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〈 三立製菓 創立100周年 〉

 かにぱん、チョコバット、源氏パイ…。皆さん一度は食べたことがあるのではないでしょうか? 製造する三立製菓が10月8日に創立100周年を迎えました。世代を超えて愛される商品の開発秘話や今後の販売戦略、ちぎって学べる知育パン「かにぱん」の魅力に迫ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

ビスケット分野で変化重ねる 清水康光社長インタビュー

 三立製菓(浜松市中区)が8日、創立100年を迎える。戦前に保存食の乾パン製造を始め、戦後は「チョコバット」「源氏パイ」「かにぱん」など世代を超えて愛される数々のロングセラー商品を生み出した。国内市場が縮む中、社会情勢の変化に対応した商品開発と販売戦略で新規顧客の開拓を進める。

三立製菓社長 清水康光氏
三立製菓社長 清水康光氏
 ―会社が100年間継続した理由は。
 「菓子の中でも、ビスケット類の領域で変化を重ねた。適度な広がりを持ちつつ、狭すぎない領域で限られた経営資源を投下してきたことが永続的な成長につながった。業界の常識にとらわれない発想で人気商品を生み出し、時代ごとの経営危機は次にくる好況を信じて積極策を採用することなどで切り抜けた」
 ―国内では人口減少が進んでいる。
 「新しい顧客を獲得するとともに、購入する機会を増やしてもらう販売戦略で売り上げを維持したい。既存ブランドを生かしたり、消費者の声を直接聞いたりして商品開発する。高齢化や健康志向に対応したウェルネス市場を拡充し、20~40代の購入層を増やして親子で食べてもらう機会につなげる。海外市場も強化する」
 ―今夏、浜松市東区で新工場が稼働した。
 「パイやクッキーの生産能力が約2割増えた。また、工場ではなく本社で商品開発ができるように製造許可を取得した。新商品の企画や改善を迅速、柔軟に進め、テスト販売で結果が出たら新工場で量産する体制を整えた。隣接の既存工場ではチョコバットの生産が追いつかない状況。設備投資を検討している」
 ―今後の経営方針は。
 「激変する時代の中で、社会問題を率先して解決できる会社を目指す。持続可能な開発目標(SDGs)の指標を想定しながら、ESG(環境、社会、ガバナンス)の考えを経営戦略に取り入れる。『生産者、消費者、販売者』『資本、経営、従業員』の三者が安定した形で成り立つというのが創業理念。100年を機に、改めて原点に立ち返り、消費者に安心と満足を届ける」

 しみず・やすみつ 1996年入社。企画開発部長、専務などを経て今年6月に社長に就任した。浜松市東区出身。49歳。
 
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創立100周年の記念ロゴを使った三立製菓の商品

ちぎって、食べて、学んで ロングセラーの知育パン「かにぱん」

 浜松市中区の菓子メーカー三立製菓のロングセラー商品「かにぱん」が食べながら学べる知育パンとして注目を集めている。カニをかたどったパンを割れ目に沿ってちぎると、動物や昆虫などさまざまな形になったり、ちぎったパンを組み合わせて自由に形を作ったりできる点が創造力の養成に効果があると期待されているからだ。同社は親子向けのちぎり方教室を開催するなど新たな試みも始め、普及を図っている。

ちぎって食べながら学べる「かにぱん」の魅力を伝える「かにぱんお姉さん」の望月沙枝子さん=浜松市中区の三立製菓
ちぎって食べながら学べる「かにぱん」の魅力を伝える「かにぱんお姉さん」の望月沙枝子さん=浜松市中区の三立製菓
  「源氏パイ」など県民になじみ深い商品を手掛ける同社がかにぱんを発売したのは1974年。パンの割れ目は本来、焼きむらを防ぐための工夫だったが、2000年ごろに消費者の間で割れ目に沿ってちぎり、形を作る食べ方が広まったため、同社もパッケージにちぎり方を掲載するなどPRを始めた。
  提案する公式の形はチョウチョウやセミ、キリン、携帯電話など約20種。このほか、ちぎったパンのパーツ13個を組み合わせ、オリジナルの形を作る楽しみ方も紹介している。
 
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ちぎり方の一例

  1年前には子育てサークルや幼稚園などを対象にした「かにぱん教室」を開始。親子がさまざまな形を作って楽しみ、母親には、かにぱんのアレンジレシピも紹介している。ことし6月には特設サイトをリニューアルし、ちぎり方を紹介する「かにぱんの歌」も動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信する。
  最近ではツイッター上でかにぱんが話題になった。消費者がちぎり方が載ったパッケージを投稿したところ、「いいね」は3万件以上、「リツイート」(転載)は2万6千件以上に上り、「面白い」「その形は厳しいかも…」など多くの感想が寄せられた。
  「かにぱんお姉さん」として教室の講師を務める同社企画課の望月沙枝子さんは「子供たちは予想もしない形を作る。食いつき方がすごい」と実感し、「創造力を育みながら、かにぱんを好きになってくれれば」と期待を寄せている。
 〈2017.10.24 静岡新聞夕刊、表記などはいずれも当時〉

カンパンは頼れる非常食 定番貫き国内トップシェア

 災害時の代表的な非常食の乾パン。多くの商品があふれる中、国内トップシェアを誇るのが源氏パイなどで知られる浜松市中区の菓子メーカー「三立製菓」。国内でいち早く製造を始め、「カンパン」の名で販売する。製造開始から80年。「定番中の定番」(同社)を狙ったシンプルな味が長年にわたり多くの支持を集めている。

