脱マスク、議論活発化 静岡県、ガイドライン提示へ
季節は初夏から梅雨、そして夏へと向かいます。マスクを完全に外せる時はもう少し先になりそうですが、夏の屋外や運動時のマスク着用を巡っては「熱中症」リスクへの懸念もあって見直し議論が活発化しています。静岡県はまず、未就学児を中心としたガイドラインを示す方針です。関連する動きを1ページにまとめます。
〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・松本直之〉
子ども脱マスク 近づく夏、議論活発化 静岡県、考え方提示へ
新型コロナウイルス対策の屋外のマスク着用を巡り、見直し議論が静岡県内で活発化している。暑い時期を控え、熱中症予防の観点から「子どもは外すべき」とする声がある。県は新型コロナ対策専門家会議の合意を前提に、低年齢児を中心とした屋外マスクの考え方を示す構えだ。
県健康福祉部の後藤幹生参事は12日の記者会見で、感染対策の緩和を初協議した4月下旬の専門家会議を振り返った。
オミクロン株は子どもが感染しても軽症や無症状で済み、他世代への感染拡大の起点にもなっていない。一方でマスクを着け続けると熱中症の重症化リスクが高まる。会議ではこの視点に立った議論が交わされ、月内に詰めの協議をする。後藤参事は「未就学児の(屋外での)マスク対応をなくす方向性を示していきたい」とした。
未就学児の屋外での脱マスクは既に一部の保育施設が独自に採用している。静岡市清水区の認定こども園清水白百合幼稚園は園医と相談して今年から始めた。高塚匡宏園長は「体温が高い子どもは苦しそうで、外せるなら外したかった。外遊びなら大丈夫と判断した」と明かす。
焼津市のたかくさ保育園はマスクを強制しないスタイルを貫いてきた。全国保育士会の会長でもある村松幹子園長は「コロナ対応は明確な指標がなく、判断は常に現場に任されてきた。方針のようなものが示されるなら、どの園もやりやすくなるのでは」と話す。
表情が見えにくいマスクは未就学児の言語習得に影響を及ぼすとの指摘がある。子どもの発達と感染対策の折り合いをどう付けるかは保護者にとって繊細なテーマで、価値観は多種多様。清水白百合幼稚園やたかくさ保育園のように、どの園も施設単位で方向性を出せるとは限らない。
静岡市小児科医会の河原秀俊会長は「日本人は周囲の目を気にするので『マスクは取るべき』などの助言をしても限界がある」と強調。「行政がしかるべきガイドラインを示すことが重要」と訴える。
<メモ>屋外でのマスク着用議論は政府レベルでも進む。山際大志郎経済再生担当相は11日、全国知事会の平井伸治会長(鳥取県知事)とのオンライン会談で「特に子どもに関して、社会を守るために我慢してもらう側面が相当あった」とし、見直しを検討する姿勢を示した。感染の基本的予防策としてマスク着用の緩和に慎重な岸田文雄首相も、屋外に関しては「人との距離が十分取れれば必ずしも必要ない」という趣旨を発言している。
〈2022.5.17 あなたの静岡新聞〉
首相、官房長官ら 政府中枢の発言続く
新型コロナウイルス対策のマスク着用を巡り、岸田文雄首相は12日の参院厚生労働委員会で「今の段階で緩和することは現実的でないと考えている」と述べた。着用見直しなどを求める声が上がっているものの、基本的な予防策として重要と訴えた。
首相は「屋外で距離が十分取れていれば、必ずしも必要ではないと申し上げてきた」と強調。こうした内容の周知や広報を続けるとした。立憲民主党の川田龍平氏への答弁。
〈2022.5.17 あなたの静岡新聞〉
■松野氏「屋外マスク不要」 十分な距離前提に推奨
松野博一官房長官は11日の記者会見で、新型コロナウイルス感染対策としてのマスク着用について、人との十分な距離が取れる前提で「屋外では必ずしも必要ではない」との認識を示した。気温や湿度が高いときは、着用により熱中症のリスクが高くなると説明。マスクを含む今後の感染対策の在り方は、感染状況や専門家の意見を踏まえて検討するとした。
〈2022.5.11 あなたの静岡新聞〉
ジムでのマスクも熱中症懸念 対応悩む屋内スポーツ施設
トレーニング中にマスク着用を求めるか否か―。新型コロナウイルス禍が続く中、静岡県内の屋内スポーツ施設で対応が割れている。感染拡大の第2波が襲った2020年夏に浜松市の施設でクラスター(感染者集団)が発生したこともあり、マスク着用は感染防止対策の柱の一つと位置付けられてきた。ただ、昨今はクラスターは見られず、一時は利用を控えていた高齢者の姿も目立つようになってきた。熱中症のリスクがある夏場を控え、どう対応すべきか。関係者は頭を悩ませている。
同市産業振興部ウィズスポーツ課主査の三井賢一さんは「マスクを外さなければならない強度の運動は避けるように呼び掛けている。感染状況にもよるが、現状では夏でもマスクは必須」と強調する。
一方、静岡市駿河区の県草薙総合運動場の屋内トレーニング室では、ランニングマシンやウェイトマシン器具の間隔を2メートル開け、高さ約2メートルのパーティションを設置した上で、運動中のマスク着用を義務付けていない。
同施設の担当者は「休憩や着替えでは必ずマスクを着用してもらう。トレーニング中もできるだけしてほしいが、高齢の利用者も多く、酸欠などの事故のリスクを考えて強制はしていない」と説明する。
ランニングマシンや器具を使ったトレーニング中でもマスク着用を求める施設は多い。静岡県健康福祉部の後藤幹生参事は「最近、スポーツ施設のクラスターを耳にしないのは、各施設で対策が徹底されているからだろう」と見る。浜松医療センター感染症管理特別顧問矢野邦夫医師は夏場に向け「基本的な感染対策を徹底した上で、マスクなしでのトレーニングも許容する必要がある」と指摘した。
<メモ>静岡県内で確認されたスポーツジムのクラスターは、2020年に浜松市で2件、21年に三島市で1件。多くの施設で利用者数の制限、使用器具の消毒などさまざまな感染対策が行われている。施設によっては器具間にパーティションを設置したり、台数を減らして間隔を取ったりしている。
〈2022.5.13 あなたの静岡新聞〉
米国でも議論 NY、幼児義務維持 地裁「不合理」判決
【ニューヨーク共同】米ニューヨーク州地裁は1日、NY市が新型コロナ対策として2~4歳の幼児に課す保育所などでのマスク着用義務を「不合理だ」として無効とする判決を言い渡した。アダムズ市長は記者会見し、新規感染者が「わずかに増えている」として、2~4歳へのマスク義務を維持し、上訴する方針を示した。
ワクチン接種が可能な5歳以上の子どもに対する学校でのマスク義務は3月7日に解除した。