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体操・芦川うらら 世界の舞台で最年少V

 北九州市で行われた体操世界選手権、女子平均台で芦川うらら選手(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)が優勝を果たしました。18歳での優勝は最年少の快挙です。今後の活躍にもますます目が離せませんね。6位入賞に輝いた東京五輪での活躍や、芦川選手の競技にかける思いをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

体操世界選手権 18歳芦川うららが最年少V 67年ぶり

女子種目別平均台で金メダルを獲得した芦川うらら=北九州市立総合体育館(代表撮影)
女子種目別平均台で金メダルを獲得した芦川うらら=北九州市立総合体育館(代表撮影)
 体操の世界選手権最終日は24日、北九州市立総合体育館で種目別決勝後半を行い、女子平均台で芦川うらら(静岡新聞SBS、水鳥体操館)が初優勝した。18歳での金メダル獲得は日本女子で最年少記録。同種目では1954年大会の田中敬子以来、67年ぶり。
 芦川は6位通過だった予選から点数を伸ばし、14.100点で頂点に立った。今夏の東京五輪は種目別で6位だった。
〈2021.10.25 あなたの静岡新聞〉

東京五輪では6位入賞 「世界でトップ争いを」誓った大舞台

 コーチと共に出場した初めての五輪は、かけがえのない時間だった。3日(※8月)に有明体操競技場で行われた東京五輪体操女子種目別決勝。6位入賞した芦川うらら(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)は、帯同した水鳥体操館の守屋舞夏コーチと一緒に戦えたことを喜んだ。「舞夏先生から『頑張ったよ』と声を掛けてもらって安心した」。演技後は笑顔で抱き合った。

女子種目別平均台決勝で6位入賞を果たした芦川うららの演技=有明体操競技場
女子種目別平均台決勝で6位入賞を果たした芦川うららの演技=有明体操競技場
 今大会、守屋コーチが競技会場への入場を認められていたのは決勝だけだった。7月25日の予選は12位で補欠1番手だった芦川は「種目別ワールドカップから2人でずっと遠征してきた。五輪でも一緒に出たい」と棄権者が出た場合に備え、練習を続けてきた。
 決勝当日の午後3時半すぎ、吉報が届いた。上位選手が棄権し、繰り上がりで決勝の出場権を獲得。「出場できると聞いた時はうれしかった」と願いが通じた。
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平均台の前で守屋舞夏コーチ(左)と記念撮影する芦川うらら=3日、有明体操競技場(守屋コーチ提供)

 決勝の出場者は、2016年リオデジャネイロ五輪4冠のシモーン・バイルス(米国)ら世界で名の知れた選手ばかり。その中で、堂々と自分の演技をやり抜いたことを守屋コーチは誇らしく感じた。「結果を見て、うららが世界でメダルを取れる可能性があることが分かった。本当にすごい」
 18歳という若さで五輪決勝の舞台に立てたことは「一生の思い出」だ。守屋コーチも「自信が付いたんだなと目に見えて分かる大会だった」と教え子の成長に感慨深い様子だった。「海外選手とトップ争いできる選手になりたい」と芦川。恩師と共に歩んだ日々を胸に、さらなる飛躍を誓った。
〈2021.8.5 あなたの静岡新聞〉

頑張りたい、お姉ちゃんの分まで 姉への感謝胸に演技

 体操女子平均台の個人枠代表で東京五輪の大舞台に挑む芦川うらら(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)。脊椎側彎(そくわん)症の影響で競技を断念した姉の七瀬さん(24)も、同じ五輪の舞台を夢見ていた。「体操を続けたくても続けられなかったお姉ちゃんの分まで頑張りたい」。姉の思いを背負い、25日(※7月)に有明体操競技場で行われる予選に臨む。

姉の七瀬さん(右)と仲良く記念撮影する芦川うらら=6月、富士市(七瀬さん提供)
姉の七瀬さん(右)と仲良く記念撮影する芦川うらら=6月、富士市(七瀬さん提供)
 脊椎側彎症は脊椎が左右に曲がっていく病気。七瀬さんは小学6年生の時、背中に痛みを感じた。体操を続けたい一心で、脊椎の曲がりを抑えるために、体にコルセットを着用して生活した。
 痛みを抱えながらも五輪への思いが強かった七瀬さんは、中学2年時から水鳥体操館(静岡市葵区)に通い始めた。3年時はアジアジュニア選手権個人総合で優勝。五輪出場も期待された。
 ただ、症状は悪化するばかり。高校に進学後、医者からは手術を勧められた。「体操よりも普段の生活に支障が出て、学校に行けないこともあった」と母孝子さん(53)。高校3年まで競技は続けたが、五輪の夢を断念せざるを得なかった。
 七瀬さんが競技を引退した時、芦川は小学6年生だった。「お姉ちゃんがいなかったら体操をやっていたかも分からないし、五輪を目指していたかも分からない。本当に大切な存在」。七瀬さんの日頃からの支えに感謝し、演技で恩返ししたいと誓う。
 いつも身近で見守ってきた七瀬さんは「日本中の誰もが知る大舞台に自分の家族が立てることは誇らしい」と感慨深げ。「自分でつかみ取った権利。出せる力を100%出して楽しんでもらいたい」。無観客試合で会場に駆けつけることはできないが、妹が輝く姿を楽しみにしている。
〈2021.7.24 あなたの静岡新聞〉
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