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知事「コシヒカリ発言」批判収まらず

 静岡県の川勝平太知事が10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で「コシヒカリしかない」などと御殿場市をやゆしたかのような発言をした問題の余波が収まりません。静岡県議会最大会派の自民改革会議はきょう12日、知事不信任決議案を提出する方針を決めました。知事は午後2時からの会見で発言について改めて謝罪し、撤回しました。ここまでの経緯と、そもそもの発端を振り返ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

知事不信任決議案提出へ コシヒカリ発言、自民が臨時会招集を請求

 静岡県議会最大会派の自民改革会議は12日、川勝知事の「コシヒカリしかない」などと御殿場市をやゆしたと取れる発言を巡り対応を協議し、知事不信任決議案を提出する方針を決めた。同会派は同日、川勝知事に臨時会の招集を公明党県議団とともに請求。臨時会では同市の市民が10日に県議会に提出した川勝知事の辞職を求める請願の審議を求め、タイミングを見て不信任決議案も提出する。定数の4分の1以上の県議による請求に対し、知事は20日以内に臨時会を招集しなければならない。

川勝平太知事(左)に臨時議会招集の請求書を手渡す自民改革会議の野崎正蔵代表(中)、公明党県議団の蓮池章平団長=12日午前11時35分ごろ、県庁
川勝平太知事(左)に臨時議会招集の請求書を手渡す自民改革会議の野崎正蔵代表(中)、公明党県議団の蓮池章平団長=12日午前11時35分ごろ、県庁
 自民改革会議は12日午前、非公開の役員会を開き、知事の問題発言の対応を協議した。法的拘束力のある知事不信任決議案を提出するとの意見が大勢を占めたという。市民からの請願の審議を優先した上で、その後、不信任決議案を提出する。臨時会は12月定例会が開会する11月29日より前の招集を求める。
 同会派の野崎正蔵代表は役員会後の議員総会で不信任決議案を提出する方針を示し、出席した議員から異論は出なかった。
 地方自治法に基づく不信任の議決は出席議員の4分の3以上の賛成で可決する。可決すると、知事は10日以内に議会を解散しないと失職する。解散した場合、改選後の県議会で再び不信任決議案が提出されると今度は2分の1以上の賛成で知事は失職する。
 〈2021.11.12 あなたの静岡新聞〉

コシヒカリ発言 県政「おかしくなる」予兆 前山亮吉/静岡県立大教授【識者談話】

 応援演説での発言は公務ではなく政務だったとする川勝平太知事の説明は釈明になっていない。政務であっても知事の立場は変わらない。使い分けはできず、通らない理屈だ。首相の立場に置き換えたら分かりやすい。首相が自民党総裁として発言したことも首相の発言と捉えられる。

前山亮吉氏
前山亮吉氏
 また、知事として特定の市をやり玉に挙げて話をするのは、応援弁士としての発言だとしても成り立たない。バランス感覚がなければ学問はできず、学者出身の川勝知事には以前からバランス感覚があったはずだ。東部、中部、西部の地理的なバランスを取ることも知事の役割の一つだが、それが失われてしまった。
 6月の知事選も10月の参院静岡選挙区補欠選挙も1人が当選する小選挙区型だった。相手を罵倒、攻撃する選挙のやり方になりがちで、調整や合意形成が必要な政治に悪影響を及ぼしている。今回のような知事発言問題が県政課題の中心に据えられ、泥仕合が表面化すること自体が県政の停滞を象徴し、県政がおかしくなる予兆と言える。
 一般的に知事の4期目は難しいとされる。4期目の川勝知事は内向きになり、県内での政争に首を突っ込み過ぎている。自民との対決ばかりをしているのは非生産的だ。このままでは4期目は何の成果も出せないまま終わるのではないか。
 〈2021.11.12 あなたの静岡新聞〉

発端は10月23日の演説 御殿場「米しか」/浜松「なんでも」

 10月の参院静岡選挙区補欠選挙期間中に静岡県の川勝平太知事が行った応援演説で、自民党公認候補だった元御殿場市長若林洋平氏に絡んで同市を侮辱するかのような発言があったとして、批判が高まっている。インターネット上では知事に対する非難の投稿が相次ぎ、若林氏を擁立した自民県連も反発している。

