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安倍元首相死去「大きな柱失った」 静岡県からも哀悼の声

 8日午後、安倍晋三元首相が街頭演説中に襲撃され亡くなりました。心よりご冥福をお祈りいたします。衝撃的な事件を受け、静岡県内の関係者からも哀悼の声が上がっています。関連記事をまとめました。
 〈キュレーター:編集局未来戦略チーム 石岡美来〉

惜別、悔しさ、憤り 政党関係者の反応は

 安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され、死亡したことを受け8日、県内の政党関係者には安倍氏の功績をたたえて惜しむ声や、選挙演説中の襲撃という行為に対する憤りなど、さまざまな反応が広がった。

安倍晋三元首相の死去を受け、悲痛な思いを口にする自民党県連の良知淳行幹事長(中央)=8日午後、県庁
安倍晋三元首相の死去を受け、悲痛な思いを口にする自民党県連の良知淳行幹事長(中央)=8日午後、県庁
 自民党県連の良知淳行幹事長は「自民党を支えた大きな柱がなくなった」と悲痛な思いを口にした。安倍氏が党青年局長を務めた時から、20年以上の付き合いがあるといい、「悔しさと怒りを覚えた。法治国家、民主主義の日本であってはならない。決して許すわけにはいかない」と怒りをにじませた。
 公明党県本部の高田好浩幹事長は「残念でならない。民主主義に対する冒瀆(ぼうとく)であり、こうした蛮行を二度と繰り返してはならない」と非難した。
 立憲民主党県連の曳田卓幹事長は「遊説中に襲われて亡くなるとは無念だったと思う」と述べ、「言論を暴力で封殺するという思想が恐ろしい。政治家の身の安全をテロ行為からどう守るか、冷静に今後の対応を考えたい」とした。
 日本維新の会県総支部の山下洸棋幹事長は「無念でならない。本当にこれが日本での出来事なのかいまだに信じられない。民主主義を揺るがす出来事だ」と衝撃を語った。
 共産党県委員会の山村糸子委員長は「日本のような国で銃を使うことは、どんな主義主張があろうと絶対に許されない」と容疑者の行為を非難した。
 国民民主党県連の岡本護幹事長は「決して許してはいけない蛮行。民主主義がねじ曲げられてはならない。やるべき選挙活動はやっていくべきだ」と話した。

功績たたえ惜しむ声 政財界から哀悼

防潮堤完成式典に出席し、テープカットを行う安倍晋三元首相(右から2人目)=5月、吉田町川尻
防潮堤完成式典に出席し、テープカットを行う安倍晋三元首相(右から2人目)=5月、吉田町川尻
 ■川勝知事「残念でならない」
 川勝平太知事は8日、安倍晋三元首相が街頭演説中に銃撃され死亡したことについて「安倍氏の回復を祈ったが、かなわず残念でならない。選挙戦にて言論で戦っている真っ最中に言論を封殺するという卑劣な行為は断じて許すことができない」とするコメントを発表した。
 川勝氏は安倍氏が襲撃された後、県庁で記者団の取材に応じ、5月14日に吉田町で行われた防潮堤完成式に出席した際に富士山を見ながら食事した話や、2年前、議員会館でリニア中央新幹線工事の県内の状況について説明したことなど安倍氏との出来事を振り返り、「自ら日本を背負うという気概を持って、今日まで来られてきているのを見てきた」と語っていた。

 ■静岡市長「痛恨の極み」
 静岡市の田辺信宏市長は、「懸命な救急措置のかいなく最悪の結果になってしまったことは痛恨の極み。絶対に許されない犯行に対し、改めて強い憤りをもって非難する」とコメントを発表した。首相在任中のアベノミクス推進を挙げ「市の発展にも多大なる恩恵を受けた」とし「強力なリーダーシップを発揮できる政治家を亡くしたことは誠に残念」と悲しみの声を寄せた。

 ■浜松市長「無念察する」
 鈴木康友浜松市長は「長期にわたり国政に尽力され、本市にも支援をいただいた。凶弾で命を落とされたことはあまりにむごく、無念を察すると胸が引き裂かれる思いだ」とのコメントを発表した。

 ■鈴木修氏「経済に力」
 スズキの鈴木修相談役は、同社主力市場のインド・グジャラート州で開いた四輪車生産工場の開所式(2017年)に安倍晋三元首相がモディ首相とともに出席したことを「今でも昨日のように覚えている」と振り返り、「国家経済のために努力し、功績を残された。お悔やみを申し上げます」と悼んだ。

「茫然自失」「模倣怖い」 関係者に悲しみ広がる

 「本当に現実なのか」「絶対に許せない」-。安倍晋三元首相が銃弾に倒れ、死亡した8日、県内でゆかりのあった関係者たちは一様にショックを受け、卑劣な犯行に対して厳しい非難の声が相次いだ。

田村典彦吉田町長(左)から完成した施設の説明を受けながら、現場を視察する安倍晋三元首相=5月、吉田町川尻
田村典彦吉田町長(左)から完成した施設の説明を受けながら、現場を視察する安倍晋三元首相=5月、吉田町川尻
 県温室農協クラウンメロン支所の中條文義支所長(64)は、2018年に首相官邸で安倍氏と面会し、クラウンメロンの輸出支援を要望した。試食した安倍氏は「大変おいしい。絶対売れる」と全面的な支援を約束。中條支所長は「この言葉が励みになった」と感謝する。悲報に触れて「寝耳に水で驚いた。容体が回復することを願っていたが」と肩を落とした。
 安倍氏は5月、吉田町が国などと連携して整備した防潮堤の完成式典に出席した。田村典彦町長によると、町の津波防災のまちづくりは安倍政権の政策と歩調を合わせる形で「一挙に進んだ」と振り返る。「なぜこんなことが起きてしまったのか。今は茫然(ぼうぜん)自失の気持ち」
 19年5月に安倍氏に新茶を贈った全国茶商工業協同組合連合会の元理事長斎藤松太郎さん(77)=掛川市=は「言論の自由を奪う行為。模倣する人が出ないか怖い」と嘆いた。
 北朝鮮に拉致された疑いのある浜松市出身の河嶋功一さんの妹、智津子さん(63)=同市西区=は「拉致問題に熱心に取り組み、私たちの話を親身に聞いてくれた」と惜しんだ。
 安倍氏の祖父岸信介元首相が晩年に住んだ御殿場市の東山旧岸邸の近くに住み、安倍氏と親戚関係にある松岡陽子さん(85)は「(銃撃は)日本では考えられないこと。考えが違うなら話し合いで解決すべき」と憤慨した。20年に官邸で防災功労者表彰を受けた静岡大防災総合センター特任教授の岩田孝仁氏(67)は「警護があまりに無防備で驚いた。元首相の銃撃は外国ではあり得ない。あらゆるケースを想定するべきだった」と指摘した。
地域再生大賞