討し、野崎正蔵代表らが県の和田直隆交通基盤部長に提言書を手渡した。「ニーズと建設費、維持管理費などのバランス」を考慮するとともに、予定地が海岸に近いため塩害や強風対策、夜間照明によるアカウミガメへの影響などに配慮するよう要請した。
 川勝知事は6月の知事選で「プロ野球を開催できる球場にしたい。津波の際に避難できるアルプススタンドを設けたい」と表明しているが、PTの聞き取りに県野球協会は青少年育成のための球場開設を求めたという。木内満政調会長は「前提になるのはプロ野球の開催や球団誘致ではない」と強調した。
 自民は川勝知事と過去にも対立し、県議会は2016年度当初予算案の基本計画策定事業費を減額修正した経緯がある。県は原案で観客数2万2千人の草薙球場と1万3千人の愛鷹球場の規模を例示。コロナ禍の財政状況を踏まえた計画に見直す作業を進めている。
 〈2021.8.17 あなたの静岡新聞〉
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