批判が収まらず11月10日、勝又正美御殿場市長(左)に謝罪に訪れた川勝平太知事
批判が収まらず11月10日、勝又正美御殿場市長(左)に謝罪に訪れた川勝平太知事
 発言があったのは、補選の選挙戦最終日の10月23日夜、無所属候補山崎真之輔氏の地元浜松市中区で開かれた集会。山崎氏の応援でマイクを持った知事は農産品を引き合いに出し「あちらはコシヒカリしかない。ただ、飯だけ食ってそれで農業だと思っている。こちらにはウナギがある、それからシラスもある、三ケ日みかんもある、(中略)なんでもある」などと御殿場市と浜松市を比較した。
 知事の発言の動画はインターネット上で広まり「『あり得ない』の一言に尽きる」「御殿場市も大切な静岡県の一部ではないのか」といったコメントも多数投稿された。
 自民県連の野崎正蔵幹事長は1日の記者会見で「御殿場の市民も静岡の県民、35市町が固まっての静岡県だ。どういう理由か分からないが(御殿場市を)辱めるのは、県政のトップとしていただけない言動」と断じた。山崎氏側のある関係者も「御殿場にも(山崎氏の)支援者はいる。良くない」と不適切だったとの認識を示す。
 知事は同日の報道陣の取材に「(若林氏が)御殿場のコシヒカリさえあれば自分は何もいらないとおっしゃった。ご本人が言われたことを繰り返したということ」と述べ、御殿場市を揶揄(やゆ)したつもりはないと主張した。
 補選では、山崎氏が若林氏に約5万票差をつけて初当選した。
 〈2021.11.2 あなたの静岡新聞〉

問題の演説全文を改めて

 川勝平太知事が10月23日に浜松市で行った参院静岡選挙区補欠選挙での山崎真之輔氏に対する応援演説の全文は次の通り。

川勝平太知事
川勝平太知事

 「浜松やらまいか大使」の川勝平太でございます。今回の補選は、静岡県の東の玄関口、人口は8万強しかないところ、その(御殿場)市長をやっていた人物か。この80万都市、遠州の中心浜松が生んだ、市議会議員をやり、県議会議員をやり、私の弟分。県民の県民による県民のための県民党党首川勝と自称したところ、この青年(山崎氏)は実質幹事長をしてくれた。こういう青年。どちらを選びますか?
 こちらは食材の数も430のうち3分の2以上がある。あちらはコシヒカリしかない。ただ飯だけ食って、それで農業だと思っている。こちらにはウナギがある。シラスもある。三ケ日みかんもある。肉もある。野菜もある。タマネギもある。なんでもある。もちろんギョーザもある。そういうところでですね、育んできたこの青年を選ぶのか。はっきりしてます。
 なんといっても政治家は実行力が重要ですが、彼(山崎氏)は現場を検証し、そして実行し、スピードがある。今もっとも必要なスピードは何かというとワクチン接種であります。64歳以下のワクチン接種率。彼(若林氏)が市長をしているときには30%以下しかなかった。ところがこちらは彼の恩師、康友君(鈴木康友浜松市長)はその2倍やってた。これがですね、ちゃんとこの青年の中に入っておる。だから実行力もある。その後、(御殿場市が)勝又という市長になってから私が厳しく言ったのでちゃんと上がってきた。実行力も彼です。
 ですからですね、これはよろしいですかみなさま。浜松、遠州、その中心。ここ。経済はここが引っ張ってきた。あちらは観光しかありません。それしか知らない人間。そんな人間がですね、静岡県全体の参院議員になってどうするんですか。ダメです。
 ですから浜松の代表、地域の意地を見せる、遠州の代表、そして静岡の代表、いま彼は、静岡県民クラブ(ふじのくに県民クラブ)の無所属ですが、県民クラブには元自民党の人も、民主党とか立憲民主とか国民民主とか、いろんな人が入ってる。来るものは拒まない。この青年が国会に行けば、ふじのくにづくり国民会議の代表になる。そういう意味でですね、このしんちゃんをしっかりとみなさんの代表として参議院に送ってください。よろしくお願いいたします。