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緊急事態解除 何がどう変わる?

 政府は静岡県など19都道府県に発令中の緊急事態宣言を30日で全面解除します。静岡県は10月1日以降、飲食店の営業時間や酒類提供に制限を課さない方針で、経済活動の正常化にかじを切ります。解除決定を受けた静岡県の対応などをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

飲食店への営業制限全面解除 カラオケは自粛継続要請

 静岡県は28日、同県など19都道府県への新型コロナウイルス緊急事態宣言を30日で解除する政府決定を受け、対応方針を発表した。飲食店に要請している休業や営業時間の短縮について、酒類の提供や県の「安全・安心認証制度」取得の有無を問わず、制限を完全解除する。10月1日から通常営業が可能になる。飲食店のカラオケは引き続き、利用自粛を求める。

緊急事態宣言解除を受けた静岡県の対応方針のポイント
緊急事態宣言解除を受けた静岡県の対応方針のポイント
 県庁で臨時記者会見を開いた川勝平太知事は、県民の協力に謝意を示し「感染拡大防止を図りつつ、経済活動をそろりスタートさせる。リバウンドが起きれば努力が水泡に帰す」と述べ、感染防止対策の継続を求めた。
 対応方針は10月14日までの措置。感染状況を見て継続やさらなる緩和、対策強化を判断する。国は酒類の提供を伴う飲食店の営業時間短縮など段階的な緩和を求めているが、県は県内の感染状況が国の指標でステージ2(漸増)まで改善し、飲食店でのクラスター(感染者集団)は1カ月以上発生していないことなどを理由に完全解除に踏み切った。
 認証の取得店と未取得店を区別せず、一律に制限を解除することについては、県庁内に認証作業の遅れが要因と指摘する声もある。飲食店でのクラスターが相次ぐなどした場合、その市町の飲食店に営業時間の短縮を要請する。大規模集客施設やイベント開催に関する規制も無くした。飲食業の支援策「Go To Eatキャンペーン」と、地域観光支援事業「バイ・シズオカ」は10月8日に再開の可否を判断する。
 静岡県は感染の急拡大に伴い、8月8日からまん延防止等重点措置、同20日から緊急事態宣言が適用された。

実態は飲食店の認証追い付かず 完全解除に期待と不安

 新型コロナウイルス緊急事態宣言が解除される10月以降の飲食店の取り扱いについて、静岡県は28日、営業時間や酒類提供に制限を課さない方針を表明した。国が求める段階的緩和措置を実施せず、カラオケ利用を除いた完全解除となる。ただ、実際には飲食店の感染対策の認証を巡る県の作業が追い付かず、「認証の有無を区別しない対応を迫られたのが実情」(複数の県幹部)との声も。県独自の判断は感染状況にどう影響するのか、関係者の期待と不安が交錯する。

緊急事態宣言の解除決定を受け、記者会見で静岡県の対応を説明する川勝平太知事=28日午後、県庁
緊急事態宣言の解除決定を受け、記者会見で静岡県の対応を説明する川勝平太知事=28日午後、県庁
 「認証店は今月末に4千件に、10月中旬にはその倍になる」
 川勝平太知事は臨時記者会見で、県内で感染対策が万全な店舗が増える見通しに胸を張った。
 一方で現在、認証を申請しているのは約1万2300件。政府は段階的緩和策として認証店は午後9時まで、それ以外は同8時までの営業時短要請を基本としている。これに従えば8千を超える認証待ち店舗から反発の声が上がるのは必至。知事は「8月25日から飲食店のクラスター(感染者集団)は発生していない」として完全解除の意義を説き、感染拡大の予兆があればためらいなく時短要請する意向を強調することでバランスを取った。
 これに疑問を呈するのは県中部の医療団体幹部。「これまで飲食店は酒類を提供せず、時短営業をしてきたので、クラスターが出ていないのは当たり前」と指摘。「一足飛びに全面解禁すれば不安を持つ人もいるだろう」と語る。静岡市の医師会役員は「完全解除は宣言前の状態に戻るということ。今の県内の感染状況なら妥当では」と県の判断に一定の理解を示すとともに、「宣言前と同じ感染対策なら再び宣言が出かねない」と懸念も口にした。
 飲食店関係者は全面解除を歓迎する。県飲食業生活衛生同業組合静岡支部の高橋誠支部長(72)は「同業者に大変な朗報」とした上で「感染対策がしっかりした店かどうか、お客さん側の目が試される部分も出てくる」と話した。