製造開始から80周年を迎えた三立製菓のカンパン=浜松市中区の同社
製造開始から80周年を迎えた三立製菓のカンパン=浜松市中区の同社

  こんぺいとうメーカーとして創業し、乾パン製造を始めたのは1937年。陸軍から戦地への携行食として発注を受けたのがきっかけだった。品質は旧陸軍の折り紙付き。59年から市販を始め、72年に賞味期限3年の缶入り(現在は5年)を発売した。一口で食べられる気軽さに加え、1個10キロカロリーとエネルギー量が高く消化吸収に優れるため、非常食として重宝された。缶入りは保存性や衝撃への耐性も高く、備蓄品としても普及し国内シェア6割を占める。
  今も味や作り方は「当初とほとんど変わらない」(同社)。3段階の発酵を行うなど完成までに15時間と手間を掛け、連食しても飽きない味に仕上げる。おにぎりをイメージしたゴマの香ばしさもそのまま。糖分補給や水のない状況でも唾液分泌を促す目的で氷砂糖も入れる。
  同社によると、東日本大震災など大規模災害が発生した直後は売り上げが伸びるが、経過とともに防災意識も薄れ、売り上げが元に戻る傾向にある。そのため、グラタンやピザ、つくねなど乾パンを使った料理を紹介し、平時から活用して使用分を補う「ローリングストック」の実践を呼び掛ける。
  担当者は「普段から乾パンを口にすることで防災意識の維持につながるのでは」と述べ、「さまざまな乾パンがあるが今後も愛される乾パンの『定番』を目指したい」と話す。

 ■創業者に先見の明
  こんぺいとうメーカーとして創業した三立製菓が乾パン市場で国内トップシェアに至るには創業者の松島保平氏の先見の明があった。
  日中戦争を控えた1937年、陸軍は将来の発注に備え、国内菓子メーカーに対して事前に陸軍の乾パン工場を見学するよう通達した。松島氏は見学だけでなく、実際に製造工程を学んでくるよう社員に命じ、予備の型を借りて自前の型も制作していた。
  準備が実り、民間発注があった際には、全メーカーの中で最初に納品することができた。リラックス効果なども狙ってカラフルなこんぺいとうを乾パンの袋に入れることになり、本業製品の大量受注にもつながったという。
 〈2017.12.20 静岡新聞夕刊 表記などはいずれも当時〉

楽しい食べ方教えています かにぱんお姉さんに聞きました

 気になる人のこと、もっと知りたい―。そんな読者の思いをかなえるコーナー「あの人に聞きたい」。初回は静岡市の会社役員男性(66)からのリクエストを受け、三立製菓(浜松市中区)の「かにぱんお姉さん」こと望月沙枝子さんを訪ねた。目を引くファッションで子ども向けに看板商品をアピールする「教室」を開く傍ら、テレビやSNSなどに活躍の場を広げている。

かにぱんお姉さん/浜松・三立製菓の望月沙枝子さん
かにぱんお姉さん/浜松・三立製菓の望月沙枝子さん

 “子どもを喜ばせたくて”
 子どもたちとの会話が活動の原動力になっています。「かにぱん教室」に参加する子どもたちに、近所のおばちゃんのように話し掛けることが生きがいですね。今は新型コロナウイルスの影響でリアルの教室を開けないのがもどかしいのですが、オンラインで工夫して開催しています。
 昔から人と違うことをしたいという思いが強くありました。同時に、広報に就いたからには結果を残したいとも思っていました。最初は事務服で教室を開いていましたが、子どもたちを喜ばせようと衣装やキャラクターの工夫を始めました。活動を続けられているのは、娘の応援やファンの励ましのおかげです。

 “演劇、漫才…何でも”
 今、知り合いの方が制作する動画で演劇に挑戦しています。演じる役は、かにぱんお姉さんの記憶を失ったOL。恋愛、サスペンス、コメディーの要素を入れた感動巨編を作る企画です。今年初めか半ばには公開できたらと思います。話題になるなら、いろんなことに挑戦したいです。おかげさまでテレビやラジオへの露出が増え、写真集を出し、歌も作りました。芸人さんと劇場でコントもしました。
 かにぱんの良さを伝える時に使える持ち芸を増やしたいと考えています。歌や紙芝居に、腹話術やマジックができたら楽しいですね。漫才もやりたい。イリュージョンもできたら「かにぱんサーカス」ですね。夢が膨らみます。

 “ラジオ冠番組”計画!?
 応援してくださる方から、私の歌を収録したCDを作ってほしいという声を聞きます。実は今、CDの代わりにミュージックビデオを作る案も浮上していて、どちらにしようか考え中です。今年中のお披露目を目標にしています。楽しみにしてください。
 最近、FMラジオへの出演は終わってしまったのですが、今後は「ユーチューブ」でラジオの冠番組を持ちたいです。夢の実現に向けて、クラウドファンディングで活動資金を集めることも考えています。
 私の存在が知られるようになったのは、ファンの口コミのおかげです。応援してくれる人に「かにぱんお姉さんのことを嫌いにならないでください」と伝えたいです。

 <profile>
 もちづき・さえこ 三立製菓の企画開発部で広報担当を務める。年齢は非公表。浜松市出身。2017年から、ちぎってさまざまな形に変えられる「かにぱん」の楽しい食べ方を教える教室を幼稚園などで展開する。趣味は浜名湖での釣り。将来の夢はスナックのママ。小型船舶免許(2級)、中高の家庭科教員の免許を持つ。
〈2021.01.31 あなたの静岡新聞〉