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農作物盗、許さない リスク高まる春夏「不審⇒即通報」

 昨年(2021年)人気品種を狙った大規模な農園窃盗事件が相次ぎ、社会問題化しました。森町の農園で6月、一度に3千本ものトウモロコシ「甘々娘」が盗まれた事件はいまだ記憶に新しいところ。行政も警察も生産者も被害防止に向けて警戒、対策を強化しています。取り組みや過去の事件についてこの1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・松本直之〉

トウモロコシ盗防げ 袋井署が警戒強化

 森町にトウモロコシの収穫シーズンが到来し、袋井署は町内の生産者に対して防犯対策の徹底を呼び掛けている。昨年、人気品種を狙った大規模窃盗事件が発生し、農産品の盗難防止という地域の課題が浮かび上がった。「丹精込めた農作物を盗ませない」。地域一丸で警戒態勢を強化する。

生産者に防犯指導する袋井署員=27日午前10時40分ごろ、森町
生産者に防犯指導する袋井署員=27日午前10時40分ごろ、森町
 「不審な人物や車両を見かけたらすぐに通報してほしい」。29日からトウモロコシの収穫を予定している村松さとる農園(同町飯田)で27日、同署生活安全課の担当者が防犯指導を行った。同署は5月末から当面、夜間巡回や検問を展開し、町内の警戒にあたる。同農園の村松悟代表(74)は「警察の協力はとても心強い。他の農家とも連携し、気をつけたい」と話す。
 同町では昨年6月、谷中地区の畑で約3千本のトウモロコシが盗まれる事件が発生した。盗まれたのは特産の「甘々娘」で、被害額は約50万円に上った。同署によると、トウモロコシに限らず、5~7月は農産物の盗難被害のリスクが高まるという。事件を受け、町も同署へトウモロコシを栽培している農園の情報提供を行い、盗難防止に向けた取り組みを後押しする。
 同署は農家による自主防犯の啓発にも力を注ぐ。農作物の窃盗は夜間の犯行が多いとされ、防犯カメラやセンサーライトの設置が効果的としている。鈴木和彦森担当次長は「生活に直結する犯罪。窃盗事件を起こさせないために、生産者の防犯意識の向上に努めたい」と力を込める。
 〈2022.5.28 あなたの静岡新聞〉

一度に3千本、50万円相当被害 生産者がく然

森町特産のトウモロコシ「甘々娘」
森町特産のトウモロコシ「甘々娘」
 ※2021年6月6日 あなたの静岡新聞から
 5日未明、森町谷中の畑でトウモロコシ約3千本が盗まれているのを同町内の所有者の男性農業者(59)が見つけた。強い甘みが人気の品種「甘々娘」で、5月末に収穫が始まり、今が最盛期。袋井署によると、被害は50万円相当とみられ、同署が窃盗事件として捜査している。
 被害に遭った生産者によると、5日午前3時から同4時ごろ畑に向かうと、収穫を予定していた箇所のトウモロコシが大量にもぎ取られていた。前日の4日朝の作業以降に盗まれたとみられる。男性は「がく然とした。過去にごく少量の被害はあったが、こんなに大規模に盗まれたのは初めて」と肩を落とした。
 周辺一帯はトウモロコシ畑や田んぼが広がる。同署によると、同日までに近隣で同様の被害の届け出は無かった。今後巡回を強化するという。

甘さで人気の「甘々娘」 今年も出来良し、7月まで収穫期

 トウモロコシの生産が盛んな森町で27日、甘さが特徴の特産品種「甘々娘(かんかんむすめ)」の収穫が始まった。収穫期は7月いっぱい続く見通し。遠州森鈴木農園(同町谷中)では、採れたてのトウモロコシが直売所に並び、荒天にもかかわらず早朝から大勢の人が買い求めた。

雨の中、収穫が始まった森町特産のトウモロコシ「甘々娘」=27日午前5時29分、同町
雨の中、収穫が始まった森町特産のトウモロコシ「甘々娘」=27日午前5時29分、同町
 午前4時半ごろ、町内最大規模の約16万平方メートルの農園で今年初めての収穫作業が行われた。従業員が手際よくもぎ取り、コンテナに詰めた。初日は約3万5千本を販売した。鈴木弥社長(46)によると、若干生育が遅れたものの、例年以上に糖度が高く仕上がったという。
 町内では甘々娘のほかにも、甘みが特徴の「森の甘太郎」や「ゴールドラッシュ」といった品種の栽培も盛んで、町は本年度から、ブランド力強化を目指して「森のとうもろこし」の総称でPRしている。
 〈2022.5.27 あなたの静岡新聞〉

農作物盗は全県、全国の課題 各地で対策が進められている

車両に取り付けたドライブレコーダー=三島市
車両に取り付けたドライブレコーダー=三島市
 ※2021年7月30日 あなたの静岡新聞から
 JA三島函南は、農産物や農業用資機材の盗難被害を防止するため、同JAの生産部会と青壮年部に所属する農家を対象にドライブレコーダーの取り付けを補助する取り組みを始めた。農業用車両に取り付けて常に監視の目を向けるほか、被害発生時にはJAを通じた情報共有も図る。警察とも連携し、地域で犯罪の抑止につなげる。
 生産者によると、数年前にはトラクターなどの農業用重機が盗まれる被害が発生したほか、農作物は大小を問わずに持ち去られる事態が続いているという。メロンなどを生産する高梨祥史さん(45)=三島市=は「1回でメロン50個を盗まれたこともある。例年のことで、憤りしかない」と語る。被害は早朝の発生が多いが「常に見張るわけにもいかない」と頭を悩ませる。
 ドライブレコーダーの取り付け補助は、1万円を上限に購入費用の50%をJAが負担する。「録画中」のステッカーも車両に貼り付け、不審者に対する“目”を強調して抑止効果につなげる考え。JAの防犯向けLINE(ライン)による被害情報の共有、三島署への画像提供や発生地域の巡回にも取り組む。

 <メモ>農作物盗は昨年、今年の問題ではなく断続的に社会問題として浮上し、対策が議論されている。農林水産省は2019年6月、地域の盗難被害の状況や防犯対策の実態を調査し、農園の防犯を強化するために パンフレット「農作物の盗難の実態と対応策(農水省ホームページ)」 を発行している。
地域再生大賞