大学はオンラインから対面授業再開へ

 政府が28日に決定した静岡県など19都道府県に発令中の新型コロナウイルス緊急事態宣言の全面解除に合わせて、県内の大学では10月からの対面授業の再開に向けた動きが始まった。感染が急拡大した「第5波」の影響で遅れが生じた実習も学内の代替授業を組み合わせるなどして対応する見通し。学生からは活動の本格化への期待と感染再拡大への不安の声が入り交じる。

オンラインで行われた実習の代替授業。緊急事態宣言解除で、学生からは対面授業への期待感が高まる=9月下旬、静岡市駿河区の県立大短期大学部
オンラインで行われた実習の代替授業。緊急事態宣言解除で、学生からは対面授業への期待感が高まる=9月下旬、静岡市駿河区の県立大短期大学部
 常葉大は宣言解除を見据えて24日、独自に設定した警戒レベルを10月2日に引き下げ、オンライン授業から対面授業に切り替えると学生に告知した。出口憲教務部長は「学生の対面授業へのニーズが高い。定期券の購入などの通学準備なども考慮して早めに動いた」と意図を語る。
 1日に後期授業が始まる静岡大、県立大、静岡文化芸術大は近く学内のレベル引き下げを検討し、対面授業再開の時期を模索する。
 夏休み中の各種実習は緊急事態宣言と重なり、影響を受けた。静岡大教育学部は8月末からの教育実習を一部中止し、後期以降に学内で代替授業を行うことになった。県立大短期大学部では「ソーシャルワーク実習」の一部が10月に延期されたため、生活保護受給者に状況を聞いて支援計画を作成する代替授業を行い、実習期間の一部に充てる。9月下旬には、代表の学生が受給者から聞き取ってきた音声をオンライン授業で共有した。
 緊急事態宣言解除に関して、常葉大法学部4年の内山喜敬さん(21)は「対面授業が実現すれば、ゼミでの議論がより充実しそう。就活中で緊張することもあり、友達とふとした会話ができる環境は励みになる」と期待する。県立大短期大学部2年の増田はるなさん(19)は流行第5波で感染が急拡大したことに触れ、「今後、再び同じことが起きないとも限らず、不安は残る」と話した。

「第6波」避けられない 感染症専門の矢野邦夫医師インタビュー

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言全面解除に伴う今後の感染状況の見通しや、猛威を振るった第5波について、浜松医療センター感染症管理特別顧問で浜松市感染症対策調整監の矢野邦夫医師(66)に聞いた。

矢野邦夫氏
矢野邦夫氏
 宣言解除によって、国民の感染対策が甘くなるのではないかと心配している。第6波は避けられないだろう。ウイルスの潜伏期は5日程度の場合が多いため、早ければ宣言解除から7日以内に第6波が立ち上がり始めると考えられる。ただ、県民が対策を徹底すれば遅くなるだろう。
 最近の感染者数の減少は、希望的観測だが、ワクチンの効果だとみている。第5波ではワクチンが極めて有効だったと思われる。接種した高齢者の入院はほとんど見られず、接種後に感染する「ブレークスルー感染」の高齢者の入院はあったものの、軽症だった。一方、ワクチン未接種の50~64歳や、50歳以下であっても、体格指数(BMI)が30以上の肥満の人は肺炎を重症化させていた。
 これからは、感染者や入院患者のほとんどがワクチン未接種者で占められるだろう。重症化するのは、未接種の高齢者や基礎疾患がある人、妊婦などハイリスクの人々。未接種の人には徹底的な感染予防をお願いしたい。
 接種者でもブレークスルー感染によって同居家族に感染が広がる恐れがある。ワクチンが接種できない12歳未満の子どもがいる家庭では、特に注意が必要だ。引き続き、マスクの着用や身体的距離を空けるといった対策の徹底が求められる。今後、ワクチンの3回目接種の機会があれば、必ず受けるようにしてほしい。