静岡ホビーショー ことしのトレンドは?
国内最大級の模型メーカーの見本市「静岡ホビーショー」は14、15の両日、一般公開されます(事前申し込み制、受け付けは既に終了)。新型コロナ禍の巣ごもり需要が落ち着きつつある中でのトレンドは。3年ぶりに一般公開と学生招待を再開した「フルメニュー」開催となった経緯とは。1ページにまとめました。
〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・鈴木美晴〉
14日と15日 3年ぶり一般公開
国内最大級の模型メーカーの見本市「静岡ホビーショー」(静岡模型教材協同組合主催)が11日、静岡市駿河区のツインメッセ静岡で開幕した。約80社が15日まで、プラモデルやラジコンなどの最新作を発表する。過去2年は新型コロナウイルス禍で中止や規模縮小を余儀なくされたが、今回は3年ぶりに一般公開と小中高校生招待を再開する。
会場内のタミヤブースでは、F1史上唯一の6輪レーシングカー「タイレルP34 シックスホイーラー」のプラモデルやミニ四駆が関心を集めた。
同組合の田宮俊作理事長は記者会見で「(静岡市が)模型の仲間同士で交流したくなるホビーの街に育ってきた。ホビーショーを機に街の活性化につながれば」と語った。
〈2022.05.11 あなたの静岡新聞〉
巣ごもり需要一服 新規顧客開拓へ舵
静岡市駿河区で11日開幕した静岡ホビーショー(静岡模型教材協同組合主催)で、各社は若者や初心者を意識した新製品を多く披露した。新型コロナウイルス禍に伴う巣ごもり需要は一巡し、主要顧客の高齢化で市場の先細りも懸念される。開発段階から見直しを図る社もあり、各社は従来の根強い模型ファン以外の新規開拓に注力する。
ハセガワ(焼津市)は、SNSなどで若者に人気が広がるレトロ自販機に着目し、雑誌自販機の模型を投入した。同社は長年飛行機の模型を得意としてきたが、19年以降、学校机など生活に密着した商材の模型化を積極的に進める。企画開発部の沢田博史係長は、3年ぶりに一般公開日を設ける今年のホビーショーを「多様な来場者から意見を聞き、新たな顧客ニーズを探る場」と位置付ける。
業界関係者の危機感は強い。東京都の模型問屋の担当者は「コロナ禍で在宅時間が伸び、若者や初心者が従来より手軽に組み立てられる模型を購入している。商機を逃さず新商品を仕入れたい」と話した。
〈2022.05.12 あなたの静岡新聞〉
静岡模型教材協組理事長・田宮俊作氏に聞く
国内最大級の模型メーカーの見本市「静岡ホビーショー」が11日、開幕した。新型コロナウイルス禍で過去2年は中止・規模縮小したが、3年ぶりに一般公開日と小中高校生招待日を設ける。模型の趣味を持つファンや業者同士の再会の場と位置付け、プラモデル出荷額で国内シェア8割を誇る「模型の世界首都・静岡」をアピールする。
-フルメニュー開催に至った経緯を。
「昨年の閉幕直後から、今年は完全な形式で実施すると決めていた。中止や縮小は簡単だが、収穫は得られない。来場者を地域ごとに分散し、同時入場数を減らすなどの感染対策を徹底したことで、昨年も大きな問題は起きなかった。主催者の組合が業界をリードし、誰もが喜ぶホビーショーを実現させる」
-周囲の反応は。
「本来の規模で開催できなかった過去2年は悔しい思いをした。小中学校や高校ではコロナの影響で多くの行事が中止されたため、(招待日の開催決定で)子どもたちが喜んでくれていると聞く。自分の手で作品を完成させる感動を味わってほしい。消費者の意見を直接聞くことができるため、メーカーや問屋も歓迎している」
-市場の現状は。
「コロナ下の巣ごもり需要で追い風が吹いていたが、円安やエネルギー価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻が重なり、先行きは見通せない。模型の原料であるプラスチック価格も徐々に上昇していくだろう。この状況は誰もが未経験で、有効な対策は誰も知らない。状況の打破に向け、現在は情報収集に努めている」
-業界をどう活性化させるか。
「模型初心者を大切に育てていく。コロナ下で初めて模型作りに取り組む人が増えているが、分からないことも多いはず。故障や不具合を含めた問い合わせに誠実に対応し、購入後も長く遊んでもらえる仕組みを構築することで、ファンを根付かせることが重要だ」
たみや・しゅんさく 早稲田大法学部卒。1958年田宮商事入社。84年にタミヤ社長、2008年会長。17年から会長兼社長。1994年に組合理事長に就任。静岡市出身。87歳。
〈2022.05.11 あなたの静岡新聞〉
平和だからこそホビーが楽しめる【大自在】
会場を歩き、戦車や戦闘機などの展示が少ないように感じた。ミリタリー系を展示したブースで、ウクライナでの破壊と殺戮[さつりく]の影響はあるかときくと「愛好家は戦争が好きなのではなく、模型が好きなだけだから」と話してくれた。「平和だからこそホビーが楽しめる」とも。
模型業界はコロナ下の巣ごもり需要で追い風が吹いていたが、円安やエネルギー価格高騰、ウクライナ情勢などで先行きは不透明という。今回のホビーショーは、戦争が連日伝えられる中での開催という点でも異形といえるだろう。
毎回、特ににぎわう一画の一つがアニメ「機動戦士ガンダム」シリーズのプラモデル「ガンプラ」。静岡市のバンダイホビーセンターで生産される。ネット配信により北米やアジア圏にも人気が広がり、増産のため隣地に新工場が建設されることになった。
ガンダムもまた戦争の話であり、パイロットが搭乗するロボットは兵器である。1979年放送開始の第1作は人類が移民した「スペースコロニー」の一つが「ジオン公国」を名乗って地球連邦に独立戦争を仕掛けた。互いに正義を主張し、どちらにも任務に忠実な将兵がいる。そして、民間人が巻き込まれる。
ガンプラを組み立て、ポーズをとらせるのは楽しい。優れたデザインが、兵器だということを忘れさせるのかもしれない。この穏やかなひと時を大切にしたい。海外のファンと共に。
〈2022.05.13 あなたの静岡新聞 コラム「大自在」〉