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波紋広がる「コシヒカリ」発言

 川勝平太知事が10月の参院補選の応援演説で御殿場市について言及した「コシヒカリ」発言。知事は釈明に終始し、県議会最大会派の自民改革会議は、総合計画の全面見直しを要求する異例の事態に発展しました。これまでの経緯をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・吉田直人〉

謝罪なく、県議49人が抗議文 自民は総合計画見直し要求

 川勝平太知事が10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で、御殿場市について「コシヒカリしかない」などと発言した問題が波紋を広げている。川勝知事は9日、緊急記者会見を開き、誤解だったと釈明したが、謝罪はなく、補選で自身が応援した候補の対立候補をおとしめる発言を会見中も繰り返した。県議会各会派からの批判が強まっており、最大会派の自民改革会議と公明党県議団、無所属4人の計49人が同日、連名で知事への抗議文を提出した。

川勝平太知事(左)に抗議文を手渡す野崎正蔵代表(中央)と蓮池章平団長=9日午後、県庁
川勝平太知事(左)に抗議文を手渡す野崎正蔵代表(中央)と蓮池章平団長=9日午後、県庁
 問題となっているのは、補選に当選した山崎真之輔氏の応援演説での発言。対立候補だった元御殿場市長の若林洋平氏を念頭に「あちらはコシヒカリしかない。ただ、飯だけ食って、それで農業と思っている」などと述べた。川勝知事はこの日の会見で「(若林氏は)ご飯が好きでご飯があれば何もいらないと言っていた。彼の農業観が表れている。この農業観では35市町の代表になり得ないという趣旨で、市や市民に対する批判ではなかった」と釈明した。
 会見後に知事室を訪れた自民改革会議の野崎正蔵代表と公明党県議団の蓮池章平団長は「県の一部地域を差別し、辱める発言をしたことは言語道断であり断じて容認できない」とする抗議文を川勝知事に手渡した。知事と一言も言葉を交わさずに知事室を後にした野崎代表は会見について「自分の意見を披露する場だった。火を消すどころか、火に油を注いだ」と不満をあらわにした。
 抗議文提出に加わらなかった知事与党のふじのくに県民クラブからも、懸念の声が聞かれた。知事に会見を開くよう進言したという佐野愛子会長は会見後、「謝罪になっていない。誤解を与えて申し訳なかったという言葉がなく不本意」と述べた。

■自民、対決姿勢強める
 自民改革会議が川勝平太知事との対決姿勢を強めている。同会派は9日、県の最上位計画である総合計画(県の新ビジョン)に対する要望を出野勉副知事に行い、全面的な見直しを求めた。総合計画の全面見直し要求は異例で、同計画を基に編成する来年度予算案にも影響を与えそうだ。
 県は2022年度から4年間の重点取り組みをまとめた「県の新ビジョン後期アクションプラン」の年度内策定を目指す。同会議は県が示した素案について、東京都の計画よりページ数が多いと指摘し「肥大化して分かりにくい」と批判した。また、県が何を重視して取り組むのかという主体性がないと抜本的な改善を求めた。
 要望後、同会派の野崎正蔵代表は「要望は短期間で仕上げねばならず、これまで過度な見直しは求めてこなかった」と説明。「県政の停滞を招かないために我慢してきた。今回の一連の言動で堪忍袋の緒が切れた」と述べた。
記事はいずれも〈2021.11.10 あなたの静岡新聞〉

御殿場市長「市民の心に傷」

 川勝平太知事が御殿場市に関し「コシヒカリしかない」などと発言した問題で9日に緊急記者会見を開いたことを受け、同市の勝又正美市長も同日、市役所で会見し「(知事の会見で)謝罪の言葉がなく残念に思う。市民の心の傷は消えない」と不快感を示した。

川勝平太知事の発言に対する見解を述べる勝又正美御殿場市長=9日午後、同市役所
川勝平太知事の発言に対する見解を述べる勝又正美御殿場市長=9日午後、同市役所
 勝又市長は川勝知事の問題発言について「選挙の中のことであっても知事の言葉は重たい」と指摘。川勝知事が「誤解」と釈明したことについて「あれだけ明確な発言。誤解で済む問題ではない」と強調した。
 勝又市長は2日に川勝知事と面会し「市民感情を大きく傷つける発言」だとして遺憾の意を伝えた。これに対し知事は「申し訳ない」と謝罪したという。
 勝又市長は9日の会見で「いったんは謝罪の意があったと理解したが、その後は謝罪の言葉が出ていない。(謝罪が)公の場で出ていないのも少し残念」と述べた。今後に関しては「市民の感情をしっかり把握しながら対応を考えていきたい」とした。

■軽い言葉、終始言い訳【記者の目】
 
政治家の言葉がここまで軽くていいのか。コシヒカリ発言を巡る川勝平太知事の緊急記者会見を聞いた率直な感想だ。先鋭的な言葉が時に重大な差別を生む自覚はなく、到底、理解できない言い訳を最後まで繰り返した。
 「真意」の説明があきれる。若林洋平氏が好きな食べ物に「白米」を挙げ「ご飯さえあれば何もいらない」と言ったことを引き合いに「彼の農業観が表れている。御殿場にコシヒカリしかないようなイメージを広げた。35市町の代表になり得ないという趣旨だった」と釈明した。
 好きな食べ物に対する最大限の賛辞を曲解し、批判のための批判をしたとしか思えない。若林氏への批判としてすら成り立っていないからこそ、県民が怒っているという自覚はないのだろうか。
 演説の中では御殿場市と浜松市の人口を比較し「どちらを選びますか」と絶叫した。かつて人口減を理由に静岡市を「政令市失格」と断じた姿を思い出した。県の代表である知事が人口の多少で市町の優劣を決めるような発言をするのは看過できない。
 県議会での追及が待っている。政策論争をとの声もあるだろうが、政治家の言葉には政治姿勢の根幹が表れる。「失言」で済ましていい問題ではない。
記事はいずれも〈2021.11.10 あなたの静岡新聞〉

きっかけは参院補選での応援演説

 10月の参院静岡選挙区補欠選挙期間中に静岡県の川勝平太知事が行った応援演説で、自民党公認候補だった元御殿場市長若林洋平氏に絡んで同市を侮辱するかのような発言があったとして、批判が高まっている。インターネット上では知事に対する非難の投稿が相次ぎ、若林氏を擁立した自民県連も反発している。

参院補選の応援演説での発言について釈明する川勝平太知事=9日午前11時55分ごろ、静岡県庁
参院補選の応援演説での発言について釈明する川勝平太知事=9日午前11時55分ごろ、静岡県庁
 発言があったのは、補選の選挙戦最終日の10月23日夜、無所属候補山崎真之輔氏の地元浜松市中区で開かれた集会。山崎氏の応援でマイクを持った知事は農産品を引き合いに出し「あちらはコシヒカリしかない。ただ、飯だけ食ってそれで農業だと思っている。こちらにはウナギがある、それからシラスもある、三ケ日みかんもある、(中略)なんでもある」などと御殿場市と浜松市を比較した。
 知事の発言の動画はインターネット上で広まり「『あり得ない』の一言に尽きる」「御殿場市も大切な静岡県の一部ではないのか」といったコメントも多数投稿された。
 自民県連の野崎正蔵幹事長は1日の記者会見で「御殿場の市民も静岡の県民、35市町が固まっての静岡県だ。どういう理由か分からないが(御殿場市を)辱めるのは、県政のトップとしていただけない言動」と断じた。山崎氏側のある関係者も「御殿場にも(山崎氏の)支援者はいる。良くない」と不適切だったとの認識を示す。
 知事は同日の報道陣の取材に「(若林氏が)御殿場のコシヒカリさえあれば自分は何もいらないとおっしゃった。ご本人が言われたことを繰り返したということ」と述べ、御殿場市を揶揄(やゆ)したつもりはないと主張した。
 補選では、山崎氏が若林氏に約5万票差をつけて初当選した。
〈2021.11.02 あなたの静岡新聞〉

 ■「市民に向けた発言ではない」 釈明も批判収まらず
 川勝平太知事は9日、静岡県庁で緊急記者会見を開き、10月の参院静岡選挙区補欠選挙の応援演説で御殿場市について「コシヒカリしかない」などと発言したことについて、「参院補選の対立候補に向けた発言であり、市民に向けた発言ではなかった」と釈明した。
 川勝知事は「誤解されかねない発言。誤解を生んだ私に責任がある」とは述べたが、謝罪の言葉はなかった。
 問題発言は10月23日に浜松市で行った山崎真之輔候補(現参院議員)の応援演説で出た。川勝知事は対立候補だった前御殿場市長の若林洋平氏を念頭に「あちらはコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている」などと発言した。
 川勝知事は11月2日の東部地域サミットで勝又正美御殿場市長に「誤解を与え、おわびする」と述べたが、地域差別に当たるとして批判の声は収まっていない。県議会の各会派が議会で問題にする構えを見せているほか、御殿場市議会は撤回と謝罪を求める決議案を12月定例会に提出する見通し。県庁には8日までに370件の苦情が寄せられている。
〈2021.11.09 あなたの静岡新聞